君がゲーム【2話】
「お前聞いたか?【夜の一匹狼】昨日出たらしいぞ」
「あぁ、もちろん、役場の人も困ってたな」
「ここ【イールム】は最初の街だから初心者プレイヤーが多くてみんな逃げてくわ強いプレイヤーは先に行くわで大変だよ…」
「データでは満月の夜にしか出ないって書いてるけど昨日は三日月だろ?なんでまた…」
「分からねぇ、とりあえず掲示板の書き込みを見て様子を見よう」
「「おう」」
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「あーあーあー」
「ルヲどうした?」
「ヒャダインせんぱーい、いつまで続くんすか?この道…もうくたくたっすよ」
「そうだな、リスポーンした位置がたまたま悪かったのかもしれないな」
「そんなぁ〜」
ガーンと肩を落とすルヲ
「歩くしかないわよ、とりあえず次の街はなんだっけ?」
「えーっと、【イールム】という街みたいですね」
ルヲたちが目指す最初の街は初心者の街【イールム】
役場や酒場や宿屋など基本的なお店や建物が並んでいる。
なんでも宿屋が初心者向けに安くしてあるとか。
「くぅ〜ん。」
「ん?ルヲなんか喋ったか?」
「いやーなんも?」
「そうか、今なんかくぅーんって聞こえたんだけど…」
「うちも聞こえた」
「くぅ〜ん。」
「ほら!やっぱり聞こえるよ!」
「おいおいまたなんかいんのかよ」
「ん?あれじゃね?」
ルヲが道端に落ちている段ボールに指をさす
「くぅ〜ん。」
「ほら、やっぱりこの中だ」
「なんだ捨て犬か?現実味が増してるな」
「感心してる場合じゃないでしょ、よーしよし今あけまちゅからね〜」
「おい、シイナ毎回思うんだけど小動物に向かって赤ちゃん言葉きもいぞ、顔とあってない」
「うっさい!顔は関係ないでしょ!まずいいから開けるわよ」
するとシイナは段ボールをがぱっと開けた
「くぅ〜ん、くぅ〜ん」
中には茶色と白が合わさった子犬のような生き物が鼻をすすりながらひょっこりと顔を見せた。
「「「可愛い…」」」
「おいなんだこいつ、可愛いな、鍋にしよーぜ!」
「あんたはなんでも鍋にしない!」
「さっきのウサギも可愛かったですけどこの犬みたいなのも可愛いですね」
「うーむ、この愛らしい顔そして綺麗な毛並み、鼻から垂れる鼻水、可愛いな…」
「おいおいみんな、ここにキュートで愛くるしいプレイヤーがいるじゃないか!ほら!ここ!目の前に!」
「「「あんた:お前は黙ってて」」」
「……くぅ〜ん。←ルヲ」
「にしても捨て犬ですかね、なんでこんなところに」
「ここら辺は魔物もいないからな、誰かが置いてったのかそれとも安全だと思って段ボールの中にいたのか、」
「まぁなんでもいいわ、この子連れていきましょ親か飼い主が見つかるまで」
「えーこいつの面倒見るのー?めんどー面倒なだけにー」
「「………」」
「…よし!じゃあこいつも連れてさっさと最初の街に行くぞ!」
「くぅ〜ん。ズズズ。」
こうしてルヲ達は謎の生き物を連れて最初の街【イールム】へ向かうのであった。
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「はぁ〜着いたぁ〜」
想像以上に長い道にぐったりする赤葉美波ことシイナ
「おー綺麗だな〜」
街並みに感心する壁波翔マことヒャダイン
「あー喉渇いた水〜」
長歩きに水を欲しがる松山たけることバンブ
「ふむふむここが最初の街イールム」
RPG風な街並みにワクワクする兎原きょうすけことラビスケ
「ここはどこでぇーすかぁー?ほっほっほけきょ!」
歩くのに飽きて頭が壊れたこの男山田けいすけことルヲ
「さぁさぁみなさん!まずは街に着いたら宿を探しましょう!」
みんなに教えながらまとめる放課後eスポーツ部の顧問杉並れんやことレンヤ
