第十二話 霊龍レスカディア
遺跡の外は、入る前と何ら変わりなかった。
やはりあの術式は剣を召喚するためだけのものだったと考えてよいのだろう。
【剣聖】の意思を覚醒させるためだけの……。
〇 〇 〇
「――【剣聖】の”役割”に目覚めたとな?」
「はい。【賢者】の役割を付与された時と同じ声を聞きました」
「一人の人間に二つの役割など……とは思うが、お前は例外だらけだからな……。納得せざるを得ない状況だ……」
エルフの里に一度帰り、長老に遺跡の調査結果を報告した。
「長老、あれから新しい情報は何か入りましたか」
「うむ……。イリエスの王都を焼いている炎はやはり、魔力が込められたものであるようだ。自然には消えないと思ってよいだろう」
「……アイツらとかガイシュ様の行方を知るためにも、王都の調査は必要だから……」
「鎮火せねばならんな。しかし――生半可な魔法じゃ効果は出ないだろう」
「例えば姉様は――魔法の最高出力は申し分ないですけど、火属性以外の魔法を使ったときは数段階威力が落ちますし……」
何よりまだ見つけられてないしな……。
「――明龍族の力を借りたらどうだ」
「明龍族……? 龍ってお伽噺の中の存在じゃないんですか?」
リーシャが小首をかしげて長老に質問する。
緑色の流麗な髪がはらりと揺れた。
すごく可愛い動作だと思います。
「歴史の表舞台にはほとんど出てこない存在だが――龍は確かに実在している。そしてその莫大な魔力を用いて行使される魔法は、まさに神の御業の如き威力を持つ……」
「その龍に協力を仰いで、王都の炎を消してもらう、と……?」
「そうだ」
「でも……長老が先ほどおっしゃったように、ほとんど姿を現さないのでしょう? どうやって彼らを見つけるのですか?」
「龍は自然の化身なのだ。環境が一変するような異変が起こった時、彼らは必ず目を覚ます。そして……燃え続ける王都は、十分にそのような異変たり得るだろう」
「……なるほど」
「私が読んだ伝承によれば、大気を操る魔法を得意とする龍が存在するはずだ。その龍に協力を仰げれば……恐らく、王都を鎮火できる」
「え~と、長老。その明龍族たちはどこを住処にしているのかとか……わかります?」
「今挙げた、大気を操る龍の住処は――そこだ」
「え?」
長老が指さしたのは天井――ではなく……。
「天空の使者――霊龍レスカディア。彼は上空八千メートル付近を飛び続けている」
「……そんなところ、どうやって行くんですか?」
「龍に連れて行ってもらうしかあるまいよ」
「いやだから……龍に会うためには龍に乗っていかないといけないって……」
「お主がまず目指すべきは、王都の火災に敏感に反応しているはずの――炎を司る華炎龍ファレイヴィスだ。奴に頼み込んで天空まで連れて行ってもらうがよい」
言われた言葉を咀嚼する。
天空まで到達するには……龍の力が必須。
火災に反応したはずの――つまり、出現可能性が最も高い龍は華炎龍。
だからつまり……。
「……めちゃくちゃに聞こえるけど……確かに、それが最適解かもしれません」
「華炎龍はファレス火山に眠っている。そこを訪ねよ。かなりの遠路だが、幸い剣聖の”役割”も授かったようだし、道中の心配はなかろう」
目標は明確になった。
「……ありがとう、長老」
俺が礼を言うと、長老はふんと鼻を鳴らした。




