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第四話 その7

 三人は遺跡を出た後、その足で町長の屋敷を訪れた。


 玄関で応対に出た使用人に要件を告げると、三人は客間に通された。この世界ではあまり見ない、畳張りの座敷だった。


「大層立派な家でござるが、エリザ氏の家と比べるとこじんまりとしているでござるな」

「ここの人は町長だけど、私のお父様は町長を兼任している領主だもの。格式で言ったらうちの方が役職一個分上なのよ」


 エリザの父親は、エルスト領の領主でありエルストの町の町長だった。領と町で名前が同じなのは若干ややこしいが、カールの世界で言うところの大阪府大阪市みたいなものだ。ただ、知事と市長が同一人物なだけなのだ。


 少しした後、中年の男が客間にやってきた。


「これはこれは、わざわざご足労いただきまして……」


 そう言いながらテーブルの対面に座ったのは、頭部から普段の気苦労が窺える、痩身の男。


 この男が今回のクエストの依頼主であり、この町の町長だった。


「それで、えー…………盗まれた秘宝を取り戻してくれたとの事ですが」


 窺うような表情で、町長が尋ねる。


「それはこれの事かしら?」


 ミューズはポケットから、例のお宝を取り出した。


「……! ほ、本当に…………秘宝を取り戻していただけたのですか」

「依頼の品はこれで合っているの?」

「は、はい……それはもう! ありがとうございます……!」


 頬に流れる汗を拭いつつ、町長は頭を下げた。


「これで例年通り、祭りで秘宝を展示する事が出来ます」


 これにて一件落着。祭りは滞りなく行われ、町長が領主に詰められる事は無くなった。


 町長が再度、深々と頭を下げる。


「それは良かったわね、ところで――」


 その町長の頭頂部に向かって、ミューズは言った。


「本当に展示するの? こんなただのガラス玉を」

「…………えっ?」


 ミューズの言葉に、町長はお辞儀をした姿勢のまま、凍りついた顔を正面に向けた。


「……ん? え、なにどういう事?」

「これは秘宝なんかじゃなく、ただの赤いだけのガラス玉よ」

「……!?」


 町長の顔がさっと青ざめる。同時に、なけなしの毛髪が数本はらりと落ちた。


「いや、それはおかしいでござるよミューズ氏。それがガラス玉であるならば、なにゆえにゴーレムという障害が立ちはだかったのかという事になってしまうでござる」


 カールがミューズの言葉に異を唱える。


 ボスモンスターが守る宝箱は無条件で良い物が入っているというのは、何もカールの妄想、希望的観測だけの話ではない。異世界という現実世界とは異なる世界では、そうでなければならないのだ。苦労して得られたものに何の価値も無く、ただの時間と労力の無駄だったというのは、現実世界だけでお腹いっぱいなのである。


 故に、秘宝が無価値なガラス玉であるならば、ゴーレムが守っていたはずがないのである。


「あのゴーレムが守っていたのは、『秘宝』ではなく『秘宝がガラス玉だという事実』だったのよ。そう考えれば、ゴーレムがガラス玉を守るというのも不自然ではないわ」

「……つまり犯人は、秘宝を盗んだ後で、それがガラス玉だと気付いてその事実を隠そうとした……という事でござるか?」


 カールが首を捻る。犯人がそうする事に、いまいちメリットが見出せなかった。


「あるいは最初からガラス玉だと知っていた、という事もあるわね」

「……そうだと仮定すると今度は、犯人は秘宝がガラス玉だと知りつつ盗み出し、更にその事実を隠すために壁を建ててゴーレムに守らせた、という事になるでござる。……何から何まで理解不能でござるな。犯人が得をする部分が一切見られないでござる」


 もはやそうしないと死ぬ呪いが付与されているでもなければ、実に意味不明な行動だった。


「なら逆に考えましょう。この事件は、秘宝がガラス玉だと知られると困る人物が、それを隠すために秘宝を洞窟に隠してゴーレムに守らせた、というものだった」

「……フム。つまり…………どういう事だってばよ?」


 カールの頭脳が限界を迎えた。


「盗んだ後で隠す事にしたのではなく、隠すために盗み出したのよ。……さて、秘宝を盗み出して遺跡に隠す……それを最も容易く実行出来る人物とは、いったい誰の事かしらね?」


