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第四十一話 雲の上の神殿

 メギアの飛行速度が落ちる。

 航空機のように風を切って進むのではなく、滑空するような格好になる。


『ここが、霊龍の住処――――夜明けの神殿だ』

「夜明けの……神殿……」


 雲の上に浮かぶ神殿は、陽光を一身に受けて荘重な雰囲気を持っていた。神殿を支える柱は所々崩れているが、それが長い時間を生きたことの証明になり、神聖な空気を生み出す一因となっている。


 神殿へと続く狭い道に俺たちを下ろし、メギアは翼をはためかせる。

『我はここで帰るぞ。奴に頼みを聞かせられるかどうかはお前達次第だ』

「ありがとう……メギア」

 リーシャとシルヴィアも感謝を口にする。


『神殿の中には幾つか試練が待っているはずだ。そしてそれは――――三人で突破するものではない』

「どういうことですか?」


『聖紋を持つ者一人一人が試練を乗り越えねばならぬ。各々一人の力で、奴を納得させてみせろ。誰か一人でも挫折すれば、道が開かれることはない。……では、さらばだ』

 口数少なく飛び去ろうとするメギアに手を振り、改めて礼を言う。


「色々教えてくれてありがとう、メギア」

『……ふん。せいぜい頑張ることだ』


 ――――やっぱりツンデレじゃないか。


 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○


 メギアの助言を受けて、作戦会議を行うことにする。

「神殿に入るときにバラバラになるってことなのかしら……?」

「一人一人が相対さなきゃいけない試練があるんだもんね……」


 二人の言う通り、個々で探索を進めることになるのだろう。

 そして、全員が試練を突破しなければ道は開けない。


「他の二人を信じて、自分の試練に全力を尽くすしかないだろうな。アイツの言い方的に、他人の試練には干渉できなさそうだし」

「……そういえばさ、ユキヤ」


 リーシャが小首をかしげて訊いてくる。


「なんだ?」

「私たちが眠っていたとき、メギアと何の話をしたの?」

「ああ……えっと……。罪は人間の核――――本質なんだ、とかなんとか」


 罪悪の回廊の存在は知らせたくない。

 中途半端な情報を与えて混乱させるようなことはしたくないから。


「罪……?」

 疑問符を浮かべるリーシャに、シルヴィアが話しかける。

「翼銀龍メギアは、罪を司る龍なの。彼の銀色の翼には、その者が背負う罪が映るって伝承もある」


 ……じゃあ、よく覗き込んでおいたら残りの”罪”がなんなのか分かったんじゃないか?ちょっと後悔。


「なんだか……ユキヤと話すときだけ……メギアの雰囲気が違った気がして」

 疑問の所以をそんな風に説明するリーシャ。


「アイツは俺のことを嫌ってるんだ。だからだと思う」

「嫌ってるって言うか……う~ん」

 ぴったりくる言葉が見つからないようで、小さく唸り始めた。


「とりあえず……今は神殿の攻略を優先しよう。一刻も早くルージュとゼクルの居場所について手がかりを見つけたい」


 俺がそう言うと、リーシャもシルヴィアも深く頷いて神殿を見た。

 ――――行こう。

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