第二十一話 手、握って
「俺でもこんな所来たことないぞ……」
王城の尖塔へと至る階段を昇りながら、ヴィスケルは呆れたように呟く。
「しょうがないだろ。高い場所から見渡した方が効率がいいんだから。あとそこからの移動が楽」
「この高さを……移動のために使おうと思うのはお前ぐらいだよ……そもそも、普通の人間は……こんな高さから地面に着地したらバラバラになるんだからな」
「普通の人間じゃないから仕方ないね」
こん、こんと階段を踏む音が規則的に鳴る。
「――ふう。あと、ちょっとで……着くぞ」
「息切れすぎだろ。デスクワークばっかりで体衰えてるんじゃないか?」
「どこの国の……せいだと思ってるんだ……」
これは失敬。
ふら、と倒れ込むようにしてヴィスケルが脚を踏み出したので救助しかけたが――どうやら尖塔に到着したらしい。
ヴィスケルは床に倒れ込んで――ぐあー、と唸っている。
「かなり高いわね……」
眼下の皇国を見下ろして、リーシャがそっと呟いた。
「この尖塔自体に意味はないですが――技術力を示すために重要な場所でしたから。かなり時間と費用をかけましたよ」
床に寝転がるヴィスケルが説明を口にする。
壮麗な外観だと――初めて見たわけでもないのに――感じさせるクオリティだもんな。
「――じゃあ、始めましょうか」
リーシャが杖を片手に持ち、目を瞑る。
上空からの探知は障害物が少ないからやりやすいはず……。
「ユキヤ」
俺にしか聞こえない声量で、リーシャが囁きかけてくる。
「手、握って」
なぜに、と思ったが――集中を乱すのも悪いし、おとなしく指示に従う。
最近頻繁に手を繋いでいる気がするな……。
「ここより南には居なさそうね……」
ミスケルの遥か遠くに居たらわからないけれど、と付け足す。
シルヴィアが見つかれば――他の仲間の居場所の手がかりも見つかるかもしれない。
頑張れ、リーシャ。
「……ぁ」
か細い声で、リーシャが驚きの声を発する。
「どうした……?」
「……見つけた。北西五キロくらい。」
よおおおぉし!
状況打開のキーパーソンキタコレ。
「……まじ?」
未だに床で転がっているヴィスケルが、信じられないとばかりに肩をすくめた。
「感知範囲もそうだが……精度が尋常じゃないな。五キロ先の魔力なんか二キロ先と変わらんて……」
「お前はそうかもしれないな」
「なんでお前がドヤ顔してるんだ。リーシャさんの能力だろうが」
「……それで、ユキヤ。本当にここから……」
「うん。ジャンプする」
でぇじょうぶ。着地なんか簡単よ。




