債務不履行
みんながテオドールの遺骸を囲み泣きじゃくっている中、オレは神聖魔法『死者蘇生』を使おうとしていた。
だがしかし、使えない。
何度も何度も唱えるが一向にテオドールは生き返らない。
な、なぜだ?まさか《契約》スキルが消えた?
オレは直ぐにステータスを見た。
…ある。《契約》スキルは確実にある。
じゃあ何でだ!これじゃあ契約違反、債務不履行じゃないか!!
もう一度『死者蘇生』を唱える。
何も起こらない。
頬が冷たくなっている。
触ると涙が滝のように出ていた。
「イグナシオ危ない!」
アンリが突然オレを突き飛ばす。
飛ばされながらアンリを見る。
まるでスローモーションのようにゆっくりと時間が流れる。
アンリの背後に槍を持ったゴブリンが。
避けてくれッ!!
オレの願いも虚しくアンリの胸板から槍の穂先が生えてきて血が噴き出した。
「アンリーーー!!」
シャルの絶叫が響く。
死にゆくアンリと目があった。
アンリはオレを見て微笑んでいる。
途端にオレの視界は溢れ出る涙で遮られた。
ちくしょうちくしょう…なんで発動しないんだ?オレはイグナシオ。神々の契約者だぞ…。
ふと違和感に気付く。
もしやこれか?
「ニース!ゼダン!シャル!すまないが少しだけ時間を稼いでくれ!」
「わかったッ!!」
ゼダンの声が届く。
「《閲覧》スキル発動!!」
産まれてすぐに締結した契約内容の閲覧を行う。
「やっぱりか…。」
そこには、『甲:城崎敬介』と記載されていた。
「《契約》スキル発動!!」
契約スキルを使用し次の7文字を追記する。
『甲:城崎敬介ことイグナシオ』
これでどうだッ?
「みんな待たせた!『スピアランス』!!」
地面から氷の槍が生えこの場にいた全てのゴブリンを串刺しにした。
「『『死者蘇生』』!!」
二重詠唱だ。
テオドールとアンリが眩い光に包まれる…。
「え?オレ死んだんじゃ?」
「ね、姉さん…。」
2人とも生き返った。傷も塞がっている。
全員から歓喜の声が上がる。
「よ、よかった…。」
オレが多分一番安堵している。
やはり契約名義が違かったからか。割と面倒くさい仕様だな。
ブツブツ呟いているオレはいつの間にかみんなに囲まれている。
イグナシオは素早く回り込んだ。
・・・逃走に失敗した。
「さて、説明してもらおうかしら?」
ニースが般若のような顔で聞いてくる。
「まって、その前にお礼が先よ。ありがとうイグナシオ。で?さっきの魔法は何?」
シャルロットが口許をヒクヒクしながら問いかけてくる。
―――もはや言い逃れは出来まい。
オレは諦めて《契約》スキルや《閲覧》スキルのことを話し始めた。
「ほえーー?何それチートおぶチートじゃない?」
ニースがプンスコ怒ってる。
「オレが死ぬ前に使ってくれよな…。」
テオドールが苦笑いしながら苦言を呈しアンリもそれに同意する。
「死なせてすまない。たださっきまで魔法が使えなくてだな…」
誤解されたままなのも嫌なので名義が違かった件も話してみた。
「前世の記憶もあるのか。じゃあ通算するといま何歳になるんだ?」
ゼダンから斜め上な質問が飛ぶ。
「いま14で前世は30歳で死んだから44歳?」
「「「「「オッサンじゃーーーーん!!!!!」」」」」
全員からのツッコミがダンジョン内でコダマした。
それを聞いたオレたちは大爆笑した。




