ディリシアの聖女
大公領都ディリシアを経由してアンリたちが拠点としているリール砦に着いた。
合流する前に砦の様子を見ていたらシャルに袖を引かれた。
「ねえ?あそこに行きたいんだけど…」
指し示された方向を見ると夜戦病院がある。シャルなら回復魔法でお手伝い出来るだろう。
「行っておいで。何かあったら呼ぶんだぞ?」
アンリたちのいる指揮所はここから200mしか離れたないから大丈夫だろ。
「うん!ありがとうイグナシオ。」
何か活き活きしていて微笑ましい。
オレは指揮所に向かった。
「よお!アンリ!ゼダン!それと…エストか?」
笑顔を向けてくるアンリたちと違いエストは物陰に隠れている。
あっ…。親父さん倒したのオレだった。き、気まずい。
「ご無沙汰しておりますイグナシオ卿。シャルロット皇姫殿下との御結婚おめでとうございます。そして…」
や、やばい。いくらクビなかったとはいえマズかったよね?
「亡き父を弔って頂きありがとうございました。」
「お助けすることができず申し訳ありませんでした。」
割と冷静なエストの言葉にホッとする。
「それで…ですね。イグナシオ卿にひとつお詫びしなければならないことが…。」
「お詫び?な、なんでしょ?」
「前にこちらへいらした時、貴方に嫉妬した挙句呪いをかけてしまったのです。」
「ああ、大丈夫ですよ。オレには呪いは効きませんから。」
「で、でも私見えるんです。イグナシオ卿にとんでもない大きさの呪いがかけられているのを!」
神々からの祝福の効果でそういった類のものは無効になるはずなんだが…もしかして『始まりの魔女』かっ!?
「いま呪いがかけられているとしたらそれは恐らく魔女の仕業なので貴女は気にしないでください。」
「でも…え?魔女?」
「イグナシオがいいって言ってるから良いんだよ。そんなもんコイツは何とか出来ちゃうんだから!」
ゼダンが口を挟む。
「ところでイグ兄、シャル姉は一緒じゃないんですか?」
「あー、シャルなら夜戦病院で治療の手伝いしてるぞ。」
「あ・な・た!いくら奥さんとはいえ皇姫殿下に何させとるんじゃい!!」
エストが吠える。初めて見る痴態に一同固まる。これが地なのか?
「あっ…失礼いたしました。」
顔真っ赤になるエスト。
「ともかく夜戦病院へ行ってみましょう。」
アンリが一番に駆け出した。
夜戦病院から歓声が上がっている。宴会でもしてるのか?
天幕を開けて中に入る。
「うぉーーーっ!おれの腕が生えてきた!!!」
「め、目が見えるぞッ!!」
「あ、あんた何者か?高レベルの司祭でもこんなことはできんぞ?」
メガネをかけ白衣を着た初老の男が驚嘆している。
「先生そんなの決まってるだろッ!!『聖女』さまだよ!!!!?!」
「おれたちの聖女さまだーーー!!」
「聖女さまばんざーーーーーーーい!!!」
見るとシャルが重傷者の回復を恐ろしい速さでしている。
「ここにいる者達は砦の中でも一番怪我が重い者たちだったんだけど。」
アンリが放心したように言う。
「わたしも回復魔法使って治療を試しましたがまるで回復しなかったのに。」
「でーんかっ!『聖女』さまだからこそできる神の御技なんですよ?神技と比較して嘆くことはありませんぜ?」
元重傷者から励まされているアンリを尻目にシャルの治療はもうすぐ終わりそうだ。
「聖女さまに皇子さま、剣聖の娘に弟子、そしてイグナシオ。これだけ集まれば皇都救援どころか失地回復も夢じゃないな!」
ゼダンが嬉しそうに妄言を吐く。
「何でオレだけそのまんまなんだよ?」
苦言を呈したオレを見てみんな大笑いした。




