皇都帰還
馬車に揺られて2週間、皇都ヴィリオンに到着した。
実に半年ぶりになる。何か忘れてるような気がするが思い出せない。非常にそわそわする。
思い出せないものは仕方ない、割り切って忘れよう。
皇都の門から大通りを歩く。
人通りが特に多いところだが今日は衛兵の姿がチラホラ。
何か事件でもあったのだろうか?
カーライル王国を出る前に買ったマントのフードを深めに被った。
関わり合いになりたくない。
足早に冒険者ギルドを目指す。
これから拠点とする都市のギルドだから見ておきたいのだ。
ノースアンドのギルドと較べると皇都だからか大きい!豪華!外観は申し分ない。
早速中に入ってみる。
ここのギルドは酒場を併設していないようだ。
またモヒカンに絡まれても嫌だからこの辺もポイント高いぞ。
依頼掲示板を覗く。
昼過ぎだというのに沢山の依頼が貼り付けてある。
内容は商隊の護衛、商店の用心棒などが中心で魔物討伐系はまるでない。モンスターはこの辺にはいないのかも知れないな。
ふと人相書きが目に入る。
何処にでもいるんだよなこの手のヤカラは。
えーと、名前…はイグナシオ 年齢14才 カーライル王国出身で身長170センチ 痩せ型…。
これ以上読む気が失せた。これオレだよね?
もう早いとこ城に行って皇家に保護してもらおう。
風のように素早くギルドから出た。
「いたぞーーー!!冒険者ギルド前で『イグナシオ』発見!!」
突然ですが衛兵に見つかりました。
脱兎の如く逃げるオレ、迫る衛兵。
助けてシャル!アンリ!!オレたち友だちだろ!?
前方からも衛兵がいる。
路地を右に曲がる、壁があった。行き止まりだ。
「観念しろ!『イグナシオ』!!」
倒して良いのならば簡単だ。だがこの場はそうもいかない。
仕方ない。
オレは『重力魔法:無重力』と『風魔法:羽毛疾走』を二重掛けして壁を走り抜け衛兵を撒いた。
このまま皇城へドン!
あっという間に城門に着く。
しかしそこには『鬼』がいた。
100メートル手前でも伝わるその威、その武。
只者ではない、間違いなく剣聖級だ。
「イグナシオ!」
鬼がオレの名を呼ぶ。生憎オレに鬼の知り合いはいない。
「貴方手紙も寄越さないで何処で何してたのよ!?」
「手紙…?」
あっ!!カーライル王国へ向かってから一度もシャルたちに手紙出してなかった!!すると…あの鬼はシャル?
「御無沙汰しておりますシャルロット姫殿下。」
刺激しないよう最大級丁寧に挨拶をする。
「わたくしイグナシオ、シャルロット姫殿下のもとへ帰って参りました。」
鬼が突貫してくる。この速度!このプレッシャー!避けられない。
体当たりを喰らいそのまま倒れ込む。馬乗りになるシャル。
ヤバい!これはマウントポジション!ガード不能の連撃に耐えられるか?
ガードを固めようとしたオレの顔に雨が降って来た。いやこれは涙か?
「グスッ…心配したんだからね…イグナシオ。無事で良かった。」
「ただいま、シャル。会いたかったよ。」
「おかえりイグナシオ、会いたかったんだからぁ!」
泣きじゃくる皇姫さまのあたまを撫でてヨシヨシした。
周りを見るとテオドールたちが集まっていた。
何も言わずにニヤニヤ見物している。
まったくコイツらは相変わらずだ。
でもお陰で帰ってきた実感が湧いてきた。




