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俺の部屋にある段ボールの中、異世界(旧)  作者: 風大
第二章 『奴隷の国』
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2章 16.襲う恐怖

喉乾くとほんと死ぬかと思うの俺だけかな……

「熱っ!いや冷たっ!いや熱っ!いや冷たっ!何この風!」


 何もない場所に進むにつれて向かい風が強くなっていくが、その風がかなり奇妙。熱い熱風かと感じていると次に冷たい冷風だと感じ、冷風だと感じたら次に熱風と変化する風。これが何かと関係するのであれば調べる価値はあるが。


「調べる手段が無いため無理でした。あ~悲し」


「ん~…」


「一緒に悲しんでくれて嬉しいよ……周りの人は悲しんでくれないんだよな。それどころか蹴られて殴られて終わりだし……」


「ん~…」


 俺と横に一緒にいるエルフと思われる子供と一緒にうつむき、吐息を吐いてまた歩き進めていると、突然前からサスサスと砂の上を歩くような足音が耳に入った。その音を一緒に聞いていた横の子は足を止め、かなりそわそわした様子で何度も俺の方向に顔を向ける。


「どうした?前に人もいないしたぶん俺たちが歩いてる足音だと思うぞ?粉々になったレンガとかが砂と似てるからこんな音だと思うし」


「ん……」


「ほんと…どうした…?」


「ん~……」


 急に挙動がおかしくなった『彼女』を見て、心配の表情が勝手に浮かぶ。周りは変わらず崩壊した都市で血のにおいが混じった奇妙で不快な風が吹いている。この都市は歩いていてずっと見ていたはずなのに『彼女』は今になって挙動不審なのは何か厄介なことでも起きたのか、それとも何かを知ったのか。


「ひとまず歩かないと何も分かんねぇな……分かんねぇことだらけだな~マジで」


「ん~?」


「お、復活したか。えーっと……子供。いや、ロリのほうがいいか?」


 名づけをするのは慣れていないため、子供やロリ、爺さんや眼鏡野郎などのありきたりな感じの名前しか付けられない。前にネットゲームで『シャイニング』と付けてやっていたが……ま~自分のネーミングセンスが死んでいることが数時間後に分かったものだ。それほど名付け親の適性がない。


「んー!ん~ん!んー!」


 ロリという言葉に嫌気がさしたのか、拳を高々と上げ、強く握りしめる。周りの煙が俺の視界を通り過ぎているが、彼女が拳を上げた途端風向きと言うか煙の動く向きが変化した。なぜか緊迫とした空気だが、その空気を上位互換にさせる煙の強烈なにおい。


「―――ん」


「何をする気でしょうか……?」


「ん」


「―――えー……」


「んー!」


「……拳を後ろに下げて……前に突き出ぁあああああああ!いってぇ~!急に腹に殴んなよ!死ぬよ俺!てか、俺なんで殴られて蹴られることが多いんだよ!待ってやめて、痛ぇぇえええええええええええ!」


「ん~ん~!」


 なぜか美少女との恒例行事となりつつある殴りと蹴りを入れられ絶叫し、地面に倒れる。無様な俺を見る彼女の瞳はさっきのそわそわした挙動の時と違い、笑っていて何より嬉しそうだった。


「ま…まあ……いっか……」


 痛みを味わうのはいつどんな時でも嫌だが、不安や絶望を見ている目や表情をされるよりかはまだマシかもしれない。


「俺って主人公に適してんじゃね?魔法も複数一気に使えるし……1年間一人暮らしをした甲斐があったもんだな……」


 そう悲しい自画自賛をボソッと呟く。この呟きが悲しい自画自賛だと痛感したのか、脳内にいるレイルが静かにため息をして「ロー君……大丈夫?」と慰めにならない言葉を言った。


「あの……ほんと泣くよ?」


「ん……?」


「あ、大丈夫。君に言ったわけじゃないから―――っと」


 ゆっくりと体を起き上がらせ服に着いた土や砂に似た粉々のレンガを払い落とす。楽しい時間だったが、この和んだ空気は前から来るあの奇妙な風によって再度不穏な空気に入れ替えられた。


「マジでなんだよ、この風……。今『怪物』がどこにいるのかわかってないってのに」


「んん」


「お……ありがとう」


 共感をしたと言いたいのか、激しく首を上下に振る横の子。彼女の頭に手を置き少し撫でて、また足を動かした。

 ―――もう20分は経っただろうか。一向に景色は変わらない。ただ崩壊して更地になってしまったこの場所を何分も見ながら俺と彼女は歩いている。風の空気に熱や冷気などがあり乾燥しているせいで、喉はカラカラ。今すぐに水を飲みたいと思っているが悲しいことにピクニックの基本の持ち物である水筒は無く、魔法の水を飲むが全く飲んだ気がしない。


「マジで死ぬ~……水を飲まねぇと死ぬぅぅ。魔法で出した水はあれ飲み水じゃねぇのかよ~……。せっかく思いついた考えだったのに飲んだ感覚ゼロ。俺魔法使ったよなってくらい……やべぇ…声出したら余計喉死ぬ」


 必要以上に文句を言いすぎたため喉のうるおい具合は絶望的。


「どうする俺……考えろよ……あ……そうえばあいつが……れ、レイル」


「は~い!ロー君の精霊のレイルで~す!しっかり聞いてたよ~」


「聞いてたなら早く言えよ……ゴホッゴホッ……言い過ぎた……喉がァ……」


 いつも通りのレイルに文句を言ったがそれが決め手となり喉死にましたと自分の視界に映し出されたように感じた。1回するたびに喉に激痛が走る咳を何度かして苦しんでいると何も起きていないレイルは話を切り出した。


「魔法の水はブブーだから。あれは飲めないの。さすがはロー君……知識不足…」


「―――」


 呆れる眼差しが意識内で見えつつ話は続く。


「………あと、前を見たら水はあると思う……ただ―――」


「マジかっ、ゴホッ…死んだ~ガラガラ声~……でも…前にってどっかに着いたのか……?」


「そうそう。たぶん今横にいるエルフが連れて行きたがってた場所。ほら、エルフちゃん、ウキウキじゃん」


 そう言われた俺は顔をエルフに向ける。少女は飛び跳ねて目を輝かせていた。


「さすがにな……」


 もうこれ以上水を飲まず声を出すのは本気で危険だと思った俺はとりあえず意識で声を出すことに変更し、レイルとの話を再開させた。


「ロー君は『奴隷』を知ってるよね」


 ああ、知ってる。世界にあっちゃいけないやばい制度だってことくらいは。


「その『奴隷』ってこの都市に使われてるって知ってる?」


 ど、どういうことだ……?

 突然告げられたこの都市の状況に驚愕の表情が浮かぶ。この都市は綺麗で残さなければならないと思っていたこの都市が酷く汚れた最悪の都市だと。レイルはもう1つ衝撃的なことを告げた。今置かれている状況を。


「この光景を作り出したのは『最強』の人物。簡単に言ったらあの時の騎士や魔動物の少女の2人と同類の奴」


「―――は?」


 あらためて今置かれている状況は絶望的であったことに気づき、鋭い吐息が乾燥した喉から吐き出された。途端、恐怖とともに異常な威力の突風と土煙が俺たちを襲い始めた。

『最強』の座の人が関与してるわけだけど……さあ、誰がその『最強』の座か。

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