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サムライロード  作者: ITTO
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はじまりの朝

慣れない喪服に袖を通し見上げた空はいつもより低く思えた。

父の葬儀が粛々と進んでいく。参列者は後を絶たない、悲しむ暇もなく空の棺を前に皆泣いている。

きっと父は立派な王だったのだろう。

300年続くこのミツルギ国は小さいながら慎ましく平和だった。

5代目の父は事故で命を落としたとされているが実のところは分からない。

遺体が無いからだ。ただ僕も含めて皆が父は死んだと悟った。

この世界では王が死ぬと一筋の光が降り注ぐ。

まるで天に帰る様に光は空に帰っていくのだ。

国境付近の森の中腹でその光を皆が見たからだろう。


葬儀が終ると墓前に手を合わせ目を閉じる。

子供の頃眠りにつく前に父がよく話してくれた昔話を思い出していた。

この地に初代さまが建国する時の事。

この世界は騒乱の時代でその争いの本になった神器があり、それは力の象徴であり、王の証で人々は神の力を求め争いに身を投じていき。その姿を見ていた一人の神が神器をまとめて取り上げた。

そして、神は神器の力を使い人々を武器に変えた。

しばらく平和な時が続いたが、また権力者たちは戦を始めた。

それに憤りを感じ、争いのない世界を夢見てこの国を建国したのが初代だという。


(父上・・・・見守っていてください。)


目を開けると墓の上に剣士が立っていた。


『貴様が次の王か?幼いな。まぁいい。古の契約により貴様が我等の王だ。』


「貴様!!そこから降りろ!!」

なんだこの男は・・・風体から侍のように見えるがコスプレか?

『ははは!!威勢が良いな!!これは餞別だ受け取れ。』

一本の刀を投げれ受け取ると同時に胴を斬られた。

血が噴き出し腸が出ている・・・。


「な・・・に・・・を・・・」


『生きていればわかる。』


(いや・・・死ぬだろ普通に・・・。)





目を覚ますと見慣れない部屋に居た。

「ここは・・・。俺・・・生きている?」

腹を見ると薄っすら刀傷が見える。

「夢じゃないか・・・。」

起き上がろうとした時、手に硬いものが当たった。そこには一振りの刀があった。

これはあの時の刀か?それよりどうして?恐る恐る刀身を鞘から抜くと透き通る位綺麗な黒い刀だった。

「綺麗だ・・・。」思わず声に出てしまった。

刀を鞘に戻し部屋を見渡すと牢屋ではなかった。牢屋に武器を持たせて入れるわけないか。


暫くすると扉が開いた。

銀髪の女性が花を持って入ってきた。


「良かった。目覚められたのですね。安心して下さい。ここはナトリの里です。若様は覚えていないかもしれませんが、お父様とよくここに来ていたのですよ?」


「そうですか・・・助けて頂いてありがとうございます。」

「お礼なんて良いんですよ。私は若様のモノですから。」

彼女は微笑みながらそう言うと花瓶に花を移し窓を開けた。


風が部屋に吹き込む。外を見ると青空が広がっていた。心地いい風だ。しばらくすると風が色を帯びてきた。「あれ?なんだ?緑の何かが渦巻いて・・・あれは?」


不意にお腹がグウ~と鳴った。


「ふふ!聞きたい事が沢山あると思いますが・・・。先ずは御飯にしましょうか!!」

刀を置いて出ようとすると「大切に肌身離さず持っていてください」と真剣な顔で言われた。


部屋から出て階段を降りると木造のテーブルに奥のキッチンから漂ってくるいい匂い。

暫くするとテーブルいっぱいに料理が並べられた。

「そういえば名前を聞いていなかった。教えてくれませんか?僕は総司です。」

「名前はすいません・・・。」

まさか名前を聞いて断られるなんて思ってもみなかった。




沈黙が辛い・・・




「あっあの・・・どうぞお召し上がりください。」

どうやら気を使わせてしまった様だ。

「では、遠慮なく、いただきます!」

出された食事を一人で完食するとこれだけ食べても満たされない事に気が付いた。

「ごちそうさまでした。」

「お粗末様でした。大丈夫ですか?まだ足りないのでは?」


裏口が開く音がした。

姿は見えないが騒々しくしゃべりながら帰ってきたので彼女も笑いを堪えている。

「いや~今日は城下町の様子を見てきたのだが、あ奴ら好き勝手しおってからに!!して若様のご容態はどうじゃ?あれ?今日の食事が消えておる・・・おい!!おい!!誰か居らんか?!」

「まったく返事をせい!だから西洋かぶれは!!」

テーブルの近くまできて僕を見て見開いた目を瞬きもせずにこすりながら確認している。

「まさか!!・・・・お目覚めになられましたか!!爺は・・・爺は信じていました!!」

涙ながらに縋り付いてくる老人に見覚えが無い・・・。

「あの・・・・・・あなたは・・・」

「若!!いつも一緒に居た隕鉄でございます!!」

「隕鉄?そんな名前の家老は居なかったはず・・いんてつ・・・インテツ・・・そういえば隕鉄は懐刀の名が隕鉄だったけど申し訳ない記憶に無くて。」

微笑みながら号泣している。

「そうです!その懐刀の隕鉄ですじゃ!!」

ダメだ・・・話についていけない・・・。

困った顔を見て彼女は取り繕うように話を始めた。


「隕鉄さま。説明しないと。」

「そうじゃな。若様・・・実は若様は一度死んでいます。」


(確かに死んだと思ったけど生きてるし。)


鏡を出され見てみると見知らぬ男が写っていた。

瞳の色は銀色、髪は金、顔立ちは色白く、中性的な顔・・・「えっ!これが俺!!」


「はい・・・若様です。」

「若様が斬られてから200年の月日が経っております。」

「胴を真っ二つに斬られておりましたが神器を持っていたのが幸いでした。」

「時を操る神器のお陰でしょうか。ゆっくりと100年をかけ治療をしてきました。そして長い間神器と同調していたからでしょうか?そのお姿は神器の力によるものかと。」


神器・・・もしかしてこの刀?



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