ぼっち幸せに浸る
入学して3週間がたった。
クラスでは仲良しグループが幾つも出来上がっている。
そこには種族も関係がなかった。
ルーデシア帝国などはヒューマン以外を『亜人』と蔑んでいるのにここではそんな差別などない。
皆がきゃっきゃっうふふしているのをオレは微笑ましく眺めていた。
そうオレは傍観者、いわゆるボッチだ。
休憩時間寝たフリ作戦が功を奏したのだろう。
見事に仲間の輪に入るタイミングを逃した。
よかった、窓際の席で。
だって視界に入れると悲しくなるもん。
剣術や体術も2人1組で行われることが多くなってきた。
そう仲良し同士で。
オレですか?1人素振りしてます。
いいんだもんふーーーん。オレちゃん魔術士だから。
世界一つおいんだから。
こんな精神攻撃など神の力で無効化してやる!
などと妄想していたとき、耳に何かが聞こえてきた。
「・・・し。もしもーーし?聞こえますか?」
振り返るとそこにはクラス1番の美少女、アリス・マレニア・リーグレットがいた。
「・・・・・。」
言葉が出てこない。
口は動くが音を発することができない。
「あっ!よかった。こっち向いてくれた。」
安堵の笑みを浮かべるアリス。
か、かわいい。
「ど、ど、ど、どーしますか?」
おい!噛んだぞ!どーしますか?じゃなくてどーしましたか?だろうがッ!!
「? じゃあ組み稽古しようか?」
今は体術の時間だ。
突き蹴り投げ極める。
つまり身体的接触があるわけだ。
殴られても御褒美、蹴られても御褒美。
関節極められて胸でも当たろうものならその場で死んでも良い。
「は、はい!ありがとうございます!」
「よかった。偶には体格差がある相手と訓練しないと体術上手くならないから。こちらこそありがとう。」
アリスはペコリとお辞儀をした。
そして始まる。ボッチ人生全てのラックを注ぎ込んだ幸福の時間が。
アリスを見る。
身長150センチ、金色の髪に白い肌、エメラルドの瞳が人目を引く美少女だ。胸は残念だが。
この子に今から触れると思うと今から股間が滾る。
などと邪な妄想に耽っていたらアリスが消えた。
「ふぇ・・アリスたんどこ?」
心の声が思わず具現化してしまう。
振り返ろうとした矢先、右頬に衝撃が走る。
アリスの右ストレートが刺さった。
更に左右のミドルキックが両脇腹に決まる。
蹴りの間合いを嫌い間を詰めようと近づくがまたしてもアリスが消えた。
「これでトドメです!」
オレの背後に現れたアリスは渾身のハイキックを放つ…が空を切った。
「え?なんで??」
そこには誰もいなかった。
オレはアリスの背後を取り手刀を頸に叩き込んで意識を刈った。
「何ででしょうね。」
笑みを浮かべたオレはさぞかしキモかったことだろう。
オレは最初からアリスに《閲覧》を使っていた。
ただし見ていたのはアリスの裸だったが。
そのため初動の対応が遅れ何発かいいのを貰ってしまった。
その後はちゃんとアリスの闘気の流れを見ていたので先手を打て倒すことができた。
今回の稽古で得たものは多い。
アリスの闘気の流れを見ることで自分の中の闘気に気付くことができたのだ。
何より明日からのオカズに困らなくなったのは僥倖だった。