2章 14.巻き起こる恐怖の空気
かなり遅れて申し訳ない!
奴隷という言葉は最も不愉快な言葉だと私は思っている。人間であるにもかかわらず所有物とされ、労働の強制、売買などもあるひどいこと。最近になって奴隷という存在は消え去ったと言われていたが、今、ユークラリアは表と裏の裏のほうは奴隷都市だということが分かってしまった。こんなに綺麗な都市が、ただ嘘をついていたかのように見えて、そう感じてしまう。
「詳しく聞かせてください。この都市の地下で起きていることを」
顔を強張らせながら言った私に敬語を直せと言わんばかりにジッと見つめた後、クイはコクリと頷いて話を始めた。
「気がついたらなぜか暗い地下にいたの。周りを見渡すと血が付いた壁と奥で照らされる子供の死体、その前で鞭に打たれている子供がいて、他にも魔法石を運んでいる子供の姿がいっぱいあった」
「それは全部子供……?」
「うん。全員子供だった。種族は関係なくて亜人、エルフ、人、魔人と関係なく」
「魔人も!?」
出ることがないだろうと思っていた種族の魔人が口に出されたことに驚き、声を張り上げる。その声に驚いた店員や客はこちらを見て不愉快そうに見た。その空気を無くそうと私は謝罪し、不快そうな客の目を気にしつつ話を戻した。
「魔人が子供というのは見たことないけど……」
「……うーん……でもいたんだよね……魔人に特徴とか特にないけど……クイは分かったっていうかなんというか……あーもう。分かんない!」
「場所とかは分かる?行けるんだったら行きたいんだけど……」
この場所に行けば都市の裏側を知ることが出来る。ロクさんが言っていた危険な気配の人がこの都市に来た理由も関係してそうな雰囲気があったためこの問いをクイに投げた。すると困り顔で考え込み、再び話が途切れる。と、その時、空気を粉砕させるかのように破壊音が店の外から鳴り響き、噴煙が扉や窓を壊して突風が私たちを襲った。突風は灼熱の砂漠を連想させる熱さで、同時に雪景色を連想させる冷たさが感じる奇妙な風だった。
「………この風……クイ、知ってる。これ、地下で戦ってた時に……」
蘇っていく記憶を確認するかのように呟くクイ。その呟きを聞こうとするが、彼女が放つ小さな呟きを聞くことを防ごうと言わんばかりに突風が次々と威力を強めていき、風が進む道全てを壊すほどの威力でこちらに押し寄せていく。
「と、とりあえず反魔法のほうが良いですよね!『エル・ミーナ』!」
相手の魔法の威力を減少させる反魔法の『エル・ミーナ』。ロクさんが使う『カウンター』という魔法反射と少し違い、魔法を跳ね返すことではなく威力を弱めるほうに特化した反魔法だ。今吹いてくる風も髪が少し暴れるが体が持っていかれるほどの強さではなくなる。
詠唱とともに現れた魔法陣は店の人たちを盾のように守り、風は横に流れていく。風の熱さと冷たさから解放された人たちは無事だったと安心しながらホッと吐息を漏らし安心感を見せていた。ただ安心するのはまだ早く、吹き荒れる風で舞い上がる土煙に人影が映し出された。この風を起こした張本人であると同時に理解する。
「誰ですか」
「ッチ。なんだよ。すぐに敵扱いか?そういうのはな、ちゃんと挨拶をして話し合って俺が攻撃的になった、とか魔法を撃ったとか、何かしら理由を言ってからにしたらどうだよ。お前はあれか?お前も『奴隷』にでもなりてぇのか?だったら大歓迎だな。俺の所有物が増えてすることは減る。まあ前みたいに奴隷の人数が少ないってわけじゃねえけどさ」
舌打ちをした後、何も考えず自分のことを物語る人影に怒りが生まれた。言っていること、していることが異常者。さっきの和んでいた空気は一気に冷え、周りの人は人影に恐怖を抱いて震えている。
「私が震えてるだけだったら何も起きない……私がやらないと」
最初から前に出て勇敢に戦おうと前向きな姿勢を見せるロクさんは今この場にいない。彼は彼で何かと戦っているかもしれないのなら、ガルさんか、私がやるしかない。
恐怖を唇を噛んで抑えて私は立ち上がった。当然手も足もさっき噛んだ唇も震えている。心臓の音も以上に聞こえて今すぐにでも目を閉じてこの状況を消したい。そんな不安と恐怖に怯えながらも右手を固く握って人影に向かって声を発した。
「もう一度聞きます!あなたは、誰ですか!」
張り上げた声は震えていて、心臓は握りしめられているのかと思う程痛い。この痛みや不安や恐怖に抗うように私は声を再度張り上げる。
「あなたは誰なんですか!ここで何をしたんですか!何がしたいんですか!」
怖い、逃げ去りたい、何で逃げないのか、何で立ち向かおうとするのかと自分の弱さが脳内で訴えかけてくる。それでもなお、何も言わなくなった人影に問いただした。すると人影からため息を吐いた音が聞こえた。ただ1回吐いただけで何も変わらないため息がさっきまであった土煙などを人影を中心として一気に消えるような突風へと変化する。
「ねぇ。何回も何回も何回も何回もギャアギャアギャアギャアうるさいんだよ。ただの所有物でしかないお前が持ち主に問いただすな」
ため息によって姿を現したのは男。襟の部分が長く、フードを被っているため顔は見ずらいが、太陽の光によって見えるのは艶やかな茶髪と私を睨みつける鋭い目。
「―――あなたは……何をっ―――!」
彼の何も相手のことを考えず口にした言葉に憤慨して魔法陣を大量に描く。ただの初級魔法である『グラッチ』だが、数で押し切れば上級魔法を上回るほどの威力になるはず―――
「―――だからさぁ。言ってんだろ?ただの所有物でしかないんだよ、お前らは。『この都市にいる住民とか全員俺の奴隷』だ。操ろうと思えばいつでも操れて動かせて殺せる。こんな感じにな」
「ぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!痛い!痛い!いた……ぁぁ」
店員の人がもがき苦しみ痙攣を起こし、赤い塊を地面に吐き出す。塊は地面を赤く浸食して汚れていく。とその時、ほんの数秒痙攣していた店員の動きが止まり、彼女の口から赤い液体が流れだした。酷く突然の死を目の前で映し出されてしまったのだ。
「あとは……あ~だりぃ。はぁ」
「ま、魔法陣が……」
さっき大量に描いた魔法陣は彼のため息で生じた突風だけで壊された。
「もうここでの役目もあと少しで終わるし、奴隷も使ってちょっと遊ぼうとしただけだ。何か悪いことでもあんのか?弱さを隠す弱虫女」
不敵に笑みを浮かばせる彼を見た私の怒りは頂点に達す。
「いざ見ると腹しか立ちません!」
「あーあ。怒ったところでなのによ」
そう言った瞬間、再度突風が巻き起こる。思わぬ風に目を瞑り目を開けると、彼の横、後ろに立ち並ぶ少女たちが目の前で映し出された。人数は数えきれない。
「遊ぼうぜ」
彼の発した言葉と浮かばせた笑みと同時に少女たちは魔法陣を描き、私たちを襲い始めた。
おいおい誰だよお前!って感じですね~。ロクはどうなったんだと思う人は次の話に分かるぜ。
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レビュー来たら感謝感激雨あられです




