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蓮国‐東方秩序の最高峰にして、世界最大の都市を擁する天主の帝国‐

 


 蓮国、または蓮は、極東世界の支配権をほしいままに掌握する、東の超大国である。彼らには国境と言う概念が存在しない。何故なら、彼らはあらゆるものを支配する天主だからである。


 信仰:神農天帝‐誠に麗しきは心身の健康、畑を耕し、夷を従え、天よりの命を以て蓮の葉に座する。これ即ち神農天帝の命、香具堅強の命なり。


 神農天帝は、薬学と農業、治水の神である。蓮の国の名の由来は神農天帝を讃える書の冒頭文にある、「天よりの命を以て蓮の葉に座する」という言葉から引用されたものである。蓮は支配者の座する葉として、皇帝の座には必ず敷かれる程の神聖性を持っている。

 さて、神農天帝の大偉業は蓮の民に農業を教え、健康のための処方、漢方を広めたことにある。この神農が天へと去る際に、縋りつく民を導く者に対して「家の戸に白羽の矢を立てる」事を約し、その場を離れた。これにより、白羽の矢を立てられたとされる者を「皇帝(こうてい、すめらぎ)」と呼び、儀式として家の戸に白羽の矢を立てられる事を天命と呼ぶ。この天命は絶対であり、指導者は天命を受けた事によって支配を開始し、場合によっては半ば手探りのまま統治する。神農天帝がどのような意思でこの指導者に白羽の矢を立てられるのか、何者に立てられるのかは一切が天命を受けたものにしかわからず、また、神農は統治に関与したがらないため、天命を受けたものの思想によって世俗社会は大きく変動する。


 文化的叡智

 ・漢方(和漢・洋漢)

 神農天帝は薬学の神でもある。それだけに、彼らは対症療法としての治療手段である処方について、非常に造詣が深い。神農天帝への経緯を示すために、蓮国政府は万能薬の製法を研究するための機関を実際に設けており、潤沢な資産の一部を投資している。

 そのために、彼ら薬効を正確に分類し、経験則に基づく「麻薬」や「治療薬」を分類する事に成功した。治療薬の薬効ごとに漢方を分類し、大きく肉体の不良を整える治療薬(洋漢、即ち病を「(外洋)に流す」漢方)と、肉体の苦痛を取り去る治療薬(和漢、即ち、病を「和らげる」漢方)に分類し、更にこれらを細分化し、最適な処方を行う薬学を発展させた。

 彼らにとっての健康とは、良いものを妄信する事ではなく、ある問題を解決するための手段として、悪い部分を改善する、或いは悪い部分を取り除けない場合に、それらを緩和する事によって齎されるのである。


 ・科挙制度

 多くの国にとって、政府のかじ取りを行う行政府は世襲制に依存する事が多い。しかし、蓮国は貴族にも容赦なく、「良き知」を請求する。その最たるものが、世界でも類を見ない最難関官僚就業試験「科挙」である。科挙は、史学、統計学、薬学、文学、神学、数学の6分野から、様々な問題を並べた試験である。その合格率は1%にも満たないが、合格後には一生を捧げるに相応しい対価を得られる。その証拠に、彼らの政を支える徴税は、通常腐敗した代行徴税が行われることが多いにもかかわらず、そのような腐敗の形跡が全く存在しない。それは、不自由なく生活できるだけの十分な給金を得られる蓮国ならではの特徴である。あらゆる者への開かれた「行政官僚試験」としての科挙は、その厳格さと実体としての利潤によって支えられているのである。



 国家の問題

 ・水銀中毒事件

 彼らは漢方を通して万能薬を作ろうと努力を続けてきたが、その一環で多くの失敗を経験した。その一つが、水銀中毒事件である。

 ある時、蓮国の薬学者の一人が、不老長寿の薬としての水銀の効果に関する研究報告を行ったために、各地で水銀を服用する者が現れた。商人もこの不確実な情報に目を付け、万能薬の完成を歌い、大いに利益を得た。しかし、その反動は次の代まで続く負の遺産となって彼らに襲い掛かった。

 貴族達の間で奇病が流行し、その奇病はその子にも受け継がれた。その共通点を辿っていった結果、水銀が原因ではないかと判明し、すぐさま薬学会では和漢・洋漢の両項目から水銀を削除し、水銀の薬効を完全に否定した。この問題は沈静化した後も名家の断絶という問題を生み出し、数多くの負の遺産を残した。


 ・裏口入官

 科挙制度はその難易度の高さから、発狂者が出るほどの過酷な試験であるが、この問題を避けようと目論むもの達は多い。それが、科挙のカンニングと、裏口入官と呼ばれる問題である。科挙制度の試験問題を得るために、試験官に賄賂を渡して不正行為をする者、肌着に回答をびっしりと書き込んで試験に臨む者などが時折現れる。不正の根絶のために、国家は懲罰を強化するなどの対策を講じているが、その成果が出たかは定かでない。

 もっとも、それでも合格率が1%にも満たないのであるが。


 ・印愚と阿片窟

 大薬学国家である蓮国では、漢方へ対する強い信頼から、薬学者は良く慕われ、時には地域の盟主として活躍する。しかし、その信用を利用した巨大な麻薬取引組織が存在する。その名を「印愚(イングル)」と呼び、彼らは政府に隠れて多くの和漢による「治療」を齎した。その異様な光景は、一度見れば二度と従う気を失うようなものである。大量の麻薬を処方し、その依存性を利用して徐々に高額の治療費を請求する。その治療費を工面するために、多くの者達が窃盗に手を出した。その結果、印愚は国家からの排斥の代償として莫大な利益を得て、裏社会に暗躍するようになる。彼らの拠点(麻薬の収められた巨大な洞窟や屋敷などで、これをよく用いられた麻薬類から取って「阿片窟」と呼ぶ)が次々に国内を巡回し、蓮国の大薬学国家にして、大中毒国家という国際的地位がここに確立した。


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