初めての町となるここイールムで物語が始まる。
「おーい!これ宿屋じゃねぇのかぁ?」
ルヲが遠くで呼んでいる
駆け寄ってみるとそこにはリンゴみたいな真っ赤な果物や黄色い果物がたくさん並んでいる。
「どこからどう見ても果物屋さんやないかーい」
「てへっ」
「すごいですね、美味しそう。味覚とかもあるんですか?」
「えぇ、味覚聴覚触覚や嗅覚まで全部ありますよ」
「へぇーすごい」
とても感心するラビスケ
「ほぉ、なぁなぁおばちゃん!この赤いリンゴみたいなやつ貰ってもいいか?」
「赤いリンゴみたいなやつ?あぁ、【レチム】ね、いいけどデリー持ってる?5デリー必要だけど」
「デリーってなんだ?」
「お金ですね、私たちはまだ始めたばかりなのでまだ持ってません、一応バンドからも確認できます」
「えーそんなぁー」
「そうかいそうかい、始めたばかりの子達なのね今日は多いこと、どれ、おばさんが特別にレチム全員分あげちゃうよ」
「いいのか!おばちゃん!」
「あぁ、いいとも!初心者の子達には優しくしろってうちの旦那もうるさいからね、ほほほ」
「そっかぁ、おばちゃんはこのゲーム始めたばかりなの?にしてはもう店開いてるみたいだけど」
「ゲーム?私は昔っからここで果実屋をやってるよ。今では古き店だがね、今日は初心者見習いの子達がたくさんくるよ」
「ほぉ、つまり、、どゆこと?」
「あれだよルヲ、このおばちゃんは俺たちが今やってる【モルクエ】っていうゲームで元から設定されてあるCPUみたいなものだよ。だしょ?先生」
「えぇ、ヒャダインくん正解、このモルクエには約2通りあって1つがコンピューターの【CPU】ゲーム内のキャラクターやモンスターのことだね。そしてもう1つが【プレイヤー】僕たちのような大人から子供まで現実世界でプレイしてる人たちのことだね」
「へぇーなるほどです」
「なんか本物のおばちゃんと話してる気分だよな」
「そうね、立体だしやっぱり現実味があるわね」
「どれ、貰ったレチムとかいう食いもん食ってみっか!」
ガブリとレチムに食らいつくヒャダイン
「ジュルリ、うんめぇーー!!」
ヒャダインが食べたレチムからは透明な果汁が太陽の日差しを浴びながらキラキラ溢れていた。
「めっちゃうめーぞ!食ってみ!」
「はぁ、うるさいわねどれどれ」
とシイナ
カプッ
「っ………!!おいひー!」
シイナが食べたレチムからも透明な果汁が溢れる。
「これやばい、ハマりそう…なんていうか甘くてなおかつ果肉から溢れ出す甘くてジューシーな果汁、なにこれフルーティーなお水かしら…」
「うんめー!これさっぱりとした甘い水にかぶりついてるみたいだな」
「果肉もシャキシャキとして美味しいですね!硬い桃みたいです!」
「あぁ、たしかに美味しいなこれ、そして果実のいい香り、とろける」
「あっはっは、喜んでもらえておばちゃん嬉しいよ。レチムはまだそこらへんの森で獲れる果実だからね、特別な森で獲れる果実はもっとすごいのがあるよ!」
「こんなにうまいもんがもっとあるのか、こりゃ楽しみが増えますなぁ、おばちゃん!御馳走様!次来るときはデリーだっけか?いっぱい持ってくるよ!」
「あいよっ」
そしてルヲ達は今日泊まる宿屋を探すため優しいおばちゃんのいる果実屋を後にした。
「宿屋って言ったら大きい建物だよな?なんかいっぱいあって分からねーなぁ」
「お、ここじゃないか?」
ヒャダインがさす指の先には看板があり、大きな字で【ビバリア】と書かれていた。
「なんか若干ボロいなここ」
「まずいいから入ろうぜ!いい香りがぷんぷんする!」
と、ずかずか入りに行くヒャダイン
「ちょっと待ちなさいよ」
シイナも続く
「この匂いって、先生…ひょっとして」
「ゲームなので大丈夫ですよ!現実で飲まなければなにも問題はありません」
