第二十七話 ユニークスキル
神話の中で語られる――絶大な力を持つはずの存在が。
確かに今、眼前で生命を散らしていた。
「……は? な、にが……」
喉元に突き立つ剣。
そこから迸る光は、龍の体を段々と蝕んでいるように見えた。
清廉な輝きを宿しているように見えるが――あの光からは禍々しい気配を感じる。
「【癒えよ】【癒えよ】……だめ。回復が追いつかない……」
聖女の回復魔法ですら追いつかないダメージって……存在するのか?
少なくともユニークスキルでなければ、そんなことは……。
『人間……たちよ……』
「この声って……華炎龍の……?」
『気をつけろ……』
恐らく最後になるであろう華炎龍の言葉に集中する。
『後ろだ…………』
「ユキヤ!」
リーシャの叫びが――ノイズに塗れた俺の意識を覚醒させる。
「【吹き飛べ】ッ」
杖を構えて叫んだ瞬間、鈍い金属音が辺りに響いた。
眼前には――宝石のように美しい長剣を振り抜こうとする男が居た。
フードを被っていて人相を確認することはできない。
でも――この、力は――。
「【燃え上がれ】……ッ」
炎魔法を発動すると、男は一気に飛び退り、剣を構え直す。
なんだ――なんなんだ、この……。
身体がバラバラになっていくかのような違和感は。
男は俺に向かって再び跳躍する。
「【呼び声に応え、守護せよ】」
シルヴィアの――聖女の最上級の防御魔法。
「……ぐッ」
押されている。
男の魔法干渉力の高さが窺える。
聖女の防御魔法を突破するほどの力。
空色の障壁にひびが入った。
……駄目か。
使うしかないのか。
障壁が音を立てて崩れ去った。
右手で剣の柄を握る。手の甲の紋章が光を帯びる。
「――――おおッ」
振った剣は男の長剣と衝突する。散った火花が辺りを照らしだした。
瞬間的に力を込め、男の長剣を弾き返す。
バランスを崩した男は隙だらけだった。跳ね返らせるように剣を振る。
しかし。
男は重心が後方にずれたのを利用して、つま先の力で後ろに跳躍した。
――そして彼はもう、剣を構えていなかった。
見定めるようにして俺を眺め――姿を消した。
彼が居た場所には黒色の煙が残っているだけだった。
全てが夢だったかのように思える光景の中で、ただ一つ――命を落とした華炎龍の身体だけが、これは現実だと告げていた。




