2章 15.不可解な変化
変化した~
*
左腕が無くなった。元々あった左腕の部分は肩の前部分をしっかり斬られた跡になっている。流れる血を見つめ、熱さに耐え、痛みを紛らわせるために俺は叫ぶが左腕を斬った子供にしか届かない。
「何か、治癒魔法を……くっそ、覚えときゃ良かった……」
自分の準備不足に後悔するが、そんな時間などない。今後悔したところで今の状況を打破することを考えなかったら何もできずただ死ぬのが目に見える。とりあえずあの子の居場所を探さねぇと。
「ヒール!ヒール!」
脳内で必死に治癒魔法の詠唱と思われる言葉を言いながら必死に出血を止めてくれるレイルの声が響く。痛みが引いていくのを感じた俺はぼやけていく視界で何とか子供の位置の把握をしようと周りを見渡す。黒い煙に土煙、粉砕された家々、微かに見える人の死体とこちらに流れてくる血。焦げるような匂いと血の匂いが混ざり気分が悪くなりそうな匂いへと変化した煙を嗅ぎながらも何度も何度も首を振り子供を探した。が。
「どこにもいない……」
さっきまでいた子供がどこにもいない。横にも上にもいない子供に気味悪く思いつつ何度も何度も周りを見る。途端、右側に気配を感じた。不穏な空気が一瞬にして感じた気配によってつくられる。
「―――ん」
「あ、あれ……?さっきの子と違うような気がするんだけど……」
「ん~?」
「喋れない……まあそうか……包帯してるのは変わんねぇもんな―――ってそうじゃねぇよ!?」
「ん~!」
あまりにも普通に喋ってしまったことに疑問を抱き、ツッコミを入れた。ツッコミをした反動で痛みが襲いながらも『彼女』を見て戸惑いを覚える。『彼女』はツッコミに不思議そうにあたふたしているのだが俺はそれ以上に戸惑った部分があった。包帯から出た横に尖った少し長い耳が見えるのだ。
「もしこの子がさっきの子でないならば―――いやそうじゃない。ならこの子は脳内にある俺の可愛いが正義探知が反応するほどの『美少女』。小柄な子で服装は赤いワンピースを着ている見た目は完璧に少女だよな……包帯で顔見えないけど……」
「ん~?」
「―――君は何しに来たの?」
首を傾げる『彼女』に問う。肯定か否定の問いではなく普通の問いにしたのは、喋れなくてもさっきの子のようにコミュニケーションが取れない子ではないため、言葉でなくしっかりとジェスチャーで伝えてくれると思ったからだ。
「ん?」
「え?」
「ん~!」
「え……え?」
両手を上げて寝起きの時にするあの動作をする『少女』。突然切り上げられてしまった問いかけにやや困惑しつつ脳内で治癒魔法の詠唱を唱え続けるレイルに「ちょっといいか?」と話しかけた。
「何ロー君!!今は手が離せないところなんだけど!?」
「あーごめん。今血が止まってるのもお前のおかげだしな……。でもちょっと聞いてくれ」
「―――分かったよぉ~も~ほんとロー君ったら~」
頬を赤く染めたレイルが脳裏に浮かび、俺の怒りが蓄積される。
「やっぱやめるわ」
「ちょ、待ってロー君!告白はしておいたほうが良いよ!私だったらちゃんといいよ、の一つ返事で完結するから!」
「告白じゃねぇって!『エルフ』のことだよ!エ・ル・フ・だ!」
謎の茶番を終わらせ話の話題を変えた。あの長い耳の特徴を持つ異世界での種族と言えば『エルフ』以外思いつかない。初めて会えたかもしれない『エルフ』に胸を躍らせてしまったためレイルに問いかけたということだ。ただレイルの性格上、俺が美少女を見て胸を躍らせると―――
「ロー君!可愛すぎる私が今懸命に治癒魔法をして血を止めて左腕をどうにかしようと必死に必死にロー君のためを思ってやってる美少女可愛すぎこれまでにない最高の精霊の私を差し置いて目の前にいるあの危険かもしれないエルフのことを!?ロー君!」
こう憤慨してとりあえずやばい。好きという感情で動いているのかただ単に仲間としての感情で動いているのかよくわからなかったレイルだが今回ばかりは鈍感な俺でもわかる。分かってしまった。これは好きと言う感情でしか動いていない。もし今もっと怒らせてしまったら左腕から一気に血がドバドバと流れ出てくるだろう。さすがに阻止するのが最善の道。
「一旦落ち着け、えーっと『美少女可愛すぎこれまでにない最高の精霊』のレイルさん」
「うんうん!じゃあ、ロー君変更ね!『これまでにない最高の可愛いが詰まった笑顔も最高で一つ一つの動きやしぐさが可愛い最高最強美少女』だから!エッヘン!」
「エッヘンじゃねぇ!状況的に都市とかやばいことになってる今、一応やばいんだぞ!?
調子に乗ってしまったレイルを正そうと言葉を並べるが、聞く耳を持たないレイルにはこの言葉が届かず長々と話が脳内で語られていく。しばらく無理だと諦めた俺は意識をレイルではなく『エルフ』に向けた。
「えーっと……何の質問がいいかな……」
「ん……んん」
「…?どうした?」
「ん、んんん」
何かを伝えたいのか、包帯がもぞもぞと動いていて『彼女』の指は何もなくなった都市の方向を差している。
「あそこに何かあるのか?」
「ん」
「そうか……でもな……さっきのあの子も近くにいる可能性もあるしましてはこの『エルフ』の子と同一人物の可能性あるし……どうすっかな」
少女が頷く動作を見て様々な可能性と不安で頭がいっぱいになる。もし本当にこの子がさっきの子と同一人物なら、油断した隙を見て殺そうと企んでいる可能性が高い。近くにいたとしても同じだろう。
「―――」
「んー」
「―――」
「んー?」
「反則じゃね?」
「んー!」
包帯が少しだけほどけて瞳が視界に入った。彼女の瞳はエメラルドのように輝く緑色で、柔らかい目。個人的にやっぱりアンカの目が好きだがトップ3に入るほど可愛い目をしている。そんな目は俺を見つめて行こう?と問いかけているようにも感じた。可愛いが正義であり不確定要素を考えるのも馬鹿馬鹿しいと思った俺は微笑を浮かばせ小さく頷く。
「ん~!!ん~!!」
頷いた俺を見てよほどうれしかったのか瞼をしっかり下げて笑みを現し、周りではしゃぎまくった。
「―――」
もし、あの表情が行動が偽物なら。もし、都市を人を殺そうとしたら。様々な可能性が横切りながら微笑んで見ていると、左腕があった部分に違和感を感じた。不愉快などの嫌な違和感ではなく、感覚がなかった部分に風が当たっているという違和感。
「あ……あれ?あー。レイルか。サンキュー」
顔を左腕があった部分に向けると、そこにはさっきまで無かった腕が、当然あるはずだろうと訴えかけるように復活していた。一生腕が無いのではと心配していたがレイルが治してくれたことに感謝でしかない。
「腕の感覚もいいな。よし、行くか」
「ん~!」
拳を上に上げる少女に微笑みかけながら崩壊してしまった部分に向かって歩き始めた。何かが変わるのかもという淡い期待を抱きながら。
変化とは突然起きるものらしい。
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