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プロローグ
薄暗い洞窟の中を、2つの人影が走っていた。
「いやあぁぁぁぁぁっ!」
1つは必死の形相で、
「フッ、フッ、フヒッ……ゴッフゴブフッ!」
もう1つは、今にも死んでしまいそうなくらい疲弊した表情を浮かべながら、全速力で駆けていた。
二人の後ろからは、地鳴りのような音が迫っていた。
「し、死ぬっ……死んじゃううっ!」
その音の主は、巨大な岩石だった。通路を隙間なく埋め尽くすほどの岩石が、二人を追いかけるようにして転がっていた。
「なっ、なんでこんな目にっ!」
「そっ、それはでござるな……、拙者が妙な出っ張りを踏んづけたからと推測するでござるよ……フヒィ!」
「やっぱりあんたのせいかっ!」
今すぐにしばき倒したい衝動に駆られたが、そんな事をする余力も時間も無い。出口まで分かれ道の一切無い一本道。時間を無駄にした分だけ、ぺしゃんこの未来に一歩近づく事になるのだ。
出口の光は、まだ遥か先だった。
「こんな生活、もうイヤーーーっ!」
そんな少女の叫びは、すぐさま地鳴りにかき消された。