End of the Witch
「ねえ、イグナシオあなた今何処にいるの?」
皇都の門には破城槌が張り付き投石機が街中へ巨岩を打ちまくっている。
帝国軍は既に組織だった抵抗もできずモグラのように皇都に立て篭もり続けていた。
「イグナシオって誰だい?」
全身黒ずくめの鎧に裏地が赤いマントを翻した若い男がアリスに聞いた。
「わたしの恋人。」
「へーえ、軍神さまも女の子してるんだ?どんな奴だ?」
「お偉い王族のアンタとは違って平民だけどわたしより強いよ?」
「君は剣も相当遣うのにもっと強いのか。一度お手合せしてみたいな。」ハーティア王太子が唸る。
「勘違いしているようだけど個人戦ではなく軍勢同士の戦闘がわたしより上手いって言ってるの。」
「は?軍神より強いとかあり得ないだろう?」
驚くハーティアにアリスはバッサリと切り捨てた。
「御坊ちゃまには分からないかもね。」
「俺に向かってそんな口聞くのは君くらいのものだ。」
ハーティアは諦めたように呟いた。
アリスは再び視線を皇都に戻した。
「ところで何のようだったの?」
「ああ、我が軍の戦線が伸び切っているところに兵站部隊が各地で攻撃を受けていてね。皇都は軍神殿に任せて俺が鬱陶しい残党を根絶やしにしてこようと思ったのさ。その挨拶に来たわけだ。」
「好きになさい。あなたの軍が壊滅しても戦局には影響ないもの。」
「はいはい、無事に再会できるように頑張るよ。」
皇都ヴィリオンでは第一皇子アルヴィスが城に残った幕僚と軍議をしていた。
「陛下は捕虜となりレアル皇子は戦死、トラン皇子は行方知れず、皇都は10万の敵兵に囲まれております。我が方は近衛歩兵3千、魔法師団の残兵1千しかおりません。」
「救援部隊は?」
アルヴィスが問う。
「西部にアンリ皇子が1万、南部にリーゼロッテ皇女の2万が健在ですが敗残兵の収拾に時間がかかっているようです。」
「トランは敵の兵站を叩くと言って出撃したんだったな?」
「その通りです。未確認ですが敵兵糧部隊が各地で襲われているという情報もあります。」
「うむ、現状我が軍は籠城するしか手はない。各地の弟妹たちが上手く連携して敵の兵站を潰してくれるのを祈るしかあるまい。」
アルヴィスは何もできない自分を嘆いた。
―――――――――――――――――――――
「イグナシオにシャルロットよ。俺の修行によく耐えた、褒めてやるぞ。」
「ありがとうございます師匠っ!」
「師匠!」
オレとシャルは数ヶ月ぶりに生身の肉体へと戻ってきた。修行が終わったのだ。
「して、これからどうするのだ?」
「決まってます。アンリのところへ向かいます!」
「うむ、お前たちも強くなった。魔人レベルでは相手になるまい。」
「終わりの魔女の弟子として頑張ってきます!」
「よし行ってこい!我が弟子たちよっ!!」
魔女ノワールは高らかに叫んだ。
イグナシオらが去った後、ノワールは独り佇んでいた。
「魔女に『終わり』も『始まり』もないんだがな…。」




