世界はキャベツで出来ている。
「イゾウの勘違いじゃないか?」
リョウマと呼ばれている男がその隣にいる大男にしゃべりかけている。
「いや、ワシはたしかにルーデシア王国の公爵で陸軍元帥の何とかってのが我が国への軍事介入の下準備で潜入しているって聞いたんだ!」
間違いなくオレのことだが目的が全然間違って伝わっている!
「ズイザンの兄貴にもそう言ったんだろう?」
「そうじゃ!ワシは良かれと思って言ったんじゃ。そうしたら兄貴が飛び出していったから追い掛けってて、途中で会った同志からこいつに腕飛ばされたって話聞いてムカついたんじゃ!」
「だからっていきなり殺そうとしなくてもいいじゃろうに」
リョウマは苦々しい顔でイゾウを窘めた。
オレが目を覚ましたらいきなりこんな会話が聞こえてきた。シャルが治癒をしてくれたようだ。
しかし今日二回目の負傷なので血が抜けすぎて力が入らない。
「あんたらねえっ!!わたしのイグナシオに何かあったら殺すだけじゃ済まさないんだから!!!!」
シャルが怒りに燃えている。
アリスは…向こうで倒れててアリミノが介抱をしているようだ。
「しかしそいつはルーデシアの公爵で元帥なんだろっ?なんでこんなところにいるんだよ!!」
イゾウが逆切れして叫んだ。
「お前の話で正しいのはオレの肩書だけだ。目的が全然ちがう」
やっとの思いでオレは口をはさんだ。
「オレの目的は魔女。魔女とその手先を倒すためにこの国に来たんだ」
「それといきなり襲ってきたくせに何故攻撃を止めた?」
「魔女だって?そんなものがこの国に…いやまてよ?」
リョウマが口ごもる。
「なんだ?何か知っているなら教えてくれ!!」
「…お前の素性は分った。だが先に知りたいことがある。攻撃を止めたのはそれを知りたいからだ。答えてくれるなら知っている限りを話そう。」
「なんでも教えてやる?なにが知りたいんだ?」
オレは少し苛立ってきた。
「お前の最後に使った剣技のことだ。あれは我が流派の祖の最終奥義なんだが今は失伝して使える者がいない。あの技をどこで誰に習った?」
「星王闘魔断頭剣のことか?あれはオレが生まれたときから使える必殺技だ。」
嘘はない。初めて使ったのは木の枝を振ったときだったが、勝手に身体が動いて発動した。
「生まれながらにしてあの剣技を覚えていたのか…。あれは我が流派では『星王剣』という。名前も共通しているところがあるなあ…。」
リョウマは考え込んでいる。
「さあ答えたぞ!こんどはそっちの番だろ?」
アリスがアリミノに肩を借りながらよろよろと近くにまで歩いてきた。
「お前のいう『魔女』とは我らより高次元に住むあの『魔女』のことでいいんだな?」
リョウマが念を押す。
「おそらくそいつだ。なんだ高次元ってのは?とにかくそいつのことを教えてくれ!」
ため息を吐きながらポツリポツリと話し出す。
「お前ら、というかこの世界の人間に限らず如何なる生物と言えどもあの魔女を倒すことはできない。」
「正に『次元が違う』からだ。」
「どういうことだ?」
「この我々の世界は例えるならばキャベツの『芯』だ。」
「キャベツの芯?」
「キャベツの葉は何層もあるだろう?キャベツは根から水分や養分を摂り、芯を経由して葉に送る。それで葉は育ちキャベツは大きくなる。」
「何が言いたい?」
「『魔女』とはおそらく上位の『葉』の住人だ。我々が信仰している『神』も『葉』の住人だろうが『魔女』は『神』より上位の葉なんだと考えている。そしてあいつらは我々を養分としている。」
「お前もブタや牛などの家畜をみたことがあるだろう?家畜より上位の存在のお前に家畜が勝つ見込みはあるか?」
「たとえ家畜がお前に勝ったとしても、その家畜は神に勝てるか?魔女に勝てるのか?」
オレは押し黙った。
「これはそういう話だ。」
「なぜお前はそう言い切れるんだ?」
回復したアリスがリョウマを睨みつけて問う。
「俺たちの仲間、つまりサムライの先祖に『異次元』に渡った者がいたからだ。」
「「「はあ?」」」」
オレたちの驚きがシンクロした。
それまでまったく会話に参加していなかったイゾウが首をウンウンと振っている。たぶんこいつは剣だけの馬鹿なんだろう。
「まあ正確には異次元に連れ去られた、という表現の方が正しいかもしれないが」
リョウマは訥々と語り出した。




