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第十話 その4

 話は再びミィナの件に。


「フム……ではDOGEZAをして懇願してみてはどうだろうか?」

「……分かってはいた事だけど案の定使い物にならないわね」

「好かれてた件は勘違いだったんだからまぁ当たり前だよね」

「やっぱり私が頑張るしかないか。そうねぇ……一度別れた二人がくっつくには、やっぱり心揺さぶられるイベントが必要だと思うの。だから試しにものすごく落ちぶれてみるってのはどう? 住む所を失って、薄汚れた服を着ながら路地裏で蹲る感じで。それをマー君に見つけてもらえば『な、なんでキミがこんな事に……!?』『私、マー君がいないとちゃんと生きていけないの……』って展開になって、数日後には復縁という名のエンディングを迎えられる事間違い無しよ。どう?」

「エリちも大概なんだよなぁ……」


 ミィナの中では、恋愛に関して言えばカールとエリザは同レベルの生き物だった。


「フム……では逆に他の男を作ってみてはどうだろうか?」

「あら、それいいわね。人のものになって初めて気付く、彼女への独占欲ってやつ。新しい男はなるべくならクズめな感じの方がいいわね。あくまで本命はマー君だから、最終的に振っても心が痛まないような感じの。……ねぇミィナ、誰か騙したり脅したりしてくれそうな知り合いはいない?」

「そんな知り合い普通速攻で縁切るよね」

「拙者が想定していたのはNTR的な展開なのでござるが…………そんな主演女優が朝の情報番組の特集で学生時代は食いしん坊でご飯をいっぱい食べていましたみたいなクソつまらないエピソードトークをするようなポスターが俳優ブロッコリーのしょーもない邦画みたいな展開は興味の埒外でござる」

「長い。あとNTRって何よ。まぁ語感でそれが唾棄すべきものだって事はなんとなく察せられるけど」

「そういう反応を示す者ほど触れたらハマるものなのでござる。エリザ氏、素質あるでござるよ」

「その理論だと全人類が何にだって素質がある事になるじゃない。破綻よ破綻、破綻してるわその理屈」


 などと、あーでもないこーでもないと、時折脱線を挟みつつ語り合う二人。


(…………ダメそう)

 そんな二人を眺めつつ、ミィナはもはや諦めの境地に至っているのであった。


「…………」

 そして更にそんな三人を、柊レナはサンドイッチをパクつきながら眺めていた。


「ム……レナ氏が何か言いたそうにこちらを見ている」

「いや別に。結局ここはどこなのって話に戻したくはあるけど」


 レナにとってその辺はまだ未解決だった。まだレナは、ここを日光江戸村の西洋版か何かみたいに思っていた。


「ここは異世界でござる」

「だからそれが分かんないって…………あぁ、いいや。とりあえず駅の場所だけ教えてくれれば」

「…………」


 こっちはこっちで骨が折れそうだった。


「ってかこのお姉さん、二人よりも恋愛係数が高そうなんだけど、どうなの?」

「カールと一緒くたにされてるのがちょっと気になるけど、確かにそんな風に見えるわね……」


 二人の視線がレナに向く。


 そもそも服装からして二人とは違う。レナの服装は、エリザが今現在着ている町娘風の簡素な服は言うに及ばず、エリザがお嬢様だった頃に着ていたお姫様になるための服とも違う、あれは恋人に会うための服だった。


「……まぁ、恋愛経験があるか無いかで言えばある方だけど」

「マジで? ねぇ、何かいい方法ない? もうお姉さんだけが頼りなんだよ」


 懇願するようにレナを見つめるミィナ。


「いつの間にか戦力外通告をされている件」

「あんたが余計な事ばっか言うからでしょ。なんで私まで……」

「…………」


 エリザに突っ込む気力はもう誰にも無かった。


「あー……えっと、なに。別れた彼氏ともう一回付き合いたいって話? ……その、マーなんとか君ってのと?」

「うん、そうそう。マー君ことマデューカス君とやり直したいの」

「あ、そ。じゃあまず訊くけど、そのマー……えっと、マー……マサクゥル君とはどこまで行ったの?」

「どこまで? 行った事あるのはこういうお店とか遊園地とかだけど……え、距離的な?」

「いやそうじゃなくて。キスとかその先とかそういう話」

「き……は!? キス……え、ちょ、ちょっとなに言ってるの!?」


 ミィナが急に顔を赤くして慌てふためき始めた。


「え、なにこの反応……え、その見た目で?」


 ミィナの外見は、レナの元の世界で言うところのギャル相当である。彼氏持ちのギャルなどなんでもかんでも『ウェ~イ』で済ますのに(偏見)、ミィナのリアクションはまるで恋に恋する乙女であるかのようにそれらしくなかった。


「あたしの見た目の何がどうなのかはよく分からないけど、結婚もまだなのにそんな事するわけないでしょ」

「えー……なにそれ、なんか別世界の人間みたい」


 それに関してはその通りだった。


「あー、えっと……じゃあ、手を繋ぐくらいまでって事でいい?」

「うん、そんな感じ。ってか普通そうでしょ」

「それが普通かどうかは置いとくとして…………なんだ、じゃあ簡単じゃん」

「……えっ?」

「ファッ?」

「なん……ですって……」


 あっけらかんと言うレナに、目を丸くする三人。


「私の言う通りにすれば楽勝で元鞘だわ。いい、まずは――」


 レナは三人に策を告げた。

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