皇都に帰還して。
皇都に帰還して一月が経過した。
オレは『大英雄』として帝国民に喧伝され一躍有名人になってしまった。
待遇についても皇帝以下各大臣が集まる御前会議で帝位継承権第一位、公爵、ディリシア領主、陸軍元帥など様々な役を頂くことになったが、継承権と領主の件は辞退した。
シャルとアリスには後で怒られたけど。お飾りは有り難く頂くけど実権はさすがに貰えない。
アリスもルーデシア帝国に降伏したことが評価されて子爵の位を授けられ、陸軍中将に親任された。また、リークレット家当主の身分のままオレとの婚姻関係を継続することも認められた。
シャルは正式に『聖女』認定をされた。オレが帝位継承権を辞退したためか、臣籍降下はなく皇族の身分のままオレに嫁いだことになった。
カーライル王国、マレドニア神聖皇国ともにあれから侵攻をしてこなかった。
カーライル王国は軍が瓦解したためと思われるが、マレドニア神聖皇国の方は意図がわからない。
そもそも同盟を破って何故侵攻してきたのか説明も未だない。
マレドニアにはシャルの借りもあるので近々殴り込みたい。
帝国上層部はカーライル王国を併呑するため大規模な侵攻計画を練っている。その噂を聞いてシャルとアリスは行く気満々だ。何か企みがあるらしいが2人はオレに教えてくれない。
「イグナシオ・ルーデシア元帥閣下、失礼致します。」
トラン・ルーデシア陸軍大佐が執務室に入ってきた。
「カーライル王国侵攻作戦の件でご相談したいことがございます。」
彼は帝国第二皇子だ。作戦本部の参謀を務めている。
「何か問題でもありましたか?」
「お力をお借りしたく参上致しました。」
「具体的に言いますと?」
「『軍神』殿と姉上をお借りできないかと。」
「2人とも行く気満々だったから大佐の方から声をかければ良いのに。」
「あの2人を御せるのは閣下をおいて他におりません。私ごとき戦歴もない若輩の言葉に耳を貸してくれるとは到底思えません。何卒お願いしたく!」
いや、若輩というならオレたちの方が相当若輩よ?
「我が妻たちのために気を遣わせてすみません。オレの方から言っておくのでこの件はご心配なきよう。」
「ありがとうございます!これで我が方の勝利は間違いありません。」
オレがやってる陸軍元帥としての仕事はコレだけなのよね。
直接率いる軍もないから調練すらないし。
暇なので即行動に移す。
シャルの居室のドアを開けつつ
「入るぞー。」
「あっイグナシオだ!」
「珍しいなアリスもいたのか。」
「珍しくないぞ?最近はシャルといることが多いし。」
アリス?最近多い?
「あばばばば、何でもないよ!それよりどしたの?」
「いやトラン殿下から2人にカーライルとの戦に参陣してもらいたいってお願いされてさ。」
2人とも目を輝かし
「「いってもいい!?」」
「もちろん2人がよければ行って貰えると助かる。」
「イグナシオは行かないのか?」
アリスが不思議そうに言う。
「カーライルは2人に任せたよ。オレはマレドニアに行こうかと。」
「攻めに行くの?」
「その前にマレドニアは不審な点だらけなので調査に行こうかと。魔女の件もあるし。」
「ボクたちいないからって無茶しちゃダメだよ?」
この2人には言われたくない。
「気をつけます。」
オレはこの時点で9割方マレドニアを滅ぼすつもりでいた。
残り1割は無垢かもしれない民のため。
すべてがゴミならば灰燼に帰すのみ。
そう決意して皇都を後にした。




