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俺の部屋にある段ボールの中、異世界(旧)  作者: 風大
第二章 『奴隷の国』
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2章 10.『残酷』

「じゃあ私たちは探してくるから魔法をお願いね」


「―――ん」


 小さく返事をして3人と別れる。私は魔法陣を無数に描いて魔法結界を張り、男の人を待つことになっている、が。


「―――」


「おねぇちゃん…!!開けてよ…!!お願い!」


「―――」


「お願い………お願い……みんな……いなく…ならないでぇ……」


 静けさのあるこの空間に波の声音が響き渡った。その声は頭の中に、心に、何もない場所に響き渡り、訴えかけてくる。声が聞こえるたびに心臓は跳ね、胸が苦しい。あの子を一緒に連れて行きたいがどうしても危険だ。安全面を考えたら苦しい思いをしてでも彼女を置いていくしかない。助け出すためにも。


「―――っ」


 歯を噛み、私は魔法陣を描く。その魔法陣を使い、身体強化、魔力強化を消す結界、そして結界範囲にいる人物やあらゆるものの動きが遅くなる結界が造り出した。デメリットがかなり多いこの2つの結界。けれどそれは通常の人なら、の話。私の動きが遅くなっても私が動くことも何か行動するわけじゃない。ただ考えたものを相手に撃つだけ。


「―――『オヴィス・シグサ』」


 いつも出さない声を絞り出し、詠唱を唱えた。途端、奥から男の人が剣を持ち、襲い掛かってくるのが視界に入る。そんな男を結界が彼の動きを遅くして、私が考え生み出した電撃を彼に向けて放つ。勝ったと確信した私は唇を緩ませていたが、確信をかき消すかのように目の前に無傷の男の姿が。


「―――っ!」


「ふっ……俺が死ぬわけねぇだろ……『代わり』ならいくらでもいる。奴隷が消えない限りな!」


 不敵な笑みを浮かばせる男。頬が一瞬で強張り、今見ている光景を必死に否定しようと首を横に振る。


「なんだぁ、お前・さっきまで感情も全くなかったクズなのに今は感情があるんだな。まあそうか、こいつらが苦しむ光景を見たら無理ないか」


「―――!だ……め……!」


 放った電撃に撃たれ肌が焦げ、黒くなっていた3人。宙に浮かされている3人は残酷で、自分を恨みたくなるような、いや、恨みたくなる光景しか、ない。

 私の瞳にわずかにあった光も消え、暗闇と化す。


「これはお前がやった行動の結果だ!おとなしく燃えてろ!『フル・フレイヤ』!」


「―――!?」


 結界内であるにもかかわらず私を嘲笑うかのように向かって来る炎のボールは異常な早さを見せた。視界に入っても私には何もできず、炎のボールは私の腹に当たり、同時に脳が熱さに支配されていった。


「ぁ―――ぁぁぁ……」


「性能も出来も全然な魔法陣と結界。よくこんなもので俺を殺そうとしたな。殺すならもっとマシな魔法陣を描ければよかっただろうが。まあ、お前らはそんなもの習ってもないから無理だろうけどな。どうだ?顔を燃やされた感想は」


 痛みに耐えながらまぶたを少し上げる。とそこに見えたのはいろんな場所に描いておいた希望の陣が次々と男の指によって壊されていく光景のみ。ただの残酷な映像だけだった。


「こっちはすることが多いんだよ。奴隷の数も少しずつ減って忙しくなってるってのに……ちょっとは言うこと聞け」


「―――っ」


 何を言われても私の心には響かない、響かないからこそ心に届く『何か』が私にある。


「聞いてんのか、おい。早く働け」


 言われるがままに働き、痛みを味わい目の前で死ぬ人まで見た。こんなことを味わう子供がこの世にこの場所以外ないんじゃないかと思ってしまう。いや、そうだろう。


「おい、おい!耳ぶっ壊れたのか!?早く働け!」


 何もせず、何もできず、死を見て、立ち上がれない人など多数。今置かれている私の状況で「立ち上がれ」と言われてもどうやっても無理。可能性が皆無の中、逆にこの男に従う気力すらも残っていない。


「―――聞けって言ってんだろうがァ!」


「―――」


 顔の熱さが冷えて痛みが強烈になっていく中、その顔に拳が当たった。途端、体は宙を舞い後ろに吹き飛ばされていった。臓器が跳ね、脳が警鐘を鳴らす。と思っていたのも束の間、吹き飛ばされた先にある壁に体がぶつかり、衝撃が脳に一斉に押し寄せた。


「―――っ」


 壁は粉砕し、へこみがつくられている。痛い。けれど顔の熱さと痛み、目の前の光景と比べたら全く違うと言えるほどの痛みだ。


「平然そうな顔してよ。余裕ぶってんのか?反吐が出る」


 不敵な笑みを浮かべつつもどこか不快感をあらわにさせながらこちらにゆっくりと近づいてくる。押し寄せる痛みと恐怖。手足は震え何もすることができない。脳も警鐘を鳴らすだけで打開策を考えようとしない。


「働けねぇ…か。また減っちまったな~奴隷。することが多いってのに」


 男は頭を掻き、不機嫌そうに顔をしかめる。背後に無数の魔法陣も描き、私を殺そうとする殺気だけが男から伝わっていた。打開策など何もない。どうしようもできない。ならせめて―――


「……あ?」


「―――」


「何目をつむってんだよ。なんだ、私は死にますよ?、か?つまんね。まあいいけどよ。―――死ね」


 あの3人のこと、そして扉の向こうにいるあの子が脳裏に浮かんだと同時に私の意識はここで途切れた。

『お別れ』……あの男やばいよな~。

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