イグナシオ・ルーデシア
「なあ?突然だがアクセサリーで何か欲しいものはないか?」
「本当に突然ね。だけどそんなの決まってるじゃない?」
「何かな?」
「ゆびわよ指輪ッ!言わせないで恥ずかしいわ。」
真っ赤になるシャルロット。
そうか、指輪型にするか。
念のため常時『神聖清拭』を発動させておく媒体を何にするか悩んでいたんだ。
早速、シャルとアンリ用に2つ作ろう。
アンリはオレのことを知らない。
昨日復活したときは混乱していた。
「…あれ?ここは?姉様ッ!ここは何処ですか?」
「ボクと貴方は悪い人たちに捕まっていたの。ここにいるボクの婚約者イグナシオ・ルーデシアさんに助けて貰ったのよ。」
シャルもまだ混乱しているのか?
婚約者?はまだしもオレに家名はないしルーデシアを名乗るとか不遜極まりない。
「に、義兄さん!?初めまして?私はアンリ・ルーデシアと申します。」
「オレはイグナシオ、ただの冒険者だ。」
「イグ兄って呼んでもいいですか?」
「好きに呼ぶといい。」
シャルは御満悦した表情、アンリは尊敬の眼差しを向けてくる。
「…それで、こちらの方は?」
「こちらはノワール、オレの師匠だ。」
「ノワールだ。イグナシオの師匠をしている。」
話を合わせてくれるノワール、割と良いやつかもしれない。
そうこうしているうちに指輪が2つ出来上がる。
精巧な細工が施されたミスリルの指輪だ。
これに『神聖清拭』をエンチャントする。
「出来たーーーッ!!」
「わーーいッ!!」
あれから側を離れないシャルがいつになく喜んでいる。
頬を赤らめシャルが左手を差し出す。
何だ?もう装備したいのか。愛やつじゃ。
オレもシャルに合わせて真剣な面持ちで左手薬指に指輪を嵌める。
目を輝かすシャル。途端に涙が溢れてくる。
「あれ?どうしたシャル、辛いのか?エンチャント失敗したか!?」慌てるオレを遮りもう一つの指輪を手に取るシャル。
オレの左手を取り薬指にその指輪を嵌める。
あっ!そういうことか。あぶねえ気付いてよかった。
まさか求婚したつもりじゃありませんでした、なんて言えないもんな。
漢イグナシオ、責任は取るッ!!
アンリには別のアクセサリーを作っておこう。
「非常時だからこんな形でごめんな?」
「ううん、ボクは今が一番幸せだよ。」
抱きついてきたシャルの頭を撫で撫でしながら抱き締め返す。
「…あのー?お熱いところすいません。」
「状況が今いち分からない、というか記憶がないところがあって教えて貰えると有難いのですが?」
確かにアンリの記憶を飛ばしたのはオレだ、説明責任がオレにはある。
「見てわからないの?イグナシオとボクが夫婦になったのよ!」
まて、そういうこと聞きたいんじゃないと思うぞ。
「姉様、それぐらいは理解してます。そうじゃなくて何で悪い人たちに襲われたのかとか?」
ルーデシア帝国が3方面から侵攻を受けていること、サリウス大公が戦死なされたこと、神聖皇国に滞在していた2人が軟禁されたことなどを説明した。
「付け加えるとルーデシア帝国は皇都を囲まれて皇帝以下で籠城しておるぞ。落ちるのも時間の問題だな。」
ノワールが口を挟む。
「直ぐに救援に行かないと!」
「オレとシャルはここから動けない。師匠との約束を果たさなくてはならないから。」
テオドール、ニース、ゼダン…無事でいてくれ!
「分かった。イグ兄と姉様の分まで私が闘います!」
「オレたちも約束を果たしたら直ぐに向かうから無理だけはしないでくれ!」
オレの言葉にアンリは微笑みながら頷いた。




