表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/197

第十四話 その5

 総本山三階、展望室。


「決まり手が金的とは……ボルゾーイ流はいったいどういう教育をしているのでござるか?」

「超実戦派であります故、後遺症が残る攻め手以外は特に禁じておりませぬ。おりませぬが…………さすがにあれはあんまりであった事も事実ですな」


 あの瞬間、二人してキュッと内股になったのは言うまでも無い。


「それで、次の相手はどんな人物なのでござるか?」

「最後の刺客は碧玉の段位を持つ、先の二人とは比べ物にならない実力者です」

「全くピンと来ない段位の名称でござるが、その口振りからすると相当な強敵のようでござるな」


 マジックミラー越しに眼下を見ると、既にエリザが開始線についていた。


「ではさっそく出てもらうとしましょう……最後を飾るに相応しい戦士に!」

「勇ましい事言っても目的は女子と触れ合う事なんだよなぁ……」


 禿頭の男がボタンを押し、扉が開く。


 ――どさっ。


「……ファッ!?」

「な、なんと……!」


 扉から姿を現したのは、もちろんエリザの最後の対戦相手だ。


 ただしその登場のし方は、扉が開くと同時に倒れ込むというものだった。


 道着の乱れからその男には争った形跡が見られ、端的に言うと最後の対戦相手は、既に何者かによって気絶させられていた。


「フム……エリザ氏と対戦したい何者かに襲われたのでござろうか?」

「それはあり得ぬ話です。あのくじ引きは違える事の許されぬ厳正なるもの。師範代クラスでさえもハズレくじを受け入れたというのに、その結果に異を唱えるような真似をする者はボルゾーイ流男子空手には一人もおりませんぞ」

「え、このイベント師範代って呼ばれるような人も参加してんの?」

「いったい誰がこんな真似を…………はっ!? まさかボルゾーイ流新興空手の連中が……!」

「またややこしい団体を……」


 誰が男を襲ったのか――その謎の答えは、エリザのすぐ目の前にあった。



「あ、あなたは……!」


 倒れた男が現れた扉の先から、男を襲った者が姿を現した。


「久し振りね、エリザ」


 エリザの前に現れたのは、エリザよりも一回り半ほど大きい体格の、筋骨隆々の女――


「……サリーナ」


 それは、自称エリザのライバルであり、先日のボルゾーイ流女子空手の合宿で一戦を交えた相手――サリーナだった。


「どうしてあなたがここに……いや、それよりどうしてこの男を?」

「出場権を渡せと言ったのに聞かなかったからよ。だったら実力で排除するしかないわよね?」


 男女間における運動能力の差は、二戦目の時に述べた通りだ。男と女が同程度に鍛えた者同士であるなら、基本的に勝つのは男なのである。


 だがサリーナには、伝説の勇者のパーティーである戦士マッシュの末裔という『血統の力』があった。その力の前には、生物の理など何の意味も為さないのであった。


「なんて事を……いや、冷静に考えれば別にどうでもいいけど。じゃあ最初の問いに戻るけど、どうしてあなたがここに?」

「知れた事……あなたと決着をつけるためよ!」

「……決着?」

「こないだの合宿所では、忍術に鞍替えしたが故に敗北を喫した。だが今回の私は、純度100%の空手家。決着をつけるに相応しい形で、改めて勝負を挑むというわけよ!」

「え……空手の試合なら前に何回もやったわよね? もう勝負ついてるわよね? 私が全――」

「ここに最終戦を行うと、私サリーナが宣言するのよ!」


 聞きたくないエリザのセリフをかき消すように、声を張り上げるサリーナだった。


「…………。ねぇ、これはアリなの? 対戦相手不在で不戦勝じゃない?」


 エリザはマジックミラー越しに、主催者に問い掛ける。


『ふむ……確かにこれでは、試合の目的は果たされない。よってこの試合は、エリザ門下生の不戦勝が妥当といったところですな』

「なるほど……要するに、次はあんたを倒せば気兼ねなくエリザと試合が出来るって事ね」

『と、思ったのですが、特例として両名の試合を認める事とします』

「おい」


 屈しない姿勢を一切見せる事無く、男はサリーナの要求を飲んだ。


『ではさっそく、試合開始!』


 エリザの抗議の顔を見ないふりをして、男は試合開始の合図を下した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