 ミューズが悪戯っぽく二人に問い掛ける。


「うーん…………幽霊とか?」

「……フム。高レベルの魔術師なら透明化と鍵開けくらい朝飯前と推測するでござるが、もしやミューズ氏――」

「それは町長さん、あなたよ!」


 ミューズは声高に、ビシっと町長を指さした。


「な……!?」


 町長が表情を強張らせる。


「然り。町長なら全てをわけもなくこなせるのでござる」

「カールくんさっき私を疑いかけなかった?」

「町長という立場なら、全てが容易に可能なのでござる!」


 カールが豪語した。


 町長ならば、役所の倉を出入りするのは容易い事だ。そこから秘宝を持ち出す事も、この町の誰よりも簡単に出来るだろう。


「そして管理責任者であるが故に、秘宝がただのガラス玉だという事ももちろん把握していたのでござろう。理由は分からないでござるが、それを隠すために町長は――」

「ま、待ちたまえ! そもそもこの秘宝がガラス玉だという事自体が間違っているのだ! 確かにほんのちょっとガラス玉に見えない事も無いが、これは立派な秘宝なのだ!」


 町長が反論する。


「…………。との事でござる、ミューズ氏」


 秘宝の事など何も知らないカールは、すぐさまミューズにバトンタッチした。


「残念だけどそれは通らないわ、町長さん。だって私、本物を見た事があるもの。ドラゴンが極度の緊張状態に陥った時にのみ体表に現れる液体が結晶化したもの……それが秘宝、ドラゴンズスウェットよね?」

「そ、それは……」


 一定以上の知識が無ければ口に出来ないその情報は、本物を見た事があるというミューズの言葉が真実である事の証だった。


「極度に緊張している時に体に浮き出る液体…………それ脇汗じゃない?」

「竜の脇汗……もとい、ドラゴンズスウェットが何らかの要因でガラス玉になってしまった事を隠すために、あなたは遺跡にそれを隠した。宝箱に入れてゴーレムに守らせて、更にその道を壁で塞いで。細工した地図まで用意している辺り、かなり周到な計画性が窺えるわね」

「なっ……何故私がそんな事をしなくてはならないんだ!?」

「確か、今年のお祭りには領主さんがやってくるのよね? この町に秘宝を授けた領主さんが」

「――!?」


 町長の顔がさっと青ざめた。


「貰った秘宝をガラス玉とすり替えたなんて、下手をすれば横領として処罰される事になるものね。ならば盗まれた事にすれば、もちろん盗まれた事への叱責はあるでしょうけど、横領に比べたら遥かに軽い罰で済むわね」

