第二十四話 ~聖女視点~
「ちょ、ちょっと待って?」
リーシャを優しく地面に下ろす賢者から目を逸らしつつ(現実逃避)、私は疑問を投げかける。
至極まっとうな疑問を。
「今、あなた達どこから来たの?」
「え? あそこから」
賢者――ユキヤが指さしたのは空中。
「……ど、どこ?」
「だからミスケルの王城から飛んできたんだって」
「……え、ええ!?」
確かにユキヤが指さした方向には王城があるけど……!
あるけど、そんなところから飛んでくるとか考えないでしょ普通……。
常人には自殺行為としか思えないような所業をやってのけた当の本人は――けろっとした顔でリーシャと会話していた。
いつもこうなんだよな……ユキヤって。
馬鹿馬鹿しくて誰もが一顧だにしない選択肢を平気で選んで――その能力を持って”これが最適解だったんだ”と示す。
無鉄砲に過ぎるところは直してほしいと思うけれど――正直、そこが彼の魅力の一つでもあると思う。
そんなことをとりとめもなく考えていると、いつの間にかリーシャが目の前まで迫っていた。彫刻のような美しい顔を近づけられると――ちょっと、いやかなりドキドキする。
「どうしたの、リーシャ?」
そんな感情を押し隠しつつ、彼女に訊ねた。
「……無事でよかった」
そう言うと、私に向かって飛びついてきた。
それを受け止めて、彼女の緑色の髪の毛を梳く。
そっか……。彼女にろくな挨拶もできないまま、パーティーがバラバラになっちゃったから……。
「ほんとに、よかった……」
零れ出す声に嗚咽が混じり始める。
そんなに温かく泣かれると――私まで泣きたくなってしまう。
一層強く抱き締める。
私はここに居る。
あなたのすぐ傍に。
そう、伝えられるように。
何分か経ち、リーシャが落ち着き始めると――なんだか無性に恥ずかしくなってきた。
特に、ちょっと遠くで私たちを眺めている奴の存在を思い出してから。
ちらと視線を送る。すると彼は、
「いや、ご自由に」
とでも言いたげな表情を浮かべる。
肩をすくめるモーションまでして見せた。
なんだコイツぅ……。
でもきっと、私の腕の中のリーシャの方が恥ずかしいだろうから――私が平静を装わないといけない。
うん、平静を装う。
平静を保てていないことは自覚してる。
「……それで、ユキヤはどうやってここまでたどり着いたの?」
「ん? あ~まあ、結構長くなるけど……」
彼はイリエスを追放され、エルフの里を訪れ――という旅の経緯を話し始めた。




