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1.プロローグ-婚約破棄と国外追放セット-

 まぁ、本当に彼女の記憶通りになったわ!

 目の前で婚約破棄と国外追放を言い渡す、第二王子マーカス殿下を驚きの目で見つめる。そして殿下の隣に立っているロス男爵家のカレン様に視線を移す。愛らしい顔立ちにプラチナブロンドに桃色の瞳の少女。うん、彼女が言っていたヒロインってやつね。

 カレン様とマーカス殿下を守るように、騎士団長子息と魔術師団長子息……あら宰相子息はいないのね?あと身分を隠して留学している隣国ロペスの王子の三人が立っている。


「聖女を貶めた罪は重いぞ、サブリナ!」


 いや、私も浄化の力が使えるので聖女なんですよ、マーカス殿下!と心の中でツッコミを入れた。この国フローレスでは、力の差はあれど、魔獣たちの侵入を防ぐ結界を張るための浄化の力が使える聖女がゴロゴロいる。それだけ浄化の力に頼っているのだ。


「隣国ダグラスがお前を受け入れてくれるそうだ。ありがたく思え!」


 ダグラスには瘴気に汚染された黒い小川が流れているため、浄化の力を持つ聖女は重宝されている。やったわ。私の希望通りじゃない!心の中で万歳して走り回る。マーカス殿下、ありがとう。今まででというか、初めてあなたに感謝するわ。あなたの尻拭いをもうしなくていいのね!

 扇を仕舞って、公爵令嬢らしくゆっくりとした動作かつ優雅に見えるよう頭を下げた。


「婚約破棄並びに国外追放、喜んでお受けします」



 さっさと卒業パーティーの会場から退場すると、モラン公爵家に帰宅する。今日の出来事は神託を得たと家族に伝えてあるので、驚きはしないものの落胆の色は隠せていない。


「アホなのかな?殿下たちは」


 クリストファーお兄様は溜め息をつきながらこめかみを揉む。前王妃の息子、第一王子で王太子のベネディクト殿下の側近として忙しいはずなのに、タウンハウスで私の帰りを待っててくれたことが嬉しい。ありがとうお兄様。

 ふと視線を対面に座るお父様とお母様に向けると、二人ともお兄様のように呆れた溜め息を吐いた。


「全くだ。殿下は男爵家に婿入りするということになると分かっていないのか?」


 お母様の実家であるグレイ侯爵家には、後継ぎがいないので私が継ぐ予定だった。その伴侶になるチャンスをマーカス殿下は捨てたのだ。でも、親バカな現王妃が何の功績もないのに、新たな公爵家をマーカス様に叙爵するか可能性もあるわね。


「筆頭聖女は王太子妃のロベルタ様ですのに。カレン嬢がふさわしいと吹聴しているそうですわ」


 ベネディクト殿下の伴侶で王太子妃のロベルタ様の浄化の力は飛び抜けている。更に聡明で凛とした美しい女性だ。彼女の記憶ではロベルタ様とカレン様の仲は良好なのだが現実は違う。ロベルタ様はカレン様を好いていない様子だった。王子の婚約者だったこともあるのだろうが、私のほうが仲がいいと思う。


「それで、サブリナはダグラスへ聖女として行きたいのかい?」


 お父様にそう訊かれ頷く。


「はい。神殿にいる間は身分が平民になりますから、マーカス殿下と再婚約は出来ませんし、身分を隠して留学しているロペスのハロルド殿下もカレン様の取り巻きになっていたので、争いに巻き込まれたくないです」


「はぁ〜、国際問題か〜」


 お兄様が頭を抱えて俯いてしまった。大きな争いにはならないと思うから大丈夫よ、お兄様!と心の中でエールを送る。お父様も胃のあたりを押さえているので、逃げさせてもらおう。


「サブリナ、持参金は心配しないでね。王家から沢山いただくから」


 うふふと笑うお母様が怖い。でも、持参金で今後の神殿不意ですでの待遇が決まるので、多いに越したことはないわねと、顔を引きつらせながら笑顔を作って頷いた。


「ちゃんとサブリナに瑕疵がなかったことは、ダグラスの神殿に伝えておくから安心しなさい」


 お父様が悲しげな笑顔でそう言ったから泣きそうになる。本当は離れたくないけど、再婚約の可能性もあるし、逃げるに越したことはない。彼女の記憶にない、新しい日々が始まる。少し不安はあるが楽しみだわ。


