第二十五話 泣き顔
「――てな訳で、ファレス火山に居る華炎龍に会いに行きたかったんだけど、魔呪汚染で立ち入れなかったんだ」
俺が滔々と説明すると、シルヴィアは随所で呆れたような顔を浮かべながら聞いていた。
「まあ、大体は分かったけど……。ユキヤだけじゃなくて、長老の発想も大概だなぁ……」
”俺だけじゃなくて”ってどういうことじゃい、と問いただしたかったが、悠長にしている時間もないので我慢する。
「シルヴィアの魔法があれば、汚染された火山にも入れるかなって思って」
「うん。周囲に浄化魔法をかけ続けていれば行動はできるようになると思う」
「じゃあ早速行くか!」
「ねぇ、その前に私にひっついたまま離れないこの子をどうにかしてくれない?」
「俺が言ってどうにかなる話じゃないんじゃないか?」
「……まあ、正論」
シルヴィアの無事を喜ぶあまり泣き出してしまったリーシャだったが――俺の思った通りというか何というか――泣き顔を見られたくないようでずっとシルヴィアにくっついている。
でも――このまま探索させるわけにもいかないし……。
「なぁ、リーシャ」
「……なに?」
「前回の旅でエルフの里から出発する日にリーシャの泣き顔は散々見たからさ、今更気にすること――」
「そういう問題じゃない!」
リーシャが顔を上げ、俺に向かって叫んだ。
そしてすぐに頬を膨らませてそっぽを向く。
……まあ、目的は達成できたんじゃなかろうか。
俺のデリカシーポイントが下がったが。
「……じゃ、じゃあ――火山へ向かおうか」
「……君のメンタルの強さは本当に勇者向きだと思うよ」
シルヴィアからの賛辞を受け止めつつ歩み出した。
○ ○ ○
頭が痛む。
脳の中で羽虫が飛んでいるかのようだ。酷い嫌悪感が湧いてくる。
「こりゃアイツも耐えられないわけだ……」
浄化魔法を発動していないにせよ、聖女の加護で周囲の汚染の影響を軽減する(天然の空気清浄機と化した)シルヴィアが傍にいてこれだからな。
ヴィスケルが正気を失ったのも無理はない。
「……ちょっと頭いたい」
リーシャが呟く。
「ほんと? 私なにも感じないんだけど」
「聖女ってすげぇな……」
一時間ほどの移動を経て、ファレス火山にたどり着いた。
正直、山が視界の大部分を埋める距離になった時点で気持ち悪さを覚えていたのだが――これは予想以上だ。ノイズが脳のリソースの大半を占有していて、まともな判断ができているか分からない。
「……ねぇ、一つ思ったんだけど」
「なんだ?」
リーシャがある懸念を口にした。
「華炎龍も――この魔呪汚染の影響を受けてるんじゃないの?」




