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風呂好きのオッサン

「紹介しよう。この男はサリウス・ルーデシア大公。我が弟と紹介するよりは『剣聖』と言った方が早いかな。」


―――!!この男が()()()()()()()、剣聖だと!?


あいた口が塞がらない。

さっきまで一緒に風呂入ってたオッサンだぞ?

「さっきは世話になったなイグナシオ。」

「あっ、はい。」

「そうだ!子ども達から聞いたところによるとイグナシオくんは相当強いらしいな。どうだね明日『剣聖』と手合わせしてみては?」

は?何言ってんすか皇帝陛下?

「イグナシオは強いからもしかしたら叔父さんやられちゃうかも〜♪」

シャルロットが煽る。

◯すぞクソアマ。

「イグナシオさんがさっき風呂であったウザいオッサンって叔父さんのことだったんですねー笑笑」

アンリが乗っかる。

◯すぞクソチビ。

剣聖からドス黒い殺気が漏れ出す。

「イグナシオ、相手はお年寄りだから手加減してやれよ。」

ゼダン、おまえは…。

「皇帝陛下にお願いがあります!ここにいる我が親友ゼダンはカーライル王国きっての剣術道場の一人息子でその剣技は王国随一。願わくば後学のため彼にも剣聖との手合わせを!」

「イグナシオくんは友だち想いだな。良い良い、2人ともサリウスに稽古をつけてもらいなさい。」

皇帝陛下は上機嫌に言った。

―――してやったり!ゼダンざまぁ!!

ゼダンを見ると青ざめている。

「明日はオレの本気を見せてやる。なに心配するなここは皇都、優秀なヒーラーを用意しておいてやる。」

剣聖の御言葉にオレは項垂れた。

ゼダンより青ざめている自信がある。


ピーチクチク。

小鳥の鳴き声が聞こえる。

結局一睡もできないまま朝を迎えてしまった。

『剣聖』のウワサならオレでも聞いたことがある。

竜種最強のレッドドラゴンを単独撃破したとか空間を斬ったとか分身したとか。

何れも人の域を超えている。


――――――――――――――――――――


アッと言う間に御手合わせの時間となりました。

武器は刃引きしたブロードソードを与えられた。

オレたちは剣聖と対峙している。

あれほど感じた殺気も感じない。

静かーーな感じ。

「始めっ!!」

皇帝陛下の合図で御手合わせが始まった。

最初から全開でいくっ!

いきなりオーラブレードを放つ。

剣聖は少し驚いた顔をしたが右手に持った剣で何なく払い退ける。

ゼダンがその隙をついて切り掛かった。

しかし跳ね返される。左手の黒い剣によって。

「ぐっ…これが幻影剣(ミラージュブレード)か!」

研ぎ澄まされた闘気で作られた剣。剣聖の得意とする技の一つだ。

剣聖の姿がぼやける。

ヤバい!

何も見えないが剣で防御を固める。

両手に衝撃が走り支えきれず自らの剣で額が裂かれた。

オレと剣聖との間合いは20メートルはある。

「何て速さ、威力なんだ!」

最早なりふり構えない。

「我イグナシオの名によって命ずる。神なる加護の力今こそ与へん。」

身体に聖なる力、魔なる力、属性付与、身体強化の加護(バフ)がかかる。ただしいつもの倍の力で。

声に出さなくても発動は出来る。

しかし言霊に乗せることにより加護の効果を倍増しなければ抵抗すらできないだろう。

バキッという金属が折られた音の後にドサッという音が続いた。恐らくゼダンがやられたのだろう。声も出せずに。

空気の流れを感じる、瞬間それを避ける。

剣聖の剣が通過した。

最初からオレは《閲覧》を使っている。

だが剣聖の闘気の流れは見えない。

どころか闘気を発してすらいない。

オレたち相手には必要ないのか或いはこれも剣聖の力のなせる技なのか。

剣聖が連撃を放つ。その数12。その全てが先程受けた一撃の重さを内包している。

一撃目

渾身の闘気を込めた剣で受け流す。

二撃目

左手刀で威力を削ごうとするが失敗。腕ごと持っていかれる。

三撃目

剣で弾こうとしたら剣が破裂した。右腕もズタズタに切り裂かれた。

四撃目

記憶がない。


―――――――――――――――――――――


気がつくとオレは見知らぬ天井を見上げていた。






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