「……なるほど。要するに万引きを隠すために店に火を放った的なやつでござるな」

「違うけどそんな感じよ」


 カールの例だと罪の重さがあべこべだが、だいたいそんな感じだった。


「ここまでは合ってるかしら、町長さん?」


「ム、ぐぐ……」


 町長が言葉に詰まる。それは、ミューズの主張に反論の余地が無い事を意味していた。


「フムフム、そういう事でござったか。どのようにして誰にも気付かれずに通路を塞ぐ壁を建築したのかは分からないでござるが、犯人は町長だったのでござるな」


 もう決着はついたとばかりに、ぺらぺらと喋り出すカール。


「……! そ、そうだ! 私に壁を作る事は出来ない! 見たまえこの細腕を! ブロックを5、6個積み上げただけですぐに息が上がるぞ!」


 そんなカールの言葉に乗っかって、町長はハウダニット(どのようにして行ったか)を盾に反論に転じた。


「……ム? 拙者また何かやっちゃいました?」

「カールあんた……いやまぁ、気になってた事ではあるけれど」


 あの壁は、高さ二階建て家屋ほどの洞窟の通路を隙間なく塞いでいた。個人でそれを建てようなど、細腕を誇示するまでもなく土台無理な話だった。


「これがガラス玉であろうと、私に動機があろうと、そもそも実行出来ないのであればただの推測に過ぎん! 分かったらさっさと帰りたまえ!」


 一転して、町長が居丈高になった(失われた毛髪はもちろん戻らなかったが)。


「フム…………これはどうすればいいのでござるか?」

「町長さんに実行可能だという事を示せば観念してくれるんじゃない?」

「なるほど。然らば――」


 カールは町長をつぶさに観察した。


 年齢は50代半ばくらい。体格は細身の小柄で、筋力はほぼ最低ランク。頭部が焼け野原状態なのは考慮に値しないとして、この体格であれほどの壁を作るのは到底不可能だろう。町長故に財力は並以上にあると推測出来るが、秘密を守るための作業に人を雇っては本末転倒だ。と言うかそもそも材料や工具を持って遺跡に入ろうとしたら、まず詰所の兵士に不審がられる事は間違いない。


「……フム。精査した結果、町長は無実という事が判明したでござる」


 よって、カールの頭脳ではそう結論付けざるを得なかった。


「あぁ……分かってくれて何よりだよ」

「ちょっとカール、町長が落ち着きを取り戻しちゃったじゃない」

「そんな事言われても……」


 毎回言っているような気もするが、カールは決して軍師タイプではない。割とどうしようもない人物設定であっても何故か賢さだけは平均値を上回っている他所の主人公と違い、カールはキモオタなりのINTしか有していないのである。


「そもそも初対面の相手が何が出来るかなんて分かるわけがないのでござる」


 分かる事と言えば頭部が西暦199X年である事だけだが、そんな経年劣化で何が分かるわけでもなかった。


「というわけでミューズ氏、お頼み申す」

「ハハ、何を言われようとも私は一切を認める気は――」

「パーソナルカードを見せてもらえる?」

「…………は?」

「パーソナルカード。あなたに何が出来るか、そこには事細かに書いてあるでしょう。無論、あなたが細腕なりの事しか出来ないとカードに書いてあるならば、こちらとしては手詰まりなのだけど」

「……そ、それは」

「まぁ、そうであると主張しているのだから、カードには確かにそうと書いてあるのでしょう。ならば見せられない理由は無いと思うのだけど、どうかしら?」

「――――」


 この異世界にはパーソナルカードという、所持者のステータス――つまり所持者に何が出来るかが正確に記載されているカードが存在する。それはこの世界の誰もが例外無く所有していて、誰もが肌身離さず所持しているものだ。例え着の身着のまま無一文でワープする事になっても、それだけはちゃんと手元にあるほどだ。


 この世界でハウダニットを隠し通す事は、事実上不可能なのである。


「その様子だとこちらの予想通りの事が書いてあるようね。おそらくジョブは魔術師、スキルは四大元素・土属性魔法のCランクってところかしら?」

「なっ……!?」

「通路を塞いでいた壁の破片を調べたところ、微弱な魔力を感知したわ。もっとも、壁の材料や工具を秘密裏に遺跡に持ち込むのは到底不可能だから、消去法であれは魔法によるものでしかないのだけど。ちなみにこれならオリジン・マップに記入されなかった事の説明もつくわね。あの壁は『一時的な』『魔法によるもの』だったから、地図には記入されなかったのよ」


 あの壁は、本当にオリジン・マップにとって『書くほどの事ではない』ものだったのだ。


「フム……つまりミューズ氏の氷の壁と同じというわけでござるか」

「そうね。もちろん私にかかれば、あのくらいの壁なら五分とかからずに作れるけど。帳簿を見る限りかなり期間の長い計画だったようね、町長さん?」


 詰め所で覗き見た帳簿には、月に一回ほどの割合で町長の名前があった。遺跡に入った日時が帳簿の通りだとすると、秘宝を遺跡に隠す計画はかなり前から行われていた事になる。


