成長
更に一週間オレはベッドの上で過ごした。
アンリやテオドールたちも見舞いに来てくれた。
ゼダンはあれから毎日剣聖に稽古をつけてもらっているそうだ。
毎日の出来事をニースが面白おかしく話しそれをシャルロットと一緒に笑いながら聞いていた。
シャルロットはあれから片時もオレの側を離れない。
離れてる間に死なれたら困るから、だって。
あの時のが相当なトラウマになっちゃったんだろうな。
すまないことをした。
漸く動けるようになったオレはゼダンの稽古を見学に行った。
あの時より更に手加減をされているようだがゼダンは剣聖の剣を受けられるようになっていた。
受けるのが精一杯で攻勢に転じることはまだ出来ないようだ。
それでもすごい成長っぷりだ。
テオドールは近衛騎士団の練兵場にいた。
重装歩兵のグループと一緒に訓練を受けている。
見た限りではなかなか上手くなっている。
タンクとして一皮剥けたのかもしれない。
ニースに一番驚いた。
なんと宮廷魔道士から魔法を伝授されていたのだ。
一緒に訓練を見て回っているシャルに聞いてみたところニースの魔力量は常人の10倍はあり魔法の適性もあるそうだ。
すでに初級魔法のファイアーボールを習得してるんだって。
魔法なんて一万人に一人くらいしか使えるようにならないみたいだからニースすげーーわ。
みんなオレが寝ている間充実した日々を送ってたんだなあ。
良き良き。
オレが満足して思わず涙を浮かべるとシャルが慌てて慰めてきた。
「イ、イグナシオならこれからここで訓練すればすぐみんなに追いつく、いえ追い越せるわ。だから心配しないで。」
「あ、ああそうだな。」
そう言えばオレたちいつまでここにいるんだろう。
一度テオドールたちに相談してみよう。
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夜、夕食のあとみんなに集まって貰った。
「なあ、これからどうするか考えてるか?」
「なーに、これからって?」
シャルが不思議そうにオレの顔を覗き込む。
「いや、オレたち学生で学校の後期授業がもう始まってるんだよね…。」
「ダメっ!!帰らないで!!」
涙目でシャルが叫ぶ。
「ほらこのままだと行方不明扱いになるし家族いるヤツは心配するじゃん?その辺含めてどーしよかなってこと。」
「イヤっ!!帰らないで!!」
涙目でシャルが叫ぶ。
もう変なスイッチが入ってしまったんだろう。オレはシャルを抱き寄せて子どもをあやすように頭を撫で撫でして落つかせた。
アンリが口を開く。
「ルーデシア帝国としては君たちのことを歓迎する。好きなだけいるといい、って皇帝陛下が言ってたよ。」
「だからそれを前提に話して大丈夫。」
ゼダンが口火を切る。
「オレはこのまま残りたい。願わくば剣聖の弟子になりたいんだ。許されるかわからないけど、弟子になるまで喰らいつくつもりでいる。だからオレは帰らない。学校は中退する、親にはよろしく言っておいてくれ。」
テオドールが続く。
「オレ筋がいいんだって。今重装歩兵の訓練が楽しくて仕方ないし、近衛の人たちにもすっごく良くしてもらってて、このまま近衛入るかって勧誘もされている。オレとしては受けるつもり。国に帰ってもいいとこ肉屋だしな。親にはよろしく言っておいてくれ。」
ニースはニコニコしながら話し始める。
「よかったみんな残るのね。ワタシの家って貧乏じゃん?だからこのまま魔法習ってあわよくば宮廷魔道士、ダメなら冒険者して家に仕送りしたいって考えてたの。学校もお金かかるし辞めてここに残るのがワタシの最適解ね。親にはよろしく言っておいてね。」
しかしみんな残るんだなあ。あと誰がそれぞれの親によろしく伝えるんだろ?イヤな役目だぜ、オレなら願い下げだな。
「オレの番かな?」
シャルがカタカタ震え出す。
「オレは捨て子だしこのまま残っても問題ないんだが、ちょっと直接挨拶しときたいヤツがいてね。だからいったん帰ってまた戻ってくるつもり。」
「ねえそれ女?」
シャルは違う意味で震えながら問いかけてくる。
オレのシャツを握りしめる力が強い、破けちゃうだろ!
「みんなもいったん帰らないか?ケジメは自分でつけようぜ。」
シャルの質問は意図的にスルーした。
「ねえそれ女?」
怒気鋭い声音でシャルが聞く。
必殺スキル《ナデナデ》発動
シャルはオレの手に噛みついた。
「痛い痛い痛い!」
シャルを見ると泣きながら一生懸命にオレの手を噛んでいる。
痛みを堪えシャルの髪を触りながらオレは話し始めた。
「そいつには世話になってね。そいつのお陰でテオドールたちと仲良くなれたと言っても過言ではない。それにそいつ夢が叶ったんだけどまだ祝福もしてあげてないんだ。確かに女だけどそういう関係じゃないし…ちょっとおっぱい触っ…アッ」
「◯ス!◯ス!◯スっ!!」
「GYAAAAA・・・!!!」
全員から爆笑が起きる。大爆笑だ。
「はー笑いすぎで腹痛いわ。でもそれならワタシたち手紙書くからあなたそれ親に届けて頂戴ね。」
ニースが笑いながら言う。
「死ぬほど心配かけられたし当然だよな。」
テオドールが重々しく断じる。
「適任だよ。」
当たり前だとばかりのゼダン。
「じゃあ帝国を代表してオレがそれぞれの親宛に手紙を書くよ。いきなり帝国で世話になりますって言っても信じられないだろうからね。」
冷静なアンリ。
「もうわかったから勘弁してくれーーーー!!」
オレは泣きながらシャルに赦しを請う。
噛み付くのをやめシャルが言った。
「赦しあげるけど一つだけが条件があるわ。」
何でも聞きますお姫様。
「ぜっーーたい帰ってきて!!」




