従者アリミノ
「キミにはお詫びしなければなるまい。我が集落には3億どころか3万ゴールドもないんじゃよ。」
「まあ、集落を見て何となく分かっていましたよ。だから報酬のことは忘れましょう。クエストも取り下げておいてください。」
「代わりと言っては何じゃが…」
「アリミノをくれるんですか?」
「その子は自分から貴殿に付いていくのだから代わりにはなるまい。ワシが言っているのは…」
奥から若いエルフが剣を抱えてこちらにやってきた。
「せめてこの剣を進呈しよう。銘をエバーミリオンと言ってな、古代エルフ王国から伝わる宝剣じゃ。」
長老はシンプルな草柄の彫り物がされた鞘に収まった細身の長剣を指差した。
手に取って抜いてみる。虹色の光を放つ刀身が現れた。
明らかに魔力を秘めているのが分かる。オレの魔剣とは大違いだ。
「本当に貰っていいのですか?」
「エルフに二言はない。」
「分かりました。アリミノ、使え!」
貰った宝剣をアリミノへ向けて投げる。
「え?わたしが使うんですかマスター?」
「エルフの宝剣だ。エルフが使う方が良いに決まってる。」
「奴隷に宝剣を与えるとは奇特な御仁だ。」
「アリミノは確かに連れて行きますが奴隷にするつもりはないですよ?」
「え?まさかこんなわたしがマスターの奥さまに?」
「そんなわけねーだろッ!」
アリミノにデコピンする。
「お前は今日からオレの従者にする。」
「イエス、マイ マスター!」
「取り敢えず聖都に戻って装備を整えるか。」
ドラゴンとの闘いで防具が壊れているし何ならアリミノは平服だ。
「その前に聖都の方角を教えてもらっていいですか?オレの従者は方向音痴なもんで。」
「えへへ」
オレたちは歩いて聖都へ向かった。
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聖都に着くと街はある話題で持ちきりだった。
「カーライル王国が降伏したぞ!!」
「さすがに王都を3日で落とされては抵抗のしようもないだろうな。」
「軍神と聖女がいたんだ。そりゃあ負けて当然じゃないか?」
シャルとアリスは無事にカーライル王国を平定したみたいだな。
「マスター、何でニヤニヤしてるんですか?」
「アリミノよ、思ったことをそのまま口に出すのは良くないぞ。」
「だってキモ…気味が悪かったんです。」
言い直しても酷いままなんだが?
気を取り直して防具屋に寄る。
前の鉄鎧より丈夫な鋼鉄製のハーフプレートメイルに決めた。
アリミノは魔法でエンチャントされた革鎧を買ってやった。
「マスターありがとう!これ似合ってますか?」
その場でくるくる回って見せてくる。
「馬子にも衣裳というやつだな。似合ってるぞ。」
「わーーい」
宿屋に移動しながらふと気になったことを尋ねる。
「そういやお前剣は使えるのか?」
「え?つ、使えるよ?」
「ほう?ならばオレと稽古してみるか?」
魔剣の柄を握り闘気を練る。オーラが瞬く間にオレを包み込む。
「ごめんなさい!ごめんなさい!嘘言いました。剣なんて握ったこともないです。」
オーラを収めてから
「何でしょうもない嘘つくの?」
「だって、マスターからの初めてのプレゼント取り上げられちゃうと思って。」
剣も使えるようにしないと自衛も出来ないし何より折角の宝剣が勿体ない。
「取り上げはしないけど使えるようにはなってもらうからな。」
「イエス、マスター!」
「さてゼダンのとこへ送り込んで鍛えてもらうかアリスに…は説明がめんどくさいな。」
アリミノが背後からタックルしてくる。その程度の当たりではオレはビクともせんぞ?
「今度は何してんの?」
「わたし1人何処かへやろうとしたでしょ?ぜっーーーたい何処にも行かないんだからッ!!!」
ヤレヤレだぜ?仕方ないからオレが剣を仕込むしかないか。
「そうするとオレが剣を教えるしかないけどいいの?」
「従者に剣を教えるのはマスターの義務ですっ!」
あながち間違いではないな。
宿屋につき早速裏庭で稽古を始める。
「じゃあ今から素振りしろ。回数は500!」
「ひぃ」
「1日100ずつ増やすからな。最初に剣の持ち方と振り方を教えてやる。」
アリミノに木剣を持たせて足の位置、握り、構えを修正する。
「肘が目の位置にくるまで振りかぶって動きを止めろ。」
「ゆっくりでいい。地面に着く寸前まで振り下ろせ。」
アリミノは言われたとおりの動きをする。
「これをこの速度でオレが次の指示を出すまで毎日続けろ。」
「はい!マスター!!」
オレも見ているだけでは暇なので素振りを始める。
「マスターの剣がまるで見えません!」
「鍛えてますから!」
黙々と素振りをする2人。
自分が1000回振った辺りで聞いた。
「アリミノいま何回振った?」
「か、数えてませんでした!」
「じゃあ今から1回目な?」
「ひぃ!」
それからきっちり500回素振りさせ終えたときにはすっかり日が暮れていた。




