2章 9.初めて
感情
*
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。この2つの言葉の繰り返しだった。私の人生はこんな人生。何の意味もないこの人生を今すぐ終わらせたかった。
「おい!何失敗してんだ!こっち来い!」
黒い鞭を持った男は地面に鞭を叩きつけ私に向かって叫ぶ。すごく怖い。なんでこんなことをしないといけないのか分からないのにただ怖い男の人に指示され、その指示されたことをする。指示されたことをちゃんと成し遂げられなかったり、失敗したら私は痛いのに、熱いのに、怖い男の人に痛くされる。
「嫌なのに………嫌なのに……」
「おい!早く来い!死にたいのかぁ!?」
小さく呟く私の声も聞き逃さず睨みつける。襟の部分が長く、フードを被っているため顔は見ずらいが、睨みつけているのは確かだった。
言われるがまま男の人について行き、個室に入れられる。その個室には私と同じくらい小柄の人が何人も入れらていて、痣や切り傷がひどく目立っていた。血で汚れたボロボロの服、血で汚れた地面。何もかもが血で汚れている。全てあの人たちがやったと思うと背筋が凍って仕方ない。
「―――ぁ」
この残酷な光景がずっと視界に入り息を詰める。どうしようもできない状況、助けを求める視線、奥から聞こえてくる足音。全てが怖い、嫌だ。なんでこんな思いにならないといけないのか分からない、
そう思っていると個室の扉が開き、男の人が入ってくる。不敵な笑みを浮かばせている男の人は鞭で叩き、私のボロボロの服が血で汚れた。そして私の希望も夢も恐怖も嫌悪感も叩き壊され、何も感じなくなった。
「―――早く働け!魔法石を運ばねぇ奴らはすぐさま死んでもらうぞ!」
新たにこの地下に人が入ってきた。私より背は低く、揺れる青髪は暗い地下でも輝くほど綺麗。そんな彼女は膝を震わせ男の人に言われるがまま働く。
「―――嫌だ……お出かけ……嫌だ……」
それぞれの目から頬を伝う涙をボロボロの服で拭いながら、黒いクリスタルの魔法石を運んでいる。最初、私がなぜかこの地下に連れて来られた時、無理やり働かされていた時に呟いていたことを彼女は同じように言う。
「―――」
泣き、震える彼女を、助けたい。初めての感情が私の中から込みあがっていく。男の人を見て剣を頭に刺したくなる、彼女の手を引いて地上へ出してあげたいと。
「―――」
「―――わ……私、何か…しちゃった……?」
私が彼女の瞳を見ると、彼女は唇を震わせ、目に『水』を溜める。青色に染まった彼女の顔にある『水』を指で拭ってあげ、水滴を地面に落とした。
「……おねぇ…ちゃん……どうした…の……?」
謎の行動と目線を向ける私を見て、不思議そうに問いかける。私は長く何も言葉を発しなかったため何も話せない。漏れる息で返事をする程度。そのため彼女の問いかけに何も答えない。ただ、表情をつくることが出来るため、言葉ではなく表情で伝えようと笑みを顔に張り付けた。
「―――え……えが…お?うれしい……の?」
問いかけに首を横に振り否定する。すると私のことが理解できなく理解しようとしたいのか、頭を抱え考え込む。そんな彼女の手を掴み、助ける方法として考えた作戦に移った。
まず最初はこの子が隠れる場所を探し、隠れてもらう。隠れてもらっている間私は男の人を独学で身に着けた魔法で行動不能にするか殺す。ハイリスクだが逆にハイリターンでもある。
「―――ぁ」
「……この…おねぇちゃんたちも………い…っしょ?優しい……?」
前から歩いてきた女の子3人。同じ時にこの地下に連れ込まれた人。一緒に手伝ってくれると言ってくれた3人だ。
「この子を助ける…よね?私たちは3人であの男を呼び寄せるから、後は頼んだよ?サポートはできる限りするけどすごいできるわけじゃないし」
優しく微笑む3人のうちの1人、ぼさぼさで短髪黒髪ヘアが特徴の彼女が言う。それに続いて右にいる茶髪で肩に当たるくらいの長さの彼女と左にいる短髪赤髪ヘアの彼女が頷いた。
「―――?おねぇちゃんたち……なに……するの?」
まだ状況が把握しきれていない青髪の彼女。ただこれでいい。状況を理解してしまうと私たちについてくるかもしれない。ついてくると彼女を助けたかったのに、助けるための作戦のせいで助けられなかったということがありかねない。失敗する可能性を減らすために。
「―――ばい……ばい………」
彼女を隠せる個室を見つけ、個室の中に彼女だけを入れる。突然の出来事に驚きの顔が隠しきれていない。
「……わ……私…おねぇちゃんと…いっしょに……いたい……」
「ごめんね。私たちは行かなきゃいけないんだ。もし帰ってきたら一緒に遊ぼうね」
「私も」「私もそう」
3人とも彼女に別れる決意して苦笑をする。
「……私と……一緒に……遊ぼうね……」
「―――おねぇちゃん……!」
力を振り絞り言葉を声にした。力を振り絞る際に噛んだ唇から流れる血を服の裾で拭き、唇を緩ませ笑って見せる。一番の笑みを。
「……じゃあね」
最後にもう一度別れを告げ、彼女を助ける作戦を開始した。
これがいわゆる『奴隷』……
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