2章 8.実行
絶対!
レイルのおかげで時を戻すことができ、今ユークラリアの門に入る少し前だ。もう数分すれば着くほどの距離。ただ『怪物』の状況は全く分からない。『怪物』と思われる人物が都市を襲う理由も、その強さもだ。今どこにいてどこらへんにいるのかもわからない以上探すことから始めないといけない。
「重い空気のとこわりぃんだけど……リーダー、その危険な気配の奴はどこにいるとか分かんのか?」
「いや、それなんだよ……問題点。全く居場所が分からないから探すところから始めねぇと」
窓から見えるユークラリアの門を見つめ答える。暗い表情の俺の返答を聞いたアンカとガルは頭を悩ませ考え込む。ユークラリアの門をジーッと見つめていると何かが分かりそうな感じがするが試す余裕もなく魔法車は止まり、考える時間は終了した。
魔法車から降り、歩いてユークラリアに向かっている。ガルは歩いているうちに戦闘準備をしてもらい、アンカと俺は作戦を立てることにした。
「衝撃波はあらゆるものを壊そうとする。それに音を出さずに都市を壊滅させれる強さか……」
探すと言っても探してどうする。もし見つけたとしてもすぐ戦闘をしたら俺たちが悪の存在と都市にいる人たちに認識されてしまう。とはいえ何もせず見ていたら手遅れになる可能性が高い。誰か高い戦闘能力を持った人を探すほうを優先したほうがいいか?いや、そうなると『怪物』が……でも俺たちが……でも―――
グルグルと回り続ける思考に目が回り思考を緊急停止。へとへとでガクッと頭を下げていると一瞬でパンクした頭を治す治癒魔法のような声の美少女、アンカが話を切り出す。
「やっぱり戦力が必要だと思います。強くなるために来た私たちですからさすがに戦うと瞬殺される未来しか見えないですし」
「確かにな。実力不足と圧倒的経験不足。経験値が少ない状態でボスに挑むには仲間がいる。ゲームでは絶対条件と言っても過言じゃない」
「リーダー。言ってることがよく分かんねぇけどとりあえず仲間を増やさねぇとやばいんだろ?剣聖騎士とか言ってたけどそいつはどうなんだ?」
ガルの問いかけに苦悩の表情が顔に付いた。
「事情が説明しずらいんだけど、その剣聖騎士、幼女なんだよな」
「「よ、幼女?」」
新たな衝撃告白に2人とも声を張り上げ目が点になる。
「リ、リーダー……それはどういう……賢者からも聞いてねぇぞ?」
「―――」
「ロクさん、いつどこで会ったんですか!?まさか元々会った人とまた会うとか!?」
「―――えーっとな……」
怒りと不思議さが混じった表情で叫ぶ2人。レイルには困惑を生むから一応言うなと言われたがこの際しょうがないだろうと自分で納得し、念のため心の中で謝罪。そして俺は2人に事情を話した。
「ちょっとわけわかんねぇこと言うけど、俺、未来から来たってわけよ。いや……時を巻き戻して今いるってわけ。だから危険な人物がユークラリアにいることも知ってるし、剣聖騎士が幼女なのも知ってる。それに、都市が消え去ってたのも見た」
「―――」
瞼を強く下げ、手を強く握る。何を言われるのか、俺には予想できない。さっきと同じように困惑し、驚くか、何で早く言わなかったのかと怒るのか。
不安感のまま静寂の時間が続く。数秒経った時、息を呑む音が聞こえる。
「リーダー。何回もこのくだりじゃねぇか?俺もアンカも尊敬してんだぞ?時を戻すとか最強だ。けど最悪な光景も見てきてしんどかっただろ?それを見ても俺たちを助けようとしてんだ。俺たちがリーダーにどうこう言う権利ってやつがねぇ。心配すんなよ、リーダー」
「ガル……」
立ち止まったガルは俺の肩に手を置き、優しく微笑んだ。温まる空気にアンカの声が加わる。
「本当にロクさんは……こんな時になって1人で問題を抱えてませんか?時を巻き戻したロクさんだったと聞いて混乱すると思ってたんでしょうけどそんなに理解できない私たちじゃないですよ?それにどれだけロクさんが不安な気持ちになっているのかも理解できない人でもないです。だから、少しは頼ってください」
優しく微笑むアンカに光が差し込む。まるで女神のような輝きの笑みを見せたアンカを見てつられて微笑し、立ち向かう勇気を持った。
俺たちはユークラリアの門に到着し、門番に持ち物チェックをされる。順にチェックが終わった俺たちはほこりが1つもないユークラリアに足を踏み入れた。
「別々に行動したほうがいいかもな。俺は危険な気配の奴を探す。アンカとガルは剣聖騎士を探すことと都市に何が起こっているのか探ってくれ。くれぐれも無理はしないように」
広場で俺たちは作戦を計画し、2人が頷くと同時に作戦実行した。
今回の作戦は同時進行型。時を戻したりすることができるレイルがいるため危険な奴を、アンカは剣聖騎士でガルはこの都市の状況確認などを頼もうとしたが、アンカとガルの実力を合わしてもエンザエムに全く届かないほど。1人で行動しているといざ危険な奴に会ったとき太刀打ちできないとなるとせめて2人が一緒に行動するほうが良いと考えたのだ。アンカと離れるのは心苦しいが。
「―――はぁはぁ……どこにいるんだよ……」
体力のない体を全力で動かしながら都市内を走りまわる。足を動かす中、汚れのない家々が視界にいくつも入り、また出ていく。この不思議な光景を見ながらずっと、危険を見つけるまで走り続けた。
「私も手伝ってあげようっ!」
「はぁ…はぁ……あ、ありがと……よ……」
頭の中で響く鈴の声音に礼をして肺にある酸素を絞り出し走り続ける。脳内で暴れまわる不安を唇を噛み紛らわしながら必死に走って行った。と、その時。
―――視界に包帯を巻かれた小柄な人が上から視界に飛び込んできた。
包帯グルグル巻き~。
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