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第十九話 魔呪汚染

 俺がヴィスケルに対して全面的とも言える信頼を置いている理由の一つが、真の意味で同郷であることだった。

 この世界に転移してきてからなんとも言えぬ孤独感に苛まれてきた俺は、彼との出会いによって幾分心が落ち着いたのを覚えている。


 自分が見聞きし、馴染んできたものを相手も知っているという幸福。

 彼との出会いはそれを教えてくれた。


「俺とヴィスケルは同じ国の出身なんだ。RTAって言うのはまぁ……その、方言みたいなものだと思ってくれていい」

「ユキヤと同じ国の出身……?」


「ユキヤから聞いていると思いますが、ここからずっとずっと遠くにある国です。詳しく紹介したいところではありますけど――今はそれどころじゃなさそうなので省きますね」

「……で、ヴィスケル。イリエスが炎に包まれている件、どんなことが分かっている?」


 ヴィスケルは立ち上がり、棚にしまってあったノートを取り出した。

 ぺらぺらとページを繰って机の上に広げる。

「イリエスを焼いている炎は、王国の外へは広がらない。イリエス王国とミスケル皇国の境界にあたる地域で確認された現象だ」


「……やっぱり魔法とか呪いの類いなんだな」

「そのようだね。拡大しない割に勢いは衰えていないし……。で、これは直接的な関係があるか分からないんだが――」


 彼は持ち上げたペンをくるくると回す。


「――魔呪汚染が世界に広がっているようだ。魔王討伐によって、一度は根絶も見えていたんだが……」

「魔呪汚染……って……あれか。魔物の能力とか出現頻度が高まるやつ?」

「そうだ。……魔王討伐の目的の一つでもあったんだから、忘れないでくれよ」

「ちょっと思い出すのに時間がかかっただけだよ……。じゃあ、魔物が蘇ってきたのもそれが原因か?」


「魔物が蘇ったから汚染が進んだのか、汚染が進んだから魔物が蘇ったのかは判断しづらいね。詳細な分析を待つしかない」

「あー……確かに」

「……そんなところだ。王都を探索できればもっと多くの情報を得られるんだろうが……如何せんあの炎に邪魔されて立ち入れない」


 ヴィクトルはノートを閉じ、また元の位置に戻した。


「――で、今度はこちらから質問させてもらうぞ」

「なんだ?」

「君たちがミスケルまで来た目的を教えてほしい」


「お前がさっき言ったとおり――王都の炎が消えれば状況は一変する。そのために、明龍族の力を借りようと思う」

「明龍族? ……そう言えば、国の正式な調査資料にも彼らの存在が明記されていた気がするが……」

「俺たちはファレス火山の華炎龍に用があってここまで来たんだ。直接そいつに火を消してもらう訳じゃないんだけど……」


 俺の言葉を聞いた途端、ヴィスケルが顔をしかめた。


「ファレス火山は――今、立ち入ることができない。たとえ賢者のお前でも」

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