注文した武器を取りに行く瞬間ってワクワクするだろうなぁ
あれから3週間が過ぎた。
オレは何度か田畑の池酒屋へ足を運びシオンからこの国の情勢を聞いたりして過ごした。
この国は貧富の差が激しく特権階級である貴族が平民から搾取を繰り返し、平民層の不満が爆発寸前だった。
頻繁に行われる貴族らを狙った暗殺事件も、平民の間では恐怖に感じながらも称賛する向きがあるみたいだ。
いずれこの国は変わらなければならないだろう。
しかしオレはそれに積極的に関わろうとは思わない。
皇国の問題は皇国の人間が解決すべきだと思うからだ。
「おーい、『公爵』!護衛任務についてくれないか?」
「公爵はやめろって言っただろ!」
オレを公爵と呼んだシエルはオレの真の素性を知る数少ない人間だ。だからこそタチが悪い。オレたち第4中隊は休息のため隊舎にいる。
「はいはい、公爵『閣下』」
「そういうことじゃな…はぁもう何でもいい…」
「じゃあ護衛任務も了解ってことで。頼んだぞ!」
「ちょ、まて!誰を守るんだか言っていけ!!」
「あはは、今回の護衛対象は皇国議会貴族院議長補佐ヤクト・ランカード伯爵さ。」
「伯爵さまならば私兵がいるだろうに何故我々みたいな者にまで護衛させるんだ?」
「斬奸予告状が届いたんだって。それに戦闘未経験な私兵は頼りにならないんだそうだ。」
「なるほどな。」
「何人連れてく?」
「オレたち4人だけでいい。」
「たまには社会見学のために若手も連れて行ってくれよ。お前らもより年寄りだけど。」
「命令ならば仕方ない。第2分隊を連れて行く。」
「じゃあ後はよろしく。」
勝手なことを言いシエルは立ち去っていった。
「おーい、シャル!仕事だ。」
「おういえ!まいだーりん♡敵は何処?」
「今回は護衛任務だ。襲ってきた敵を倒せ。」
「地味な任務ね。」
アリスはアリミノと稽古している。段々とアリミノの腕が上がってきている。速さだけならオレも敵わないだろう。
「あいつらにも言っといて。」
「イグナシオはどこ行くの?」
「武器屋。」
今まで使っていた大剣は屋外戦闘なら文句ないが、屋内戦とくに狭い室内では取り回しが効かない。
なので狭い場所でも振える剣を発注していたのだが、ちょうど今日が完成予定日なのだ。
「1人で行くの?ついていこうか?」
「素手でもこの街でオレに勝てる奴はいないだろ?だから大丈夫だよ。」
「今のはフラグかな?」
「不吉なことをいうな!」
オレは1人武器屋へ向かった。
スラムを抜けた細い路地裏にその店はあった。
看板も出ていないが、魔女のことを調べていたら偶然この店を見つけた。主人は無愛想で無口、やりづらい事この上ないが売っている品物は確かな物ばかり。
特にお抱えの鍛冶屋が作ったものは特級品だ。
その鍛冶屋は皇国より遥か東の果ての国から来たと言い、作る剣もその故国のもので『ニホントウ』とか『カタナ』とか言うそうだ。
ちなみにここまでの話を主人から聞き出すだけで1月通い詰めなければならなかった。
「こんちはー!オレのカタナ出来てる?」
「ボウズか、出来てるぞ。」
「幾らだ?」
「取り敢えず10,000ゴールド。使ってみて払い足らなければ追加で払いに来い。」
「…あ、はい。」
相場的に1,000ゴールドも払えば一級品のロングソードが買える。更に払い足らなければ?って相変わらずおかしな店だ。
「じゃあ10,000ゴールドここに置くね。」
1,000ゴールド入った皮袋10個をカウンターに置いた。
「じゃあこれがお前の差料だ。」
店主はゴトリとカタナをカウンターに置いた。
「刀身は二尺七寸、簡単に言えば68センチと少々。束まで入れれば言わば三尺の剣だな。」
オレはカタナを鞘から抜いてみる。刀身に反射する光が眩しい。
反りを帯びた青光りする刀身が現れた。波紋が波打つようでとても美しく見える。
「どうだ?」とだけ店主が問う。
「気に入った!」オレも端的に返す。
今まで一度も表情を変えたことがなかった店主がニタリと笑った。
「奴が言うには会心の作だそうだ。」
「重さも長さも丁度良い。握ると手に吸い込まれるようだ。」
「この波紋の美しさは何だ?国宝級の業物じゃあないか!」
オレの口から言葉が溢れてくる。
「あとは使う者次第だ。」
「ありがとうおっちゃん!鍛冶屋にも礼を言っておいてくれ!」
「伝えておく。」
オレは飛ぶように店を出た。腰に差したカタナの重みがこの嬉しさを更に実感させてくれる。
「このカタナならば『魔女』でも切れる!!」
まだ何もこのカタナで切ったことはないがそう確信させる何かがあった。




