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激動の初日

 

 帝國食堂の食事は美味しかった。オークのソテーは絶品だった。

 王様などの食事を作っている料理長が腕をふるってくれているらしい。納得のうまさだ。


 冒険者は食べるのが早く仲間よりも早く食べ終わってしまった。


 「ヨースケ、銀狼の牙ってS級パーティよね。どうして、パーティを辞めて隊長に就任したのかしら。」


 カリーナも食べ終わったみたいだ。上品に口を布で拭きながら質問した。


 「カリーナ、あなたはすぐにデリケートな話をするから、貴族としての品がないって言われるのよ。」

 「あなたには言われたく有りませんわ。サナ=ポーン! 」


 サナとカリーナの言い合いが始まった。

 口には出さないが、ソフィもアオイもオレを見ている。

 気になるのは当然だろう。


 「皆気になるよな。嘘偽りなく答えるよ。オレは…銀狼の牙を追放されたんだ。」

 「冗談ですよね? ヨースケが模擬戦に加わったパーティが全部勝ちました。理由はなんでしょうか。」 

 「そうだな。強いて言えば弱いことが原因らしい。」

 「お兄ちゃん、弱くはないよね。中級魔法までだったら使えるしバフもあるし、ジークちゃんもいるじゃない。」


 皆真剣な顔になり、黙り込む。気を遣わせてしまったかもしれないな。


 「まあ、どうだろうな。オレが弱いのもあるが、邪魔だったんだろう。今は帝国の盾のために全力を作るだけだよ。」

 「さすがは私たちの隊長ですわ。」


 なぜかカリーナがドヤ顔で言っているがあえて触れないようにしておく。


 「部屋に戻って、先程の模擬戦の振り返りと、ダンジョンに行った報告書の振り返りをしようか。」


 食器を下げるために立ち上がると男三人組に話しかけられた。


 「お前が第三隊の隊長だな。名前は。」

 「ヨースケだ。」


 どうやら男たちの制服の左腕には杖が描かれたワッペンが張っている。

 第二隊の人間みたいだ。


 「俺は、クライス。第二隊の隊長だ。」

 「ああ。よろしく。」


 握手をしようと手を出しだすが、手をバシッと弾かれた。

 残りの取り巻き二人もヘラヘラ笑いながら見ている。


 「勘違いするなよ。俺たちは第三隊の子守をするつもりはねえ。足を引っ張んじゃねえぞ。」


 第三隊は同僚たちからよく見られていないのかもしれない。

 帝国の盾は新しい部隊だし、外から隊長を呼んだりと嫌われる要素は十分か。


 「カリーナ嬢ちゃんもよかったな。やっと隊長が見つかって。」

 「あなたね。いい加減にしてください。いつも私たち第三隊の事を馬鹿にして。いつでも相手してあげてもよろしくてよ。」

 「相手だと? こんなヒョロヒョロの隊長になにが出来るって言うんだ。」


 クライスがオレの腕を握り上げた。クライスが笑い、それを見て取り巻きも声を上げて笑う。

 不快だがオレは弱い。オレ一人では勝てないが、皆の力があれば勝てる。


 「オレたちの実力が不安だというのは分かる。」

 「だったら今すぐに辞めるだな。お前が隊長になったことを歓迎しているやつは誰もいない。」

 「そうか。だったら模擬戦をして確かめるのはどうだ。負けたら隊長を降りてやるよ。」

 「おもしれえ。二言はないだろうな。」

 「もちろんだ。その変わり、お前たちが負けたらオレたちを侮辱した謝罪をしてもらう。」

 

 クライスが笑う。この目は勝ちを確信している目だ。


 「土下座でもなんでもしてやるぜ。決まりだな。明日の午後一番で人数は3対3でどうだ。」

 「ああ。それでいい。」

 「逃げるなよ! 」


 クライスが捨て台詞を吐いて取り巻きたちと何処かへいった。


 「ヨースケは意外と負けず嫌いなのですね。」


 カリーナが横で扇子を広げて言った。


 「どうかな。負けたら今日が最後の隊長だ。後悔のないように対策を立てよう。さあ皆、部屋に戻ろう。」


 部屋に戻る前にルノガーさんの部屋に一人で戻り報告をした。

 報告するとルノガーさんに怒られると思っていたが、なにやら嬉しそうに笑った。


 「ヨースケ最初の命令だ。第二隊に圧勝せよ! 」

 「わかりました。正直、ルノガー顧問には怒られるかと思っていました。」

 「そうか。最近平和が当たり前になってから、騎士たちはたるんでおるからな。いい機会じゃ。クライスごときにうちの隊員は遅れを取らん。」


 フフンとルノガーさんが笑う。

 勝ちを確信している目だ。オレも今日模擬戦をやった限りでは帝国の盾は銀狼の牙より強かった。

 第二隊の実力はわからないが、負ける可能性は低いだろう。

 

 挨拶をして部屋に戻るとサナトカリーナが言い合いをしていた。


 「クライスは男で力があるから、ここはアオイが前衛ででるべきよ。」

 「なんですって。私が出ますわ。シュタイン家として挑まれた勝負から逃げれわけにはいきません。」

 「ダメよ。負けたらヨースケが居なくなるんだから。最強の布陣で挑むべきだわ。」


 内容を聞く限りだと誰が出るかで揉めているらしい。


 「着席してくれ。先どの模擬戦を第一選から振り返る。」

 「ヨースケ、あなたの首がかかっていますのよ。そんなに悠長でよろしくて? 」

 「あいつらなら対策しなくても勝てるだろ。いや、勝たなければならない。オレたちは帝国の盾だ。あいつらの数倍以上強い魔獣を狩らなければならないのんだから。」


 カリーナはオレが発言すると黙った。


 「あの、ヨースケ、もしかして模擬戦の内容全て覚えているの? 三十回以上は戦ったと思うけど…」

 「もちろんだ。全て振り返るぞ。」


 黒板に第一戦の書き出す。

 四人が顔を見合わせている。


 「ますますヨースケが追放された意味がわかりませんわ。」

 「同感です。」

 「私も悔しいけどこれはカリーナと同じ意見だわ。」

 「お兄ちゃんすごーい。」


 「ほら集中しろ。明日の対戦メンバーは当日オレが発表するからそのつもりでいてくれ。」


 お昼から夕方の鐘がなるまで模擬戦の振り返りに時間を費やした。

 皆目を輝かせていたがさすがに最後の方は疲れてきたみたいだ。


 「いいか。同じ場面には出くわすことはほとんどないが、選択肢を増やせばそれだけ勝率は上がる。今日は終わりだ。明日の朝、模擬戦で今日の反省を活かすように。」


 挨拶をすると、アオイを残して皆帰っていった。

 オレもレポートを宿に持ち帰りこれからの方針でも決めるか。


 「ヨースケさん、明日の朝も今日みたいに模擬戦をするんですか? 」

 「もちろんだ。対策は一切しない。それよりも皆の連携を上げる時間に割きたい。ダンジョン攻略のレポートを見たが、このままだと命を落とすことになる。魔獣と戦うのに慣れていないからな。」

 「わかりました。隊長の指示に従います。念のためこちら渡しておきますね。」


 先程絡まれた帝国の槍三人の特徴をまとめた紙を渡された。

 クライスが剣士で前衛。残り二人が魔法使いみたいだ。


 「ありがとう。参考にするよ。」


 アオイが挨拶をして部屋を出る。オレもギルドに報告して、宿に帰ろう。

 それにしても初日から内容の濃い一日だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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