「は、はぁ…」
「おいラビスケ行くぞ〜」
「は、はい!」
そこにはラビスケが思ってた通りの光景が広がっていた。
そう、ここは酒屋だったのだ。
丸い木のテーブルの上で腕相撲をするスキンヘッドのいかついおじさんと顎髭が伸びた外国人風のおじさん。
店の中はとても賑やかで奥では賭け事が行われている。
「うほーい!酒だ酒だ!おじさん!酒一杯くれ!」
「かしこまりました。ウァルチでよろしいでしょうか?」
「あぁ!なんでもいいぜ!」
「ちょっとヒャダイン!私たちデリーないのよ?」
「お客様今なんと?」
「シーっ、シイナだめだろ?それ言うとこの店から追い出されちまう」
「でも…!」
「任せとけ俺に策がある」
「………なんか分からないけど仕方ないわねあとは任せたわよ」
「あぁ、任せとけ!さーて飲むぞ飲むぞー!」
「くぅーん!」
「よしよし、いい子だから待っててね」
そしてヒャダイン達は人生初のお酒を飲むのであった。
ーーーーーーーその日の夜ーーーーーーーー
「ぶふーん、だから美波何回も言ってんだろー?俺は明るくなんかねぇ!はっちゃけてるんだって」
「だぁーかぁーらぁーそれを明るいって言うのぉー!分からないの?高校生にもなって、まだまだお子ちゃまね」
「あーん?お子ちゃまだぁ?俺は酒も飲める立派な大人だっつーの、なっきょうすけ!」
「ひゃい、ひっく、ひょーまひゃんわぁ、大人ひっく、でっす!」
「ほらほらぁーだから大人だろー?」
「ほんとかしらぁー、けいすけだってまだまだ子供だもん、ねー!けいすけぇー」
「あびろびば、おごっ……なななかきさみじんこがこっっ!おっおっ!!……あがっ…!」
「ほーら、まだ子供じゃない」
「先生、こいつら完全に酔ってますよね」
「えぇ、これは完全に酔ってますね、正直ここまでとは、先が思いやられます。あとけいすけ君に関しては酒で頭がやられてるようですね」
すると酒場のオーナーらしき人がこちらへ寄ってきた。
「あのー賑やかなところすみません、そろそろ閉店時間なのでお代をいただいて今日のところはお帰り願いたいですが…」
「あーもうこんな時間なんですね、分かりました、ほら、ヒャダインお代だして!」
「あーん?お金〜?持ってにゃいよそんなのぉ〜誰か持ってねーのかぁ?」
「え、」
「お客様今なんと?」
「んー?だぁーかぁーらぁー、デリーだっけ?1デリーたりとも持ってないにょ〜!」
「おい、ヒャダイン!!」
「はぁ、つまりデリーを一つも持ってきてない、と言うことでよろしいでしょうか?」
「あい!」
「では仕方ありませんね、盗賊と認識してあなた達を排除します」
「「「へ?」」」
酒場のオーナーが口笛を鳴らした。
すると奥から肩に刺青を入れた巨大なおじさんが大きな斧を持ってこちらに近づいてきた。
さすがに驚いたのかヒャダイン達の酔いが覚める。
「おいおい、これまずくないか?」
「ちょっと、ヒャダイン先輩どうすんすか!」
「そうよ!なにか策があるんでしょーねぇ?」
「えっと、その、酒飲んで忘れちゃった」
「「「おいおい……」」」
「おい、ガキども話は済んだか?」
「待ってくださいハゲのおっさん!俺たちには策があるんです!」
「ほぉ、なんだ?言ってみろ」
「はい、そのぉ〜うんちぶりぶり!」
「お前おちょくってんのか?」
「ひいいっ」
ジョボジョボと黒いズボンにおしっこをもらすルヲ
「まずい、ヒャダインどうする」
「待ってろ、今考えてる」
ヒャダインはなにかないかと辺りを見渡す。
すると奥で賭け事をやってた人たちがまだ賭け事をしているではないか。
「まずはこのちびがきから真っ二つにするか!なははっ!!」
「ひょえっ、おえっ、急に吐き気が、タンマタンマ」
「待ってられるか!!」
刺身のおじさんが斧を振りかぶる。
