第二十三話 ~聖女視点~
イリエス王国に消えない炎が灯ってから二週間が経つ。
私はイリエス王国とミスケル皇国の国境にある森の近くで日々を送っていた。
王都が燃えたあの日――私は王から『この国を離れて身を隠してくれ』と言われたのだ。
唐突に過ぎたし、魔王討伐を終えたばかりなのだから少しは休ませてほしい……とちょっとは思ったけれど、彼の判断が多くの場合確かであることは前回の旅で証明されたし。
とりあえず従ってみるかと、荷物を持ってふらりと王国を出た。
そして翌日――王国が炎に包まれたことを知った。
私を王国から出て行かせた理由はこれかと思ったけれど――どうして王は火災が起きることを知っていたのだろう。
確か私を呼び出したときに――君はこれで大丈夫だろう、と独り言を言っていたような……。
なぜ私が”大丈夫”なのか未だに見当もつかない。
寡黙なのは権威を演出する上で必要なのかもしれないけど――できればもうすこし意図を喋ってくれないかな、と思ったり。
喋らないことも作戦の内なんだったらしょうがないけどね。
私は各国を練り歩いて治癒魔法をかけて回ってた人間だから、国への帰属感というものはほとんどない。
けれど――勇者一行として集められたイリエスに愛着が湧いていたし、住み慣れた――とは少し違うけど、過ごし慣れた王城が焼けてしまったというのも大変もの悲しい。
勇者一行。
皆はどうしているのだろう。
王国に関する情報を集めてみても、”王族と勇者一行の行方は不明”という事実しか浮かび上がってこない。
私と同じようにどこかで身を隠しているんだったらいいんだけど……。
ゼクルは……旅先でも上手くやっていけそうだし。
ユキヤは……昔だったらまずかったけど、魔王討伐の旅を経てだいぶ丸くなったし。
……心配なのはルージュだな。ユキヤと離れていたら彼女、何をしでかすか分からないし……。
誰にも迷惑かけてないといいな。
……そろそろか。
身を隠している小屋の周囲に浄化魔法をかけるのが日課になっていた。
皆みたいにノイズに悩まされることはないけれど、魔物が湧いたら倒すのが億劫だ。
「【清め給え。御心のままに】」
杖の先端から青白い光が零れ、私の周囲を包んでいく。
……よし。
これで今日一日は保つだろう。
勇者一行の情報、もっと調べてみようかな。
小屋に戻ろうとしたそのときだった。
「――――ぉぉぉおぃ! シルヴィア~!」
「……え?」
賢者が空から落ちてきた。
「え、えと……久しぶり。シルヴィア」
頬を染めた姫を抱えて。




