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第十四話 その7

「ただの空手の試合と思いきや、まさか超人バトルを見せられるとは……ここが異世界だと再認識させられる思いでござる」

「異世界?」

「イヤ、こっちの話でござる」


 体の作り自体は元の世界と変わらないのに、技の精度は元の世界のそれを大きく上回っている。こんな試合、カールは大晦日の格闘技番組でも見た事が無かった。


 だがそれには、ちゃんとした理由があった。


 この世界では戦うという事が社会の一部に組み込まれているので、それの研究、研鑽が元の世界の比ではないほど進んでいる。元の世界でも戦う事が社会に組み込まれていた時代、例えば戦国時代のような時代があったが、それはあくまでも普通の人間を想定したものだ。この世界には魔法を始めとする超常現象や、魔物を始めとする超生物的存在があるので、要求される技術もそれに倣って先鋭化する。


 大雑把に言えば、元の世界では人を斬る目的程度に剣を振ればいいが、この世界では人を超えた存在を斬るために剣を振る必要があるのだ。


「時にエリザ氏は奥義を使えないのでござるか?」


 試合を見る限り、エリザが奥義を使った様子は無い。思い返してみても、エリザがクエストで奥義を使ったところも見た事が無かった。


「私はそこまでエリザ門下生に詳しいわけではありませんが……あの細腕では無理でしょうな」


 奥義というものは、往々にして体に大きな負担が掛かるものだ。エリザの華奢な体では、例えば音無突おとなしづきを放とうものなら、相手の体よりもまず自分の腕が折れるのが先だろう。


 筋力の無いエリザでは、ボルゾーイの奥義に体が耐えられないのである。


「フム……どうやらエリザ氏は、異世界の中でも比較的常識的な体を持っているようでござるな」


 試合会場に目を落とす。こちらの声がスピーカー越しに下に聞こえるように、あちらの声もまた、マイク(※一戦目の相手ではなく、機材としてのマイク)が拾ってこちらのスピーカーから流れていた。


「確かに山を登った上に三戦目予定だった有段者の男と試合をした後では、体力が続かないのは無理も無い話でござるな」


 筋力で勝てないから、持久戦に持ち込む。非力なエリザにとって、それは非常に理に適った戦術だった。


「まぁ、問題は果たしてエリザ氏の体力がどこまで持つかでござるが……」


 と、そこでふと気付く。


「…………。そういえばエリザ氏も山を登った上に、二戦こなして試合をしているのでござるよね……」


 体力に関する条件は、実はエリザはサリーナとほとんど変わらなかった。


 それなのに、エリザは汗一つかいていない。呼吸の乱れも全く見られず、少しも体力が減っているようには見えなかった。


(そういえばエリザ氏がバテているところを見た事が無いでござる……)


 思い返せば、エリザが精神的な疲れを見せた事は何度かあったが、体力が尽きて息を切らせている姿は一度も見た事が無かった。


「…………」


 エリザもまた、規格外の身体能力の持ち主なのであった。

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