「ちょっと待った!!デリーがあったぜ!」
ピタッと振りかぶった斧が止まる。
「あーん?どこにあんだ?またおちょくってんのか?」
「まぁそうはやまんなって、おーいそこのにいちゃん達賭け事やろーぜ!」
「ひゃひゃひゃ…ん?なんだ?賭け事?どうするお前ら」
ゴニョゴニョと話し合う客達
「いいぜ!で、なにが欲しいんだ?」
「おう!お前らが持ってる有りデリー全部くれ!」
「はーん?デリー全部だと?……そんな話通るわけねーだろ?」
「承知のうえさ、そしたらこっちはこの美女をあげるよ」
「美女って誰のことだ?」
「美女なんてどこにいるの?ここの周りには女の子は私だけ…ってことは…私!?」
「ほぉ、たしかに美人な女の子だ、よし乗ろう」
うひゃひゃと高笑いをする客達
「美女なのは認めるけどなんでうちが賭け事に使われないといけないのー!こんな酒臭い男達とずっと一緒なんていやよ!」
「まぁまぁ、俺には秘策があるから、大丈夫、絶対にこの賭け勝ってみせる」
「ほんとに大丈夫なんでしょーねー?」
「おいお兄さん達、腕相撲で勝負を決めないか?」
そう、このお客さん達は全員体がひょろっとしている。力自慢のヒャダインは楽々と勝てるだろう。
「相手はみんな細いですよ?そんな話に乗るわけ…」
「ひゃひゃひゃ、いいぜ!腕相撲で勝負な!」
「乗った!?」
「ははっそうこなくちゃ、で?誰が俺と戦うんだ?」
余裕そうにヒャダインが相手を誘う
「ひゃひゃひゃ、おーいボンスー!出番だぞー!今日は酒に合う賭けだ」
「え?まだ誰かいんの?」
すると奥から巨体の大男が姿を現した。
「酒、美味い、もっと美味しくしたい」
「おいおいこいつやべーぞ、よく漫画に出てくる日本語おかしくてやたらと力強いやつだって!」
「シイナ、ちょっとこの服預かってくれ」
「あっ、ちょっと!!」
バサっとヒャダインが着ていた上の服を預かるシイナ
「本気で行かねーとやばい気がしてな…」
「ヒャダイン……私のために頑張ってよね!」
「おう!ついでに頑張るぜ!」
「悪魔でも酒の金払うためだからな」
「ちょっと!優先順位がおかしいでしょ!」
「ひゃひゃひゃ、おい、さっさとやるぞ!」
ジリジリと睨み合う2人
普段は賑やかな酒屋がシンとなり皆に緊張が走る。
「はい!えールールね!ルールは一本勝負!負けても最後!勝っても最後!お互い悔いのないようにね!それではー、、ファイっ!!」
「なんでルヲさんが審判やってるんですか…」
と突っ込むラビスケ
「ダンッ!」
という音と同時に、机が壊れるんじゃないかぐらいのパワーで腕相撲が始まった。
「ぐあっ、ぐぬぬぬぬぬ」
自分の何倍もある腕の相手に少し苦戦しながらも食らいつくヒャダイン
「お酒!お酒!お酒!飲む!」
巨体の男も自分の体を使いながら徐々に詰めていく
「ちょっと大丈夫!?押されてるわよ!」
「ぐあっ、ぐぐぐ」
ヒャダインの手の甲が机ギリギリまできた。そしてその手が着こうとした瞬間
「あ、吐くわこれ、おえええっ」
「酒!臭い!ナニコレ!キタナイ!」
そう、酒を飲み過ぎてアルコールがお腹に溜まったルヲが巨体の背中の上でゲロったのだ。
その瞬間をついてヒャダインが一気に持っていく。
「ぬおおおっ、ふんぬっ!」
「臭い!強い!臭い!強い!」
「おええええっ、あ、これ昼間に食ったレチムの食べかすだ、もったいないから食べよっと……んー!おいひぃ〜」
「なに、おいひぃ〜って笑顔になってんのよ!なにしてるのよ…」
「いやだってルールは一本勝負だけだぜ?吐いちゃダメなんて一言も言ってない。ルールは俺、俺がルールだ……」
「なんか、わけわからないこと言ってるけど、今回は助かるわ!いけー!ヒャダインー!」
シイナの声が届いたのか力が増すヒャダイン
「ぬおおおおっ、ぐっぐっおらぁっ!」
バンッッ!!
