第二十九話 頭痛
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――――最も醜い罪悪を見よ。
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ベッドの上で目が覚めた。上半身を起こし、窓の外を見る。
青空が広がる窓外は、作り物のように綺麗だった。
……そっか。魔王討伐はもう終わったんだっけ。
手早く支度を終えて部屋を出る。この時間に食堂に行けば――皆そろっているはず。
階下へ下りて食堂へと着くと、予想通りパーティーの皆が席に着いていた。
「お寝坊さん、おはよう。起こしに行こうかと思った」
「集合時間とか決めてないんだから寝坊もなにも……」
軽口を飛ばしてくるルージュに言い返す。
「でも私たちは十五分前に集合したわよ」
「え? なに? 俺ハブられてんの?」
悲しみに耐えていると、ゼクルがいやいや、と首を振りながら言う。
「パーティーなら言わずとも分かるよな」
「戦闘中とかなら分かるかもしれないけどさ……」
「食事は戦闘だろうが」
「フードファイターだったのかお前は」
そんなゼクルとのいつものやりとりを、シルヴィアが微笑みながら見守る。
日常の光景。
でもそれは、当たり前の風景ではなく――ずっと求め続けていた特別なものだった。
ご飯を食べていると、シルヴィアがにっこり微笑んで言った。
「明日リーシャがこの城を訪ねてくるんだって。楽しみだね」
「そうなの?」
ルージュが心底驚いた顔で反応する。
「なんで姉が知らない情報をシルヴィアが知っているんだ……?」
「私は文通してるからね~。エルフの里を出発したときからずっと続いてるの」
「……まあ、ルージュにはそんなマメなことできないか」
「……うるさいわね」
いつもなら反論が飛んでくるところだが――図星をついてしまったようだな。なにも反論が出てこないと見える。
「今日は会談とかなかったよな?」
「ないはずだよ……。ここんとこずっとお偉いさんに囲まれてたもんね」
「大して礼儀も知らないのに会食に呼ばれたりするんだぜ……もうやだ」
俺が自分の礼儀知らずさを嘆いていると、シルヴィアが肩をちょいと突いて囁いてくる。
「食事のマナーくらいなら教えられるけど」
涼やかな声が耳にかかってくすぐったい。
「そっか。お嬢様だったなそう言えば」
「そう言えばってなんだ」
「いえ……なんでもございません」
日常生活ではあまり見えないからな……。
「お二人さん。いちゃつくのはいいけど目の前に怖い顔した人がいるよ」
「別に怖い顔してないし……」
ルージュが僅かに頬を膨らませて言う。
……ってかいちゃついてないし。
そんな風に何でもなく、時間は過ぎていく。
それが何よりも幸せだった。
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――――最も醜い罪悪を見よ。
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酷い頭痛がすることを除けば。




