他神本願
オレは教会で保護されている。
何でも司祭さまの夢に彼等の主神であるイグニス神が現れオレの保護を命じたそうだ。
いわゆる天啓ってやつだな。
お陰で死ぬ危険などない優雅な生活を送れている。
イグニスぐっじょぶ!
ステータスの鑑定も受けたら《神々の加護》というスキルだけがあったそうだ。
その他の能力値も普通の赤子と変わりはなかった。
なので運良く神の恩恵を受けた普通の子という認識で育てられた。
時は流れ14年が経過した。
人の子は13の歳に教会でスキルを授かるための天啓を受ける。
イグニスにあやかってイグナシオと名付けられたオレも例外なく天啓を授かった。
聖魔法を司るイグニスに縁があると思われていたオレが《閲覧》というスキルを得たときは周りの大人はみな落胆したようだ。
《神々の加護》を受けているのだから《死者蘇生》とか《完全回復》とかを授かるものだと思っていたようだ。
《閲覧》は魔法などの現象の中身というか仕組みを知ることが出来るスキルだ。
見るだけ、知るだけならば意味をなさない。
そう誰もが考えたのだろう。
オレ以外は。
オレにとっては《閲覧》ほどの強スキルが貰えたのはそれこそ幸運であった。
例えば魔法。
ファイアーボールを放つためには、火の精霊サラマンダーと風の精霊シルフの力が必要だ。
その仕組みを知るために魔術士は魔法学校へ通う。
ところがオレはそんな必要はない。
一度《閲覧》してしまえば原理を把握できる。
把握したら必要な精霊と《契約》してしまえばよいのだ。
《契約》が強いのは魔術士と違い精霊から力を借りるのではなく、精霊本人と寸分変わらぬオリジナルの力を振るえるところだ。
本人が望んで放つ魔法と渋々貸して貰った魔法とでは威力が違うのは当たり前である。
更に言えばMPも相手持ちなのでオレ自身のステータスはどんなに低くても一切関係ない。
他人(他神?)の魔法を他人のMPを使って本人(神々)が発動したのと同等の威力を発揮するチート魔術士がオレなのである。
今使える魔法は、神聖魔法、龍神魔法、暗黒神魔法、火神魔法、水神魔法、土神魔法、風神魔法、雷神魔法、時空魔法と言ったところかな。
一般的には回復系統は司祭などが使う聖魔法、攻撃系統は火魔法、水魔法、土魔法、風魔法があり、1つでも使えれば立派な魔術士になれ、賢者と言われる者でも精々4つの魔法を使いこなせるくらいだそうだ。
まあ全てオレが使える魔法の劣化版なんだが。
こんなオレでも弱点があるのです。
それはズバリ身体能力!!
ステータス的にはその辺の普通の子レベルなのです。
高レベル戦士が使える身体強化魔法や闘気を身に纏うようになりたくて走り込みや剣の素振りなどは毎日欠かさずしているんだけれども今のところ成果はない。
成果はないんだけれどいつも素振りや筋トレに励むオレを見た司祭様から学校に通うことを勧められた。
学校というのは剣術や魔法の勉強をすることができる場所で、騎士官学校や魔法学校などの専門的な分野の訓練をするところもあるけど、今回オレが勧められたのは万遍なく程々に学べる冒険者学校だった。
魔法は兎も角、独学では剣術の修行の成果がでないので冒険者学校に入ってみることにした。
うちの教会って60過ぎた司祭さまとオレの2人しかいないから同世代に興味があるし、何より暇だしね。