先に拳が机に着いたのは巨体の男だった
「っしゃぁぁぁぁ!勝った!勝ったぞ!!」
「やったー!良かったーほんとよかった…」
とあまりの嬉しさに膝から崩れ落ちるシイナ
「俺の…負け…」
「さーて!約束通りあんたらが持ってるデリーを貰おうか」
「ちっ、仕方ねーな、これで全部だよ」
ジャラジャラと袋に入ってた銀色の銀貨が机の上に広がる。
「銀貨1枚につき5デリーだよ、とってけとってけ 」
客達はそういい酒屋から消えてった
「22、23、24、25…てことは…125デリーか!」
「おっさん!酒のデリーはなんぼだ!」
「100デリーですぞ」
「よし!足りた!おっさんこれ!」
「はい、確かに受け取りました」
「どうなるかと思ったぜ…な、ルヲ」
「ちょ、タンマ気持ち悪いうっぷ」
飲み過ぎてまた気持ち悪くなるルヲ
「とっとと宿屋見つけて休もうぜ!」
こうしてルヲ達は酒屋を後にして宿屋を探しに出かけた。
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「あの〜先生質問なんですけど」
「はい、なんでしょうラビスケさん」
「このバンドってマップも見れるんですよね?」
「はい」
「マップが見れるってことは宿屋の場所も載ってるってことですよね?」
「そうですね、森やダンジョン、クエストやボスのところでは実際に歩かないと表示されませんが、街などは一歩でも入ればマップに表示されますね」
「てことは、僕たち夜までずっと探してたのって無駄足だったんじゃ…」
「いえいえ、最初の街イールムについて色々知ることができたじゃないですか、決して無駄ではありません」
「ならいいんですけど…」
「てかマップの存在すっかり忘れてた…」
少し落ち込むシイナ
「どれ、さっそくマップを開いてみるか」
ヒャダインがバンドに念るとバンドが光り緑色の画面がでる。
「マップマップっと、えーっとここが太古の泉で、あ、目の前じゃん」
「目の前ってあのボロ家?」
「あぁ、マップにはそう書いてある」
ヒャダイン達の目の前には今にも崩れ落ちそうなほどボロボロな木の家が建っていた。
「おいおいまじか、あの家に泊まんのか」
少し心配そうにするバンブ
「うぃ〜ひっく、おははふひは〜」
「あんたいつまで酔ってんのよ…」
「まぁいい今日はここに泊まろう、安いことで有名らしいしな」
目の前の宿屋まで歩きそーっと入り口のドアを開ける
「ギギギィーー」
「あの〜すみませ〜ん、どなたかいらっしゃいますか〜?」
ヒャダインが恐る恐る声をかける。
「………」
「あれーおっかしいな、誰もいないのかな、」
「気味が悪いですね、別なところ探します?」
すると、
「ワオーーン」
先ほどいた泉の方から獣の鳴き声が聞こえた
「なんだなんだ?」
その鳴き声とともに宿屋の奥から物音が聞こえた。
「お、誰かいるの……」
その瞬間ものすごい速さでヒャダイン達の間を何者かが潜り抜けドアが開く
「バゴンッ」
とドアを開く音
「きゃ!なに!?」
そしてヒャダイン達は目にするのであった。
ドアが壊れ外を見てみるとそこには、1匹の満月に照らされた狼がこちらを見ていた。
その瞬間、
「危ない!伏せろ!」
何者かが大声を上げてヒャダイン達に声をかける。
「ワオンッ」
言われるがまましゃがむと後ろのボロ屋が真っ二つに引き裂かれていた。
ガラガラガッシャーン
「ひええ〜あっぶねぇ、なんだあれ、」
と間一髪避けたヒャダイン達
「あいつは、【夜の一匹狼】又の名を【月狼】(ムーンウルフ)じゃ」
「あんたいつの間に、」
ヒャダインの後ろで黒いフードをかぶったおじいさんが冷静に説明した。
「ガルルルッ」
「なんじゃ、やけに血の気が騒いどるの、ましてやうちの宿屋を壊してまで」
「じいちゃん!あんたここの宿屋の宿主なのか!?」
「あぁ、そうじゃ、わしがこの宿屋【ククール】のオーナーじゃ」
「じゃあドア壊して外出たのも?」
「あぁ、そうとも、わしじゃ」
「どんだけ素早いんだよじいさん…」
「なーに、【SE】が【500】になるとこのくらいの素早さくらい身につく」
