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書くということ(10年間の振り返りとともに)

作者: 瑞月風花

 私が小説のような物を書き始めて随分と時間が経った。不特定多数の人が目にするインターネット上に書き始めた年数だけでもこの8月4日で丸10年。


 まず、私には書きたい物語があった。

 その物語との付き合いはとても長い。物語としてだけでも20年ほど。登場人物に至っては、30年ほどの付き合いとなる。

 その彼らの生き様をどこかに残しておきたい。

 ただ、そんな理由から始まった書くという行為だった。

 初めは、もちろん自分のものだけ。ワープロのフロッピーからはじまり、PCのデスクトップ、今はSDカードとなっている。保存媒体は少しずつ変わっても自分だけが書き続けていく。でも、ふと思ったのだ。もし、私が死んでしまったら、この登場人物達は永遠に忘れ去られてしまうのだろうかと。

 どこか、私以外の誰かの記憶の中にも、存在させておきたい、と。

 しかし、方法がいまいちわからなかった。


 とりあえず、全部印刷してみた。本のように束ねて、表紙も色鉛筆で描いてみた。だけど、棄てられればお終いだ。


 どうすれば、いいのだろう?

 公募なのか?

 しかし、この物語のジャンルとはなんなのだろう。

 ファンタジーではあるだろう。想像の物語ではあるのだから。

 ただ、完全な異世界かと言われると、またそれも違う。

 舞台は現実世界ではないが、最終的には現実世界とも重なってしまう。


 内容としてはヒューマンドラマとも言え、ダークファンタジーなところもあり、SF的な考えの元成り立っている部分すらあるのだ。


 それなのに、派手な戦闘、魔法すらほとんど出てこない。



 それにどの公募の門を叩けば良いのかも分からない公募は、まず実力以前の問題だった。


 では、どうすれば良いのだろう……。


 インターネットで検索してみる。

「小説」「書く」

 迷いながら、そんなキーワードを入れた気がする。

 様々なサイトが出てきて、驚いた。書く場所があるだなんて、知らなかったのだ。

 それぞれの約款を見てみる。

 分かるようで分からないし、どれも同じようで少しずつ違うような。

 口コミサイトで見てみる。

 それぞれのサイトの善し悪しが書かれてあった。



 結局、よく分からなかったので、サイトの名前の意味が分かりやすく、最大級と書かれてあったサイト「小説家になろう」に登録した。小説家に【なろう】というのだから、素人が文章を書いていいところ。このころはカクヨムさんはなく、星空文庫さんやエブリスタさんなどが候補になっていた。


 当時の思いは、最大ということは、人が多いということ。私の作品なんてきっとすぐに流れるわ。

 ……だった。


 なんて消極的行動。しかし、この後ろ向きなのに、前方に進もうとする姿は10年経ってもあんまり変わっていない。


 とにかく、誰かの目に触れる機会は作りたい。でも、やっぱり恥ずかしいし、面白くないなんて言われたら、もう書けない……と思うほど、私はまだ若かったのだ。

 顔の見えない誰かの言葉が怖かった時代。

 当時の私が今の私を見れば、恥ずかしげもなく、こんなエッセイまで書くようになるなんて、なんとも図太く育ったものだわ、と呆れるかもしれない。


 だけど、登録したことに後悔はない。


 後にシリーズとして立ち上げたこの長編連載を何作も書き始め、お題に沿った短編も書くようになり、感想もまごまごしながら書き始めると、たくさんの方に出会えるようになった。


 その中にいたのが、今は筆を折られてしまったAさまだった。


 Aさまは活字中毒と自身でおっしゃられるほどに読むのが早く、当時の私の作品を全て読んで、すべてに感想をくださり、良いと思ったものには惜しげもなくレビューを書いてくださった方だ。


 初めにも書いたように、私には書ききりたい物語があり、今ではライフワークともいえるシリーズになっている。しかし、本当に酷い文章だったのだ。

 特に10年前にここに投稿した時は。

 シリーズ一作目を大改稿する前は、特に。


 それなのに、Aさまは当時でも10万文字以上あったその話を読み、メッセージで書いてくださったのだ。「このお話は、絶対に化ける」と。「『スキル作者』の発動を抑えて、読者に情報が分かるように書けば、もっと伸びる」と。


 当時10ポイントあったかどうかの、そんなお話にまっすぐに向き合ってくださり、感想だけでなく、どこが伝わりにくくなっているのか分からない私のメッセージにまで付き合ってくださった神様のような方だった。


 当時の私は説明はできる。だけど、物語の中にそれを落とせない……そんな状態だったのだ。もちろん、ステップは少し上がったかもしれないが、今も同じようなことに悩み続けている。


 なろうを引退されて、別のサイトで活動されるようになり、遠くに行ってしまわれたAさま。

 私が知る限りでは「筆を折る」とおっしゃって、その後は書いてらっしゃらないようだ……ということだけ。


 私は今でもAさまがおっしゃった『スキル作者』という作者本位になりがちな書き手の癖を脳裏に浮かべながら書いている。もちろん、今でもそのスキルが発動してしまっていることは多いが、少しは抑えられるようになってきたとも思う。


 おととし、このシリーズで40万文字超えの物語を書き終えた。 

 一作目があったから生まれ続けたその後の話。シリーズ全体にあるあらすじにはなかったそんな物語。主人公が勝手に動き出してしまった結果ではあった。

 しかし、投稿に寄り添うようにずっと読んでくださった方がいた。やはり、分かりにくいことを伝えてくださり、一緒に考えてくださる方がいた。どうすればいいのか、メッセージのやりとりもさせていただいた。とにかくどんなふうに思われるのか、感想が欲しくて、『ネトコン感想』のタグを付けた。感想は残念ながら当選ならずだったが、


 ネット小説大賞11に一次通過していた。


 あの酷かった文章が、それなりに読める文章になった証明だった。

 涙が止まらなくなった。


 傷つくくらいなら読まれなくてもいい、ただ私が管理する以外のどこかに置いておきたいだけだった、あのシリーズ。

 結末はある。でも、まだ書くための心の経験が足りない、そんな最終話がある物語。


 そして、大改稿をしてもまだ分かりにくいと感想をいただき続けたあのシリーズ一作目を、約一年かけてすべて書き直した。

 これを書き直し始めて、初めて誰かに「読んで欲しい」と思いながら書くことができたのだ。読んでもらって、このお話の感想を聞きたいと。卑屈にならずにただただまっすぐに。


 きっと、Aさまがいたから書くことをやめなかったのだろうな。

 やめなかったから、今もつながっている大切な仲間に恵まれたのだろうな。

 登場人物を好きだとおっしゃってくださる方まで現れるようになったのだろうな。


 AIが大きく叫ばれるようになってきている昨今。

 だけど、やはり、繋がりを作っていくのは人でしかない。

 続けられたのも、画面の向こうにいる『人』と繋がっていたからだ。

 遠いのか近いのか分からない場所にいる、確かな『人』。



 だから、余計に大声で叫びたくなる。

 どこまでも、遠くに届くように。


 今も支えてくださる皆様のおかげで、私は書いているのです。性懲りもなく書き続けるのです。


「今までありがとうございました。そして、これからも、どうぞよろしくお願いします」


 もう一度叫びたくなる。


「Aさま! 私、化かせましたか?」と。


文中にあるAさまはイニシャルでもなんでもないアルファベットの記号です。


また、この作者他にはどんなの書くの?と思われたら、広告を飛び越えて読み回りリンク集へどうぞ。

お好みのボタンを押してみてくださいね。

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