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プーチン暗殺ファンド  作者: 水撫川 哲耶
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破壊神たち

無気力で将来に夢の持てない大学生の主人公。

ある時、友人から知らされたのは、ウクライナ侵攻を阻止すべく立ち上がったクラウドファンディングのプロジェクトだった・・


「しくじったようだな」

「申し訳ありません」


生前、ロシアの最高指導者であった魂。

その魂存在の前面に三邪神の気配があった


宇宙には、『生命を生み出し広める力』と、反対に『それを消滅させる力』との拮抗する二極の力が存在する。

太古の人々は、それを正と邪、善と悪、光と闇と名付け、片方を敬い、片方を恐れていた。


その片方の側の力は、物理世界には直接の干渉ができない為、人間の精神にアクセスし、その人生を操る。

これまでの計画により、世界に1万発以上の核弾頭を存在させるところまでは達成している。

後はそのスイッチをオンにするだけで、『この惑星の生命の消滅』が達成されるはずだった。


その尖兵として送り出されたのが、このかつて『プーチン』と呼ばれていた魂存在だった。

これまでの尖兵と同様に、過酷な幼少期を歩ませ、歪んだ人格に育て上げられた。

恨みの感情を支配欲へと昇華させ、権謀術数を駆使する者とし、一国の指導者へと昇りつめさせた。


「まさか、クラウドファンディングによって道が阻まれるとはな・・」

「その仕組み自体、光の一派が人類に閃きを与えて、作り出したものだ」


同じ様に『光の存在』も、人間の人格に干渉し、「生命の生成と拡散」という彼らの目的に力を注いでいる。


邪神はこの魂を、2つ勢力に塗り分けられた世界の国々の、その片方の側の最高首長にまで育て上げ、さらに両勢力に闘争がおこるように仕向けた。

後は核兵器の使用を成せば、自動的に両陣営からのミサイルの応酬が起こるはずだった。

それで、この惑星からの生命の抹消が完了するはずだった。


宇宙開闢以来続いているこの拮抗劇。

これまでも、地上に【死】が満ちるように働きかけてきた。

その計画は、この『プーチン』によって、総仕上げのフェイズに達したはずだったのだ。


「しかし、何という状況になってしまったのか。逆に光の一派に手段を与えてしまった」

地球上では『暗殺ファンド』は『ブレイクファンド』とマイルドな名前に変えられ、オフィシャルな存在となり、闇の勢力の人類滅亡プランにとって障害となった。


「過ぎてしまった事は、致し方ない。こやつは再び期待に応えられる也や?」

「次が最後の輪廻となる。成功するならそなたは我らの一部となる。失敗するなら魂存在そのものを消滅させる」

「心得ております・・」

「次回もやはり、ロシアが適地であろうか?」

「名前も変える必要があるやもしれぬ」

「次も『プーチン』だと、さすがに愚かな人間でも気付こうて」

「いや、ならぬ」


古代語で『滅亡』を表す言葉、プーチン。

名付け親の精神に干渉し、そう名付ける事で、転生しても使命を思い起こせるよう、そのスイッチとしている。


この魂存在は、過去にも数回の任を負っていた。

ロシアの隣国で生きていた頃にも、プーチンという名で破壊・殺戮活動に生涯を費やし、次にロシアに転生した時には、ラス(ロシアの)・プーチンとして皇帝に取り入って、可能な限り多くの命が失われるよう働きかけた。

そして、先の転生である元スパイのプーチンも、一国の首長に就く事で、命の濫用に勤しんでいた。

『惑星上からの生命の消失』。

一貫して、邪神から受けたその使命に邁進していたのだった。


「確かに『我々は大帝国の末裔だ』とエゴを増長させるのが容易であったロシアこそが適地であった」

「そうだ。劣等感を煽り、その反動によるエゴの増長こそが生命抹消の鍵となる」

「ならばアメリカはどうか?、ロシア系も多い。プーチンという名前でも不自然ではなかろう。そして『劣等感によるエゴの増長』という意味でなら適している」


アメリカの人々の欲望を煽って、消費を膨張させ、病を蔓延させ、中間層を排し、貧困に落ち込ませた。

劣等感に囚われたアメリカ民衆に「偉大なるアメリカ」を標榜する候補者を大統領に選ばせた。

そこまでは上手くいっていた。


「その男を再び大統領の座に就かせる必要がある。共産国との間に核兵器使用による全面戦争を起こさせるのが、我々の目的達成の一番の近道なのだから」

「いやダメだ。国粋主義を台頭させはしたが、あの国はまだまだ民主的で、いざとなったら理性のブレーキが働く。核のボタンを押させるのは難しいだろう。あの男を再選させる事も叶いそうにはない」

「となると、こやつの次の転生地はやはり共産国のあの地であるな。あすこはまだしばらくは専制政治であるし、名前もプー・チンならば不自然であろう」


『レ・ヴィーラ』、『ガ・ビーラ』、『ダ・モーラ』

三邪神の意向の一致が、この尖兵である魂存在の次の転生を決定した。


「次こそは必ずや、人類滅亡をやり遂げてみせます」


生前、プーチンと呼ばれていた、否、これまでの転生でも、また次の生でもプーチンと呼ばれるであろう魂は、闇に吸い込まれ、次の受肉へと流入していった。




昨年、ウクライナ侵攻が始まって2~3ヵ月ほど経った時、内外のいくつかのクラウドファンディングサイトに、作中にもある『ロシア兵・投降ファンド』をプロジェクトとして申請していたのですが、どこからも却下されてしまったので「せめて作品に・・」と思って執筆しました。

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