第十八話 同郷
王城の中ではもちろんフードを外して歩く。
不審者だと思われて王城の人たちに迷惑をかけると悪いからね。
メイドさんや執事たちの横を通り過ぎると、彼らが深々とお辞儀をしてくる。
前回ここを訪れたときも同じような事をされたが……どうしても慣れない。
戦争の抑止力として役立ってはいるのかもしれないが、実際には何もしていないから――なんとなく居心地の悪さを覚える。
自分たちの力を兵器と見なすような策だから、あまり誇りに思えないというような事情もあるけど。
「書斎は確かここだったな……」
「道順を覚えていたみたいな振りをしないで。なんども道案内してもらったでしょ」
「道覚えるの苦手なんだよな……。城の中が一つの町みたいになってるから方向音痴にはきついぜ……」
コンコンと書斎のドアをノックする。
「ヴィスケル~。居るか~?」
「……そんなテンションで話しかける相手なの?」
リーシャのジト目が頬に突き刺さったが、まぁまだ致命傷ではない。
余談だけど、リーシャのジト目ってすごく可愛いんだよな……。俺の意味不明な行動が増えてきている要因はこのジト目なのではないだろうか。
リーシャのジト目が俺を狂わせる……。
「――ユキヤか? 入っていいぞ」
「へーい、んじゃ入りまーす」
「ちょ、ちょっと……」
書斎の扉を開けると、山のように積み上げられた書類に囲まれながら筆を走らせる男が見えた。その目元には深いクマができている。
「やぁ、ユキヤ。無事でよかったよ」
「お前が無事じゃなさそうじゃねぇか」
「隣国サンが炎上してくれたおかげで仕事パラダイスだよ。やったね」
「有史以来一番の引きつった笑みじゃないか?」
中学生みたいな言い合いをする俺たちを見て、リーシャは困惑の渦に呑み込まれているようだった。
その雰囲気を感じ取ったのか、ヴィスケルは筆を机に置いてこちらを見た。
「で、ユキヤ。そちらのお嬢様はどちら様で?」
「ああ。この子はリーシャ。エルフの里の姫様だ」
「り、リーシャと申します。以後お見知りおきを……」
リーシャは楚々とした所作で自己紹介をする。
だが。
「そんなに畏まらなくて大丈夫だぞリーシャ。こいつ貴族式の礼儀とか一切知らないから」
「礼儀とか学んでる時間があったら実用的な学問を詰め込むべきだと思う」
「――な? こういう奴なんだ。効率厨ってやつだな」
「僕如きが効率厨を名乗るなんておこがましいよ。その称号はRTA走者達に捧げられるべきだ」
「……あーるてぃーえー?」
ヴィスケル。
紆余曲折を経て皇帝の座に至った彼は――俺と同じ日本からの転移者だ。




