初めての集会
「初めまして。ルーデシア帝国公爵、イグナシオ・ルーデシアと申します。」
シエルがキョトン顔してる。
「え?おまえ公爵ってのはあだ名だよな?」
「シエル中隊長、この御方は紛れもなくルーデシア帝国の公爵様なのですよ。」
シオン・カーライルは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
カーライル家の象徴たる艶やかな長い黒髪を後ろで一つに束ね紺碧の瞳でこちらを真っ直ぐに見ている。
この男、齢は21歳だと聞くが年齢にそぐわないほどの落ち着きを見せている。噂では相当の切れ者だと言うが先ほどのような隙のない言動を見せられると納得できる。
「今日は聖女さまと軍神さまは一緒じゃないんですね?是非お会いしたかったのですが」
「さすがに滅ぼした国の王子様に会わせるわけにもいかなくてね。」
「あぁ、『カーライル』の名に遠慮されたのですね。わたしはそもそもカーライルであってカーライルではないんですよ?」
「…と言うと?」
シオンの独白が始まった。
カーライル家にとって長男以外は塵芥であること。更に妾腹だったシオンは産まれてすぐ国外追放にされ皇国へと流れ着いたこと。故にカーライル王国に対して微塵も思うところがないことを告げられた。
「だから次回からは遠慮なく御二人をお連れくださいね?」
シオンは微笑しなから恥ずかしそうに付け加えた。
「さて今度はお集まりの皆さんに紹介したいので中へお入りください。」
オレは招かれるまま室内に歩を進めた。
中に入ると8人の男女が席に座って酒を片手に議論していた。
「だからって皇王を殺るしかないんか?」
ハゲた頭まで真っ赤にしたオッサンが叫ぶ。
「その方が効率的かつ合理的だと言っているのです。」
氷のように冷たい声音で青い髪の女が答える。
「殺るにしたってウチだけの武力じゃあ皇王の首には届かんよ?聖王騎士団をどうやって抜くんだ?」
煽るような口調でガタイの良い男が問いかける。
「そこでこのイグナシオくんの出番なのです!」
シエルが口を挟む。まて?オレの名を出したのか?
場にいた全員がオレに注目する。
「そこのお坊ちゃんがインペリアル・ガード13人を倒せると?」
殺気立った目でハゲ頭がオレを睨み付ける。
「閃光と呼ばれるボクよりも強そうには見えないが?」
筋肉ダルマが訝しむ。
「その子ひとり増えたところで戦力的に意味があるのかしら?」
青髪が皮肉を言う。
「レイリオにユリウス、それにナルディア、そう攻め立てないでくれ。皆に紹介も出来ない。」
シオンが割って入るとレイリオと呼ばれたハゲとユリウスと呼ばれた筋肉、ナルディアと呼ばれた青髪が押し黙った。シオンは思ったよりもこの組織で重い存在のようだ。
「ユリウスに問う。キミと剣聖とではどちらが強い?」
「当然剣聖です。」
「レイリオに問う。剣聖と聖王騎士団13人どちらが強い?」
「それは当然剣聖でしょう。」
「ナルディアに問う。剣聖に軍神、聖女が我が党に加わったら戦力的にどうか?」
「皇王の首を獲ることなど容易いことでしょう。」
「そうだね、3人の言うことはいずれも正しい。ここにいるイグナシオ殿は言うなれば剣聖、軍神、聖女の力を操ることができる天下無双の人材なのだよ。」
「は?意味が分かりません。合理的な説明をお願いします。」
ナルディアが間髪入れず追及する。
「彼は剣聖、軍神、聖女の夫なのだよ。剣聖と軍神は同一人物だから実際には2人と結婚していると言う訳だね。」
「ならば我等はその御仁に指一つ触れられませぬな。」
問答を黙って聞いていた白髪の老人が発言した。
「仰る通りですサウザー老師。最大級の敬意を払って然るべきです。しかも彼が我等にもたらす益は限りなく巨大だ。だが、我等は彼に何が出来るだろうか?」
「然り。対価は等価であるべきですが流石にこれは…。」
サウザーが嘆息する。
「例えばですが。彼の要求にいつでも何でも何度でも応える、というのは如何ですか?まぁこれでも足りないですが。」
「イグナシオ殿は我等に何を望まれますか?」
一拍の静寂の後、オレは答えた。




