回復術士
まずはヒーラーを見つけねば!
出来れば2人!!
鼻息荒くギルドの扉を開くと独特の臭いが鼻に飛び込んで来た。
汗と血、酒と肉の蒸せ返すような臭い。
ここのギルドは酒場も備えてるようだ。
眼光鋭い屈強なドワーフ戦士や線の細いエルフの弓士が目に付く。
「こいつら強そーだね。イグナシオとどっちが強いかなぁ?」
デカい声で暴言を放つニース。
登録もしてないのにトラブルに巻き込まれるのはゴメンだ。
オレは聴こえないフリをした。
「オイねーちゃん。誰が誰より強いって?」
いかにもなモヒカン戦士が管を巻いてくる。
かなりお酒が進んでいるようだ。
「頭だけじゃなくて耳まで悪いのか?ここにいるイグナシオがお前より強いって言ってるんだよ?」
テオドールまで何を言い出すか!指差すな指!!
オレは知らないフリをした。
「は?この普段着野郎がB級冒険者の俺様より強いって?」
嘲笑しながら捲し立てるモヒカン。
「お前如きがB級ならイグナシオはSSS級だなッ!!」
普段無口な癖に何でこんな時だけイキるんですかゼダンくん!
そしてオレの方を見んな!
ギルドにいる諸先輩方からのアツい視線が突き刺さる。
オレは何も見えないフリをした。
「俺様キレたぜ?コゾウ表にでろや!」
ため息あんどため息を吐いたオレはモヒカンに連れられ表にでた。さっき入ったばかりなのに。
「覚悟できたかコゾウ!」
いつの間にかヤジ馬がオレとモヒカンを取り囲んでいる。
ふと見るとテオドール達もニヤニヤしながら眺めてる。
もおまじで何考えてるのオマエらは!
「どこ見てんだよコゾウ?死んだぞオマエェェェ!!」
大剣を振りかざしオレに向かって突貫してくる。
「はぁ・・」
ため息を吐いて脱力し剣を躱しつつすれ違いざまに裏拳を後頭部に叩き込んだ。
顔面から地面にめり込むモヒカン。
どよめくヤジ馬。
拍手しながら大笑いしてるテオドール達のもとへ歩き出しながら話しかけた。
「オマエら何考えてるの?怪我人でちゃったじゃん。」
「ごめんごめん。手っ取り早く私たちのパーティを宣伝したくて打ち合わせしたの。」
ニースがウインクしながら舌を出して謝る。
「オレにも相談してくれよ・・」
やれやれだぜ。
「この中にオレ達とパーティ組んでくれるヒーラーさんいませんか?あと2人募集してます。」
テオドールが大声で叫んだ。
ああ、こういうことね。
テオドール達の作戦が功をなし2人組の男女が近寄ってきた。
「ボクはシャルロット、こっちは弟のアンリ。2人ともヒーラーよ。詳しい話を聞かせて貰えるかしら?」
優雅な物腰で話しかけてきた。
オレたちは再びギルドへ戻り空いてるテーブルに席を作るとパーティの目的やドロップアイテムの分配などについて話をした。
シャルロット達は実戦経験を積めればドロップにはあまり興味がないらしい。
それでも分配については均等にということで纏まりオレたちのパーティにシャルロットとアンリが加わった。
「早速行っちゃう?ダンジョン!」
「いいわね。即断即決すぐに行きましょう!」
「うぇーーーい!!」
勇んでダンジョンの入場口へ向かうオレたち。
するとギルド職員に怒られた。
「先に冒険者登録をしてください。」
シャルロット達を含め全員が未登録だった。