神によって雑に転生させられてしまったんだが。
(連載は)初投稿です。
鬱屈な日々に、別れを告げたくはないだろうか。教室という名の箱庭、青い春を謳歌する少年少女の。
『陰』と『陽』に明確に区別され、数的弱者達が虐げられる地獄。光がさせば影が生まれ、光が強まれば強まるほど影たちも暗く深い色へその身を落としていく。
当然、僕のような人物が生き残れるわけが無い。卑屈で、暗くて、コミュニケーションも下手くそ。全てにおいて人より劣っているのだ。
初めのうちはただ腫れ物をつつくようだった扱いは次第に虐げる目的のものに変わってゆき、気づけば俗に言う『いじめ』にまで発展していた。
偶然近くに生まれて、偶然年が同じだったと言うだけの人間たち。と、それらを詰め込むための閉鎖空間。その中で起こっていたいじめなんてものはすぐに露呈する。
その時点で止められていないのだ。教師までもが加担しているという事実がいっそ清々しい。
兎も角。僕が今後者の端にたっている理由はそんなところだろうか。あとの記憶は思い出すのも忌々しいというものである。
しかし、悪いことばかりではない。白昼堂々敢行された飛び降りを隠蔽し切れる学校があるだろうか。情報が溢れる今日、いじめられっ子の青年が昼間の校舎で飛び降り自殺を行ったというセンセーショナルなニュースは瞬く間に広がっていくだろう。
僕とて散々狂わされたのだ。せいぜい世間に悪評を広めて、死に花を咲かせてやるぐらいは神様も許してくれるだろう。
ふわりと浮遊感を味わって、地面が急激に近づいてくる。この高さなら、僕は確実にこの命を散らすことになる。
ああ、もしも神様というものがいるならば、生きているうちに手を差し伸べてくれたって良かったと思う。神によって与えられた手であれば、どんな神であれ、どんな手であれ、喜んで取って見せただろう。
『本当に?』
今となってはどうでもいい事だ。かくして、僕こと佐久間ユウスケの人生は享年16にして幕を閉じたのである。
『ちょっとちょっと!青年!勝手に閉じられたら困るよ〜!』
声が頭の中に響く。何度も友達なんていらないと言い聞かせたが、心の底ではやはり繋がりを求めるものなのだろうか。だとするとこれはイマジナリーフレンドと言うやつだ。
『そう!そう!イマジナリーフレンドだよ!しかし君、面白いねぇ。神のことをイマジナリーフレンドって』
マイフレンドは何を言っているのだろうか。生前ラノベや創作物の類は読み漁ったが、まさかイマジナリーフレンドが神を名乗り出す始末とは。自分が作り出したものとはいえ、少し恥ずかしい。
『きみが言ったんじゃないか!どんな神であろうと喜んで手を取るって!』
一向に話が見えてこない。雑に要約するのであれば、僕を助けに来てくれたということだろうか。マイフレンドは。
『そう!そうだよ!君を助けに来たんだ!』
しかし、お生憎さまだ。既に現実世界の僕の体は、生物学的な死を迎えている頃合いだから、時すでに遅しである。
『そう、だから君には僕の力を持って生き返って欲しい!』
本当に分からない。神の力?生き返る?そんなくだらないラノベのような話はやめてくれ。聞いているだけで頭が痛くなってくるんだ。
『とーにーかーく!僕には時間が無いんだよ!ほら行った行った!』
結局、腑に落ちないが、とりあえず貰えるものは貰っておくことにしよう。神の力とやらも、プラスになるだけ儲けものだ。
ゆっくりと意識が沈む。暗く、黒く染まっていく。それは死とはまた違った穏やかさがあった。
人の生きる世へ、新たな世界へ。ゆっくりゆっくりと、ユウスケは堕ちて行った。
本当、人間って馬鹿だよねぇ。適当なこと言って急がせればすぐに状況を飲み込む。何かを約束したり契約する時は、焦らずに条件をきちんと把握することって、習わないのかな?
まあ、こちらとしてはカモは多いにこしたことがないからいいけどね。
彼を送り込んだ時点で、計画はほぼ完遂されたようなものだ。これから面白くなる。
『ね、君もそう思うだろ?』
感想などいただけるととてもうれしく思いなす。