第三十九話 羽ばたき
『霊龍の居所は分かっているが――――本当にいいのか?』
「……何か懸念があるのか?」
『アイツの巣の周囲は暴風が渦巻いているから、かなりのスピードを出さないといけない。吹き飛ばされないような対策を考えた方がいいんじゃないか』
「へっへっへ、メギアさん……対策してくれないでやんすか」
『どうしてコソ泥のような口調になっているんだ』
「敬語を使って誠意を見せようと思って」
「完全に間違えてるわよそれ……敬語かも微妙だし」
リーシャはあきれ顔を浮かべているが、シルヴィアは俺の茶番を無視して建設的な会話に移ろうとしていた。
「対策って……何をしたらいいんですか?」
『我の周囲に固定型の結界を張れば……まあ、割とましになるだろう』
余りにもアバウトな表現……。
割とましになるってなんだよ。
『霊龍の巣に向かうのは何百年ぶりだからな。風の勢いも変化しているかもしれないから、問題ないと断言することはできない』
「なるほどね……」
そんなに久しぶりで無許可凸していいものなのか?
……ま、いいか(適当)。
「俺とシルヴィアで二重の結界にしよう。リーシャは何か不測の事態が起きたときに対応してもらいたいから、結界は発動しないで杖を構えといてくれ」
「了解」「わかったわ」
二人から了解を得たところで、いざ出発――――と思ったのだが。
メギアが何やら不思議そうな表情で俺を見ていた。
『お前、真面目な言動もできるんだな』
「コイツほんま……」
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
『背に乗れ』
姿勢を低くしたメギアの背に飛び乗っていく。
名前通り、銀色の羽毛が全身を包んでいる。鏡のような光沢を放っていて、覗き込むと自分の姿がおぼろげに浮かび上がってくる。
「「【覆い隠せ】【守護せよ】」」
杖を掲げて結界魔法を発動する。
『流石は賢者と聖女……と言ったところか。これなら吹き飛ばされることはないだろう』
「じゃあ……早速、霊龍のところに連れて行って頂けますか?」
メギアが翼を大きく動かす。
その風圧に、膨大な土煙が立ちこめた。
『行くぞ』
一度羽ばたいただけで、土煙を抜けて遥か上空に浮かび上がる。
「――――わぁ」
リーシャが眼下の光景に目を輝かせる。
『魔呪汚染などという現象が起きなければもっと景色がいいのだろうがな……。それが惜しい』
「……魔呪汚染の原因とか、何か知ってることはないのか?」
『何百年もケルレイ鉱山から出ていなかったからな……。役に立つ情報を供すことはできなさそうだ』
力強い羽ばたきは空気を掴み、空に向かって弾丸のように上昇していく。
その翼には青空の色が映っていた。