「その顔だと、わざわざパーソナルカードを見せてもらう必要も無さそうね。まさか帳簿に犯人の名前があったなんて、あの時は思いもしなかったわ」

「ム、ぐぐ……」

「動機があり、実行する手段も有している……これで犯行は自分ではないというのは、到底通らぬ話でござる。もう観念しては如何かな?」


 まるで犯人を追いつめた探偵のように、カールは町長を諭した。


「え、なんであんたがそんな態度取れるの……?」

「そろそろ諦めて本当の事を話してもらえるかしら?」

「ぐ……ま、まだ、確固たる証拠は……」


 町長の荒野から、稲が数本枯れ落ちる(比喩表現)。


「あれが町長の往生際メーターだとしたら、最終的にはとても悲しい事になるのではないでござろうか……?」

「……あまり褒められた手段ではないけど、一応こちらには最終手段があると告げておくわ」

「さ、最終手段だと……? それはいったい……」

「今の話を全部ここの領主さんに話す」

「――――」


 町長の顔が、この世の終わりみたいな表情で固まった。


「……フム。これは別に裁判ではござらぬ故、疑わしきを罰するかどうかは当事者が決める事……というわけでござるな」


 要するに、今の話を聞いて領主はどう思うか、という事だ。確かに確たる証拠は無いが、果たしてそれで領主が納得するか否か――そんなもの、考えるまでも無かった。


 そしてそれは、完全なるチェックメイトを意味していた。




 観念した町長は、事の全容を語り始めた。


「あの日、秘宝を落として割ってしまった事からこの計画は始まったのです……」

「……秘宝を落として?」

「そうです。それを隠すために、秘宝に似せたガラス玉を用意したのです……」


 事の始まりは数ヶ月前。町長がうっかり秘宝を壊してしまった事が発端だった。



 秘宝を壊してしまった町長は、壊れた事を隠すために偽のガラス玉を用意して倉庫に保管した。わざわざ偽物を用意したのは、隠蔽の準備が済むまでに紛失が発覚する事を防ぐためだ。実物をよく知っている領主ならともかく、役所の職員くらいならガラス玉でも誤魔化せる。幸いな事に、今日まで町長以外で偽の秘宝に用があった者は一人もいなかったが。


 そうした動機は、秘宝を壊した事による領主からの叱責を回避するためだ。何せあの秘宝は、出会う事すら困難なドラゴン由来のもの。壊したとあれば厳しい叱責は免れず、もし弁償などという事になったら、どれほどのお金が必要になるか分かったものではない。最悪の場合、借金を抱えたまま職を失う……という事も充分考えられるのだ。


「なんて子供じみた理由……そんな事で町を騒がせるなんて、統治する者として恥ずべき行いだと知りなさい」


 厳しい態度で、エリザは町長に言い放った。今でこそ廃屋の令嬢だが、エリザはれっきとした領主の一人娘だ。統治する側の人間として、町長の行いは決して見過ごせるものではなかった。


「…………」

「……ん? なによカールその目は」

「イヤ……ふと思い出しただけでござる。狂言誘拐を実際に行われたものと装い、事態の収拾を図ろうとした者の事を」

「……あまり町長を責めては可哀相ね。猛省しているみたいだし、これくらいで許してあげましょう」


 一転して、エリザは寛容さを見せ始めた。その目は優しく、そして泳いでいた。


 隠蔽の手段は、先ほどミューズが推理した通りだ。不審に思われないよう月に一度のペースで遺跡に潜って魔法で壁を作成し、壁の完成に合わせて倉庫から偽の秘宝を持ち出して通路の奥に隠した。そして祭りの三日前に、あたかもその前日に盗まれたかのようにして緊急クエストを発令した。


 三日前にした理由は、その日からなら祭りの当日までにクエストは達成されないだろうと思ったからだ。もしその日以前に他の人から紛失が発覚した場合は、その日に緊急クエストを発令するつもりだった。そうした場合クエスト達成のリスクは高まるが、それはやむを得ない事だった。


