歓迎会と再会
エマは集中してずっとジークと遊んでいるから、オレは戦闘を眺めていた。
基本的に騎士や兵士の戦いを見たことがないから新鮮だった。
強さで言うと騎士は、冒険者でいうところのB級以上はあると思う。
帝国を守っている人たちだ弱いわけはない。
隣でジークをもふもふしているエマに関しては一人でもS級パーティをやれると思うが。
ソフィはオレを見つけてもうヘトヘトと言いながら横に座った。
「お兄ちゃん、疲れたよ~。」
「お疲れ様。」
「数回しか勝ち抜けていない~。ソフィやっぱり剣の扱いは苦手。」
ソフィはまだ幼いし、剣も扱えてはいるが大人相手には力の関係で厳しいようだ。
「ソフィって今何歳なんだ? 」
「お兄ちゃんソフィの年齢知りたい? 」
「ああ。」
「ソフィね、12歳のレディだよ。大人に見えるでしょ? 」
ソフィは顔と体型から見ても12歳くらいの子どもに見えるが触れない方が良さそうし黙って頷く。
華奢な体なのに剣も扱えて、サナには劣るが上級魔法を使えるソフィはまさしく神童だな。
「お兄ちゃん、今日仕事終わったら何か予定あるの?」
「そうだな。一度ギルドに報告しに行く必要があるが、それが終われば特にないよ。」
「えへへ。だったらソフィとデートしよっ! 」
最近の若い子はデートをするのか。随分とませているな。
「そうだな。ご飯でも行こうか。」
「やった~。じゃあじゃあ、ギルドの報告が終わったら広場の噴水の前に集合ね。」
その後、勤務時間が終わる鐘が鳴るまで、模擬戦は続いた。
一番勝ち抜き戦で記憶を伸ばしたのはアオイらしく10回勝ち抜けたみたいだ。
サナとカリーナは言い合っているが、もう止めるのも面倒だし無視していた。
鐘がなったので、ギルドに報告しに向かう。
ギルドに行くとギルマス室に案内された。
カインさんとメンゼフさんが座っていた。
「やあヨースケ。第三隊の隊長はどうだい。」
「大変ですがなんとかやっています。」
この二日間の第三隊のことを報告した。
帝国の槍と模擬戦をしたこと。来週からダンジョンに遠征することも増える旨を伝えた。
「楽しそうにやっているならよかったよ。」
「それにしてもカインさん、妹のサナさんがいるなら言ってくださいよ。」
「悪い悪い。サナはうまくやっているかい。」
「カリーナと仲が悪くていつも言い合っていますが、彼女は間違いなく天才です。」
「そうだな。魔法だけなら僕よりも上だ。サナをよろしく頼むよ。」
オレは頷いた。カインさんも妹のことを気にかけているのだろう。
「ところで、ヨースケ。銀狼の牙のその後を知りたいか? 」
「…ええ。ケヴィンたちはうまくやっていますか。」
「昨日から連続でクエストを失敗している。多分…来週にはA級にランクダウン。近いうちに勇者剥奪されるかもしれない。」
「そうですか。」
銀狼の牙を気にかけてやる義理はないけど、
オレも先日まで銀狼の牙をS級にまで成長させてきたんだ。
A級に落ちると聞くと、少しだけ寂しい気持ちになる。
「ケヴィンたちがヨースケに逆恨みしているかもとシャルロットが言っていた。注意してくれ。」
「わかりました。気をつけます。」
この後、メンゼフさんとカインさんに呑まないかと誘われたが、お断りして広場の噴水に向かった。
先にソフィが噴水の前に座っていた。
「お兄ちゃん。早かったね。」
「待たせたね。それでソフィはどこにいきたいんだい。」
「ん~。ご飯食べに行こう! ソフィ美味しいお店知っているの。」
ソフィが立ち上がり先に歩き出した。オレは慌てて後に付いていく。
たどり着いたのは冒険者時代によく来ていた明けの明星だ。
明けの明星は冒険者御用達の食事処だ。
「お兄ちゃん、はやくはやく~」
予約をしていたのだろうか。ソフィが奥の個室に入っていった。
オレも入ると帝国の盾の皆とルノガーさんとエマが座っていた。
「お兄ちゃんの歓迎会なの。主役は奥に座ってね。」
唯一の空席になっている一番奥の席に座った。
「よしヨースケの隊長就任の今日はお祝いでワシの奢りだ。ほらなにか言え。」
オレはグラスを手に取り、立ち上がった。
「急なことで驚いていますが、お祝いいただきありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。乾杯! 」
「「「乾杯! 」」」
乾杯をして美味しいご飯を皆で食べながら話すと会話が弾む。
帝国では15歳からお酒が飲めるからソフィ以外は皆お酒を呑んでいるようだ。
エマは酒を呑みながら、ジークをずっと撫でている。よほど気に入ったのだろう。
「ヨースケは今、彼女はいるのか。」
ルノガーさんが言うと皆の会話が止まり、オレに注目が集まる。
「いえ。仲良くしている幼馴染はいますが、冒険者をしていたので、どうもできなくて。」
「若いのにもったいない。一応伝えておくが、帝国の騎士は恋愛禁止されていないからな。」
「…はぁ。」
我ながら間抜けな返事をしてしまった。同僚ではあるしそんな目で皆を見たことはなかった。
「それで、この中だと誰が好みだ。」
ルノガーさんがそう言うと、皆が黙ってこちらを見ている。
正直、気まずい。なんて答えればいいのだろうか。
答えないのも違うだろうし、一人の名を挙げるのも気が引けるな。
「そうですね。まずはお手洗いに行ってきます。」
逃げるように部屋を出る。後からは逃げたと声が聞こえていたが無視しよう。
手洗いから出ると馴染みのある声が聞こえてきた。
「よう、こんなところで何をしているんだヨースケ。」
全身に鳥肌が立つ。一番会いたくない男の声だ。忘れられるものか。
振り返るとそこには酔っ払ったケヴィンが立っていた。
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