激突!帝国の槍
深夜まで帝国の盾の活動報告書を見ていた。
ダンジョン50階層まで依頼で行っていたらしい、冒険者で言うとA級の実力だろうか。
それでもまだまだ皆の潜在能力を引き出せていない。すぐに70階には行けるだろう。
シャルは部屋に遊びに来なかった。
そういえば銀狼の牙は70階に素材集めにいくはずだったが、無事だろうか。
シャルのことは心配だが、他人の事を気にしている余裕はない。
想像以上に帝国騎士の初日は疲れた。
早く寝ようと横になるとすぐに意識を失った。
◇
翌朝も模擬戦を5人で行う。
カリーナやアオイに帝国の槍の対策をしなくていいのか。と心配された。
「魔獣と戦う時に万全で戦えると思わない方がいい。帝国の槍との模擬戦があるからと言って、朝の訓練で手を抜いたら模擬戦に出さないからな。」
オレが少しだけ脅すと動きが良くなっていった。
皆、帝国の槍との模擬戦に出たいのだろう。
正直、模擬戦に出す三人を誰にするのか決めていなかった。
昼食を取り、帝国の槍との模擬戦の時間を迎える。
「さあみんな張り切っていこう。」
皆いい顔をしている。
広場に着くと、兵士たちが輪になりこちらを全員が見た。誰かが模擬戦を漏らしたらしい。
ルノガーさんがこちらに近寄ってきた。
「ヨースケ、楽しそうなイベントだから人を集めておいたぞ。王様も上から見ておる。元S級の強さを知らしめるチャンスだ。」
犯人は身近なところに居た。
「まあ頑張ります。首がかかっていますから。」
クライスが取り巻きを連れて駆け寄ってきた。
「よく来たな。ヨースケ。お前の無様な姿を皆に知らしめるいい機会だ。今日が隊長として最後だな。なにか言うことはあるか。」
「ない。オレたち帝国の盾が勝つからな。」
「言うだけならタダだからな。すぐに始めようぜ。」
「その前に少しだけ作戦会議をさせてくれ。」
クライスは文句を言ったが、引き下がってくれた。
皆と円になり作戦会議をする。
「さて、本番だ。皆調子はどうだ。」
「あなたの地獄のような訓練でヘトヘトですわ。」
たしかに皆ボロボロで疲れている様だ。
「それでいい。帝国の槍との模擬戦は…そうだな。じゃんけんしてくれ。」
「なんてすって~! ヨースケ負けたら辞めるんでしょ。本気なの? 」
カリーナは叫び、皆驚いた顔をする。
オレにも企みがあっての決定だ。
「本気だ。ダンジョンではオレが居ないケースも想定される。まさかオレが居ないと戦えないなんてこともないだろう。」
「そうだろうけど。」
「これは隊長命令だ。疲れている状態で帝国の槍に勝つ。今日の訓練を思い出せば大丈夫だ。」
オレはじゃんけんに参加しない。
じゃんけんの結果、カリーナ・サナ・ソフィの三人が勝った。
負けたアオイは少し寂しそうな顔をしている。
「よし決まりだ。サクッと勝ってきてくれ。行くぞ! 」
「「「帝国の盾ファイト! 」」」
皆で声出しをしてカリーナ・サナ・ソフィが話しながら前にすすむ。
帝国の槍のクライスは驚いている。
「おいおい、隊長は出ないのかよ。とんだ腰抜けだな。」
「言ってろ。オレたちは誰が出ても勝つ。」
前衛はカリーナ。後衛はサナとソフィ。
相手も前衛はクライス。後衛はマグナとサイみたいだ。
昨日アオイがくれた書類にはそう名前が書かれていた。
「ワシが審判を務める。騎士らしく正々堂々と戦うように。始め! 」
ルノガーさんの声でクライスがカリーナに斬りかかる。
カリーナが躱しながら反撃する。
力ではクライスに分があるが、カリーナも負けていない。
こうなると大事になってくるのは後衛の力関係だ。
魔法では先行を取ったのはマグナとサイだ。
二人が巨大なファイヤーボールを放つが、サナとソフィがウォーターウォールで打ち消す。
サナとソフィはあえて、先行を譲ったように見える。
何かしら、策があるのだろう。すぐには反撃に転じない。
「おいおい、こんなもんかよ。カリーナ、このままじゃ隊長さんがクビになるぜ。」
「戦闘中に余裕ですわね! 」
クライスは余裕だと思っているのだろうが、押してはいるがカリーナを倒せていない。
クライスたちに決め手がない状態だ、がこちらも訓練で疲れている。
いつこの均衡した力関係が崩れてもおかしくはない。
先に痺れを切らしたのは、マグナとサイだった。
マグナとサイが長く詠唱をしている。同じ魔法を重ねて詠唱することで、
強力な魔法を放とうとしている。
「「くらえ! エクスプロージョン<超爆発>」」
サナが無詠唱でウォーターウォールを展開する。
二人がかりの魔法を無詠唱で打ち消すのはさすがはサナの魔法量。
魔法同士がぶつかる。爆発を起こして視界が悪い。砂埃が舞っていて現状の確認が出来ない。
そのスキに乗じてソフィが駆けている。
カリーナと斬りあっているクライスを後から斬りつけた。クライスがよろける。
「この卑怯者! 」
クライスが叫ぶが、このスキを見逃すほどカリーナは弱くはない。終わりだ。
カリーナが剣を振り上げてクライスに斬りかかった。
「そこまで! 勝者帝国の盾! 」
囲んで見守っていたギャラリーたちが歓声を上げる。
「無詠唱でエクスプロージョンを防ぎやがった。」
「カリーナもクライスに負けていなかったぜ。」
「やっぱり、ソフィたんが一番かわいい。」
口々に感想を述べているが、一人やばいやつが居ないか。
まあいい。オレたちの勝ちだ。
三人がオレとアオイの元に笑顔で帰ってきた。
「やりましたわ。ヨースケ。」
「なに一人でやったみたいに言ってるのよ。私の呪文がなかったらあなたクライスに負けていたわよ。」
「お兄ちゃんやったよ~! 」
「ああよくやった。頭を使ったな。満点だ。」
クライスは膝をついて落ち込んでいるようだ。
まさかオレたちに負けるとは思っていなかったのだろう。
「今回は帝国の盾の勝利だな。よくやった。」
「実力通りですよ。」
ルノガーさんも嬉しそうだ。
「待てよ。油断しただけだ。オレは負けてない。ヨースケ、サシでやろうぜ。」
クライスは立ち上がりオレの前に来て睨んでいる。
ギャラリーが歓声を上げる。
どうやらオレはクライスとサシで戦わないといけないみたいだ。
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