 次の日、荷物をまとめながら、彼女の記憶を整理する。

 彼女こと東平良 莉奈。私の前世。彼女の記憶は、所謂テレビのように見ることができる。サブリナ・モラン公爵令嬢は彼女の大好きな小説「浄化の乙女と真実の愛」の悪女だ。コミカライズもされた人気作だが、タイトルが何とも言えない。

 彼女の記憶を視聴して、真逆の行動を取ってみたり、物語から逸れた行いをしても、強制力というものが働いてほぼ上手く行かなかった。でも、宰相子息が取り巻きに加わらなかったり、ロベルタ様と仲良くなったりだいぶいい方向に進めたと思う。ちなみに、原作ではサブリナは処刑されるからね。頑張ったよ、私。


 カレン様は第二章でダクラスに黒い小川の浄化のために訪れ、そこで神官のルークス様に出会う。彼が莉奈の最推し。もちろん私も好き。莉奈の記憶で見た、緑がかった黒髪に金色の瞳。長身のイケメンで、いつも微笑みを絶やさない。最高。性格も穏やかだが、カレン様が無茶をすると本気で心配して怒るのよね。怒った顔もいい。素敵。


「サブリナ様」


 あれこれ考えながら荷物をまとめていると、侍女のキーラが話しかけてきた。一緒にダクラスに付いてきてくれる頼もしい存在。悪女サイドにつきものの優秀な侍女。ウェイティングメイドと呼んだほうが正しいのかしら?

 美形で主に忠実な男性護衛も欲しいところだが、キーラは男性が苦手で、結婚したくなくて神殿の修道院に入るための持参金を稼ぐために公爵家にやってきたからいない。護衛役もキーラが担っている。キーラよ、チートキャラ過ぎるわ。


「何?キーラ」


「お荷物はそれだけですか?」


 必要最低限のものを詰めた大きめのトランク一つ。神殿では神官服を着るからドレスもいらないし、部屋もそんなに広くないから持っていけるものは少ない。笑って頷いて、標本ケースを手に取った。


「これで最後よ」


 標本ケースの中には鉱物、宝石が入っている。

 モラン公爵家は宝石を扱う商会を経営しているので、幼い頃から鉱物や綺麗な宝石を見て育った。お陰で真贋を鑑定できるようになり、宝石を使った宝石療法を得意とする聖女として奉仕活動を行っていた。

 ダグラスでも浄化だけでなく、宝石療法士として奉仕活動を行えたらいいな。標本ケースをトランクの中に収めて蓋を締めた。う、重い。見かねたキーラがトランクを持ってくれた。


「神殿にもお供しますので、お任せ下さい」


「ふふ、ありがとう。キーラ」


 いつここへ帰るのか、そもそも帰られるのか分からない。キーラに悪いなと思ったが、彼女は「神殿へ入る時期が早まっただけですし、私の分の持参金も用意してくださって感謝いたします」と今まで見たことがない満面の笑みでお礼を言ってくれた。キーラ、本気で修道院に行く気だったのね。キーラは字が美しいので、神殿で魔法陣を書く仕事に就くそうだ。今回の転移魔法陣も彼女が書いてくれが、とっても綺麗。ドキドキしながらキーラと荷物を持って魔法陣の上に立つ。


「サブリナ、気をつけて」


 お父様とお母様に順番に抱きしめられ、お兄様は肩を優しく撫でてくれた。ツンと鼻の奥が痛い。


「はい。いってきます」


 泣きそうになるのを何とか堪えて笑顔を作る。大好きな家族に心配をさせたくない。大丈夫だよと口角を上げた。


「キーラ、サブリナを頼んだよ」


「はい。お任せ下さい」 


 キーラはお父様たちに頭を下げる。子爵家の出だと聞いたが、キーラの所作は高位貴族の令嬢にも負けない美しさがあるので不思議だわ。キーラが頭を上げたので、転移魔法陣に魔力を注ぐと、円に沿って光が溢れ出す。皆に笑顔を向けてダクラスへ転移した。

お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [一言] 追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!! (ブックマーク登録しておきました)
2023/06/18 22:44 退会済み
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