「盗まれたという事にするからにはクエストを出さざるを得なかったのですが…………まさか受ける人が現れるとは」

「常人ならあんな遺跡を隅々まで捜索するクエストなんて受けたがらないでしょうね。あなたの最大の誤算は、それを容易く行える天才美少女魔術師がこの町にやってきてしまった事よ」


 天才美少女魔術師(26)が間抜けなミスにより無一文でこの町にワープしてきてしまった事とクエストの報酬に前金を付けてしまった事が、町長の最大の誤算であり失点だった。


「万一壁を突破された時のためにゴーレムに脅しをかけるよう術式を組んだのですが、まさかそれすらも突破されるとは……」

「……ん? 脅し?」


 カールの脳裏にその時の光景が浮かぶ。ついさっきの出来事なので、とても鮮明で臨場感のある映像だった。その映像の中のゴーレムの所作は、どう見てもお宝の防衛装置として十全の機能を発揮しているように思えてならなかった。


「はい。攻撃を寸止めして威嚇するよう術式を組み上げました。さすがにあれで攻撃したらいろいろと問題ですので……」

「あぁ、そうだったのでござるか。拙者てっきり」

「あれ術式ミスって普通に侵入者を攻撃するようになってたわよ」

「――――」

「なんと……どうやら市政に忙殺されて、腕が錆びついてしまっていたようですな」

「その感覚は理解不能ね。長らく魔法を使わないと腕が落ちるとはどういった原理なのかしら」

「さすがはその若さで最高レベルに到達した魔術師といったところですな、ハッハッハ」


 町長が朗らかに笑う。


「笑い事じゃないんだよなぁ……」


 ミューズがいなかったら普通に死んでいたであろう事実に、カールは再び戦慄した。


「でも自爆は本当にハッタリだったから安心なさい。ゴーレムには爆薬も魔力を暴走させる術式も組み込まれてなかった。まぁ、無いものはミスれないというだけだけど」

「全く安心出来ないんだよなぁ……」


 まずそれ以前の話だし、ハッタリじゃなかったら更にヤバかったというだけの話だった。


 ともあれ、事件の全容は明らかになった。


 この盗難事件は、全て町長の自作自演だったのだ。


「どっ、どうか……どうかこの事は内密に! 口止め料ならいくらでも支払います!」


 町長はテーブルから体を横にずらし、地面を畳につけて頭を下げるDOGEZAの姿勢で懇願した。


「ム? 今いくらでも支払うって言ったでござるよね?」

「えっ、それは…………私の懐事情の考慮を何卒お願いしたく。お小遣い制なので」

「口止め料ってポケットマネーで収まる相場だったかしら……?」


 だいたいの口止め料は、内容にもよるがそこそこ厚い封筒(この世界ならそこそこ重い小袋)が相場である。ちなみに一度貰えた事に味を占めて再度要求すると、高確率でキルされるので気を付けよう。


「別に脅すつもりは無いわ。事件を暴いたのは、単に好奇心から真実が知りたかっただけよ」

「えっ……それじゃあ」

「あなたが危惧しているような事をするつもりは無いわ。……どうせ手遅れだしね」

「……へっ?」


 町長が呆けたような声を上げると同時に、三人の後ろの襖が開いた。


「話は全て聞かせてもらった」


 襖の先に立っていたのは、スーツを着た体格の良い男だった。白髪の混じった髪や顔に刻まれた皺は、町長よりも年齢が上である事を表していたが、その雰囲気からは老いや衰えの一切が感じられなかった。


「あっ、あばっ……!」


 その男の姿を確認した瞬間、町長の顔が絶望に染まった。


「ああっ、町長の頭部がいよいよDr.ワ〇リーからシ〇マ隊長に……!」


 そして町長の頭がえらい事になっていた。


「あれっ、あの人確か……」


 その男の顔は、エリザの記憶の中にあった。


「えぇ……トゥレスの領主ね」


 トゥレス領の領主――町長が最も恐れていた人物が、この場に現れたのであった。

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