「はぇ〜【SE】もなかなか良さそうだな」
「で、あんたらは戦えるのかい?見た感じ旅を始めたばかりに見えるが」
「はい!今日はじめました!」
自信満々に答えるラビスケ
「ほっほっほっ、だと思ったよ、どれ見ていなさいこれがご老人の闘いさ」
と老人が狼のところに行こうとした瞬間
「おいこら!でかい犬!あっちに行け!おら!小石!小石!」
先ほどの強風で酔いから覚めたルヲが狼に向かって【小石】を投げつけていた。
「ちょっと!なにしてんのよ!!早く逃げなさい!」
「うっせーぞシイナ!こいつ俺がお肉たくさん食べる夢見たのにぶち壊しやがった!許さねぇ!」
「よくそんな怖い化け物に小石で戦おうとするわね…」
すると狼が目に見えぬ速さでルヲに近づきお腹に噛み付いた。
「ぐほっ、、」
「「「ルヲ!!!!」」」
みんなが一斉に叫ぶ
「みん、あがっ、く、苦しい…くる、しくない?あれ?苦しくないし痛くもねーぞ?」
「ちょっと!どういうこと!?」
「はははっ、説明します!このモルクエというゲームは現実で感じる痛みがゲームの中ではワタに触れるぐらいの気持ちよさに変わります。なので噛みつかれようが刺されようが痛くはないのです」
「え、神ゲーじゃね?」
「えぇ、ゲームの世界でも痛かったら誰でも嫌でしょう。それをとてつもなく軽減したのがこのモルクエです」
「おい、いいから早く助けてくれ、HPが徐々に減ってってる…」
ルヲの頭にあるゲージが黄色になった。
「まずい!早く助けなきゃ」
「ちなみに死んだらどうなるんですか?」
「前回のセーブゾーンまで戻りますね」
「てことはまだセーブしてないから、あの丘から始まるの!?」
「えぇ、そうなりますね」
「まずいわ、あの長い丘はルヲにとってそこの狼よりも大変なことよ、ゲームを投げ出すかもしれない」
「ほっほっほ、これは驚いた、あの狼に噛まれても平気そうにしておる」
「おじいちゃん!お願い!ルヲを助けて!」
「そう急ぐでないどれ、ここはわし直伝の【スキル】をお嬢ちゃんに教えてあげよう」
そう言いながら宿屋のおじいちゃんは手から青い光を出してシイナのおでこに手をやる
「えっ、スキルってなに?まさかステータスにあったやつ?」
「えぇ、どうやらそのおじいさんから【スキル】が貰えるみたいですね」
するとシイナの頭の中で女性みたいな声が流れた。
『スキル:【波動拳】を取得しました』
「ほれ、もう終わったぞい」
「え、これで終わり!?」
特にシイナの身に変わったことはなかった。
「ほれ、わしが足止めしとくからそのスキルをあやつのお腹に当ててみーい」
そう言いながらおじいさんは得意の足の速さで狼を魅了させる。
その間にシイナは狼に近づく
「ほれ!今じゃ!」
「うん、ごめんね、狼さん」
と狼のお腹に優しく手をやるシイナ
「おいこら!ぶりっこぶってんじゃねぇ!早く助けろ!」
「うっさい!!」
と、同時に狼のお腹が凹み白い霧のようなものが円を描き狼が木に向かって吹き飛ぶ。
「ギャオン!」
「うわ、腹に跡ついたし……てかシイナ今のなに!?すげー技出てたぞ!」
お腹に波動拳を打ったので狼に噛まれたルヲが鋭い牙から離された。
「え、今のうちがやったの?すごーい!」
と自分の手を見ながら目をキラキラさせるシイナ
「シイナ先輩すごいっす!今パンってなってバゴーンって飛んでったっす!」
ラビスケも興奮する。
「みんな!安心するのは早い!まだ狼が生きてる!」
「ガルルルッ」
「あれ食らってもまだ生きてんのか!?」
驚くバンブ
「いけ!シイナ!波動拳!」
「ちょっと!うちはモンスターじゃないしあのおじいさんがいたから使えたの!」
「あれ!?あのじいさんは!?」
「ほほーい!ここじゃよ〜」
空から声がするので上を見てみると満月と小柄な体が合わさり狼の鼻目掛けてとてつもないスピードで膝蹴りをした。
案の定狼は吹き飛んだ。
そしてみな思った。
「「「お前が倒すんかーい」」」
と。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3話に続く