手からなんか出たんだが。
初投稿です(二回目)
深い眠りの中にあった意識が引き上げられていく。現実へ、光の中へ、ゆっくりと。
薄く目を開けて見せれば、頭上から降り注ぐ暖かな木漏れ日が眩しく感じられる。
少し目を擦って、頭を振ってみる。寝惚けた頭ではまだ状況が飲み込めないか。しかし、妙な夢を見ていた気がする。兎も角、さっさと起きて朝の支度を済ませなければ。
となればまずは布団から体を起こす必要があるのだが……無い。布団どころか部屋が、ひいては人工物が一切ない。
そうだ、思い出した。僕は神と名乗る存在に生き返らせてもらったのだ。確かにある手足、鼻をくすぐる心地よい風も全て使い慣れた自分の体で感じていものだと自覚する。
生き返ったんだ。その事実が、僕の心を少しだけ悦ばせた。しかし、妙なところに飛ばされたものだ。見渡す限りでは松らしき木が散見される。
しかし、おかしなところで目が覚めた。生き返るにあたってどこか知らないところに飛ばされたと考えるのが妥当だろう。ならばまずは必然的に、人と接触することが第1目標となる。
服は見慣れた制服のまま。あとはポケットに入っていたハンカチと見慣れない手帳。これが今の僕の所持品であり全財産である。
オーケイ。あからさまに怪しい手帳があるのであれば、確認せねば無作法というものだろう。
そこまで思索して、1度手を止める。僕の聞き間違いでなければ、背後の茂みからガサリと音がした。人間であればかなり助かりはするが、なんせ森の中、野生動物と考えるのが順当だろう。
ガサリ、ガサリと音が近づいてくる。動きはそこまで早くない様子なのがありがたい。いざと言う時のために退路は確認しておこう。
やがて、音を出していた張本人が姿を現す。
ゆったりと茂みから身を乗り出したそれは思っていたよりも数段小さく、そして半透明であった。
「ゲル状の......スライム......?」
新生物を発見してしまったようだ。しかし、サイズはそこまでといえ、得体のしれぬものが近づいてくるのはやはり恐怖を感じ、思わず右手を突き出してしまう。
瞬間、閃光が視界を埋め尽くす。数拍遅れて、太陽が目の前に落ちたかのような灼熱に襲われる。
「ッづあぁ?!」
あまりの熱さに悶絶する暇もなくわけもわからないまま意識はぷっつりと途切れ、起きて間もなく再び闇の中へと落ちてゆくのだった。