非情なる肉塊
都合良く使わせて貰う、か。
魔女ノワールにとって今のオレの状態は都合が良いのだろうか。
色々試してはみたが何も変わらないまま時間だけが過ぎた。
とそのとき「パキッ」という音がした。
するとみるみるうちに視界が開けてくる。
五感ももどる。
「うわっ、臭え!!」
オレは死体の積まれた山の上にいた。
「ナムナム…。」
前世の聖なる呪文を唱え死者を弔う。
どうやら魔女に殺されたようだ。
結果、死体として聖都に侵入できた。
「さてと、アイツらどこにいるかな?」
『千里眼』
自分を中心に索敵する魔法だ。
オレの場合半径2㎞から開始される。
この場所から南東へ5㎞行ったところにシャルとアンリの反応を見つけた。塔のような建築物の中にいる。
オレは魔法『完全隠蔽』で姿と気配を周りから感じ取れないようにしてから移動を開始した。
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塔には15分ほどで着いた。
上層にいるのかと思ったが地下に捕らえられているようだ。
オレが突然現れたらビックリするだろうな?なんて言って声かけてやろうか?
などと考えながら着実に下層へと進む。
ここが最下層か?
不自然なほどに広がる空間、衛兵が200人、中央にふんぞり返って倒れそうになっているデブがいた。
隅には30人ほどの手足をもがれた人間の遺体があった。
凝視すると1人は生きていて肉塊の上で蠢いている。
「キミがイグナシオちゃんだね?姫殿下からお噂は予々聴いているよ?」
デブが話し始めた。
「ボクはサムソン・ブッチ・ゴルデアン男爵。この塔の筆頭拷問官さまさぁ。」
オレはデブの声が耳に入らない。
肉塊とその上に乗っているヒトに《閲覧》を使用する。
「キミはとーーっても強いんだってねえ?死人も蘇生できるんだって?」
…声が出ない、何も考えられない考えたくない。
「だから殺しても無駄と思って2人とも生かしておいたよ?ボクは優しいからねぇ。」
嘘だと言ってくれ…
「御紹介しよう!シャルロット・ルーデシア第二皇姫殿下とアンリ・ルーデシア第四皇子殿下だ!!おや?おやおや?姉弟でイケナイことをしてるねぇ?高貴な方の御趣味は理解しがたい。」
視界の下から紅に染まっていき終いには紅いフィルターがかかったようになった。
「それとも?『狂化』魔法が効きすぎちゃったかな?覚えたての魔法は匙加減が難しいなぁ。」
オレは無詠唱で『神王破壊光線弾』を放つ。
巨大な光の束がデブに命中し大爆発を起こす。地上まで貫通したようだ。
「ぐふ、ぐふふ、効かないねぇ。ボクには魔女さまから教えていただいた『完全無敵防壁』があるからねぇ。」
砂塵の中から無傷のデブが現れた。
「それにキミの相手はボクではないよ?」
デブの台詞と同時にとんでもない斬撃が飛んできた。
オレは魔剣を抜き48回斬撃を薙ぎ払った。
「こ、この技は?」
忘れもしないサリウス大公領でゼダンが使った『剣聖技』だ。
斬撃の来た方向から首の無い男が近づいてきた。




