アルキメア‐偉大なる空の覇者は、天候をも予言する
アルキメア共和国は、シージア南西にある、有翼人の住む地である。彼らは山岳の多い地に定住する為に、高地に適応した文化を発展させ、さらに、変わりやすい空の表情を「窺う」ための術を身に着けた。
信仰:ヴェルヌ‐山麓は世界の天蓋、空は揺れ動く大地の天幕、そして天は無限に増大する信仰の世界である。‐
常に空と共にある彼らの信仰は、他国と比べて非常に独特である。まず、彼らは大地を駆動するものと捉え、空を無限に広がる神の世界と捉えた。何故なら、大地に住む者達はいずれも有限であるが、空の星々は無限であって、それらを支えるためには、大地は広がる必要はないが、空は広がる必要があるからである。彼らの信仰は、結果的に彼ら自身が「空」に最も近い人種であることによって、その誇りを与えている。
ヴェルヌ神の創世譚は、始めに大地、次に空を貼り付け、大地を空の中に浮かせる事によって、有限の世界から無限の世界へと人々を導く事を約束する。死後、魂が浮上するにはやはり翼が必要で、一部の人々を除き、無翼人にはそれを与えてくれない。彼らにとって、大地に縛られた者達、つまり無翼人は主の恩恵を受けられない憐れな人々なのである。
文化的叡智
・占星術
彼らが発祥の学問は、まずもって占星術である。彼らは星の運行と人の生まれに密接な関係を見出し、これを解き明かす事によって彼らの運命を予測する。占星術にはもう一つの意味があり、それは運命によって導かれる神の世界への招待状を、生存中に確約する「新約」と呼ばれる神との契約である。新約は、運命を塗り替える力さえある強力なものであって、神の招待状を得るため、つまり神との契約を更新するために、彼らの運命は常に星の運行に導かれて決定される。星の巡りによって君主が決まる事もあるほど、この国は星に縛られている。
そして、彼らは、星の運行と同様に空の動きにも敏感に研究を続けていた。自分達よりも高く優れたところにある空の動きを知る事は、神の啓示の次に重要な試みであった。
・有翼の巣
彼らの住居は木の上や岩壁の遥か上にある。彼らは天然の要塞を利用して、多くの無翼人の巣とは異なる有翼の巣を作り上げた。
はじめは、木の枝を組み合わせたものであったが、徐々に占星術のもとで星に「大地に縛り付ける力」がある事が明らかになると、彼らはそれを少しでも低減させるような建築技術を発展させた。
結果的に、彼らの家は木の枝複数に跨ぐような新たな地盤を作り、その上に家を建てる事によって大地に縛り付ける力を否定する家となる。他国では見られない独特の建築物は、彼らの特徴に準えて「有翼の巣」と呼ばれるようになる。
国家の問題
・星の運行による政治
彼らは徹底して、空をめでる人々である。彼ら自身が立体的な移動を愉しむことが出来るのに対して、彼らは空に縛り上げられ、その統治者さえも星に任せるようになった。
星の運行に任せ、最も統治者として優れた星を背負う誕生日、誕生年を持つ者が統治者として選ばれるため、彼らの統治はちぐはぐで、時には他国に大いに後れを取る事もある。
しかし、彼らの統治者は絶対である。何故なら、その時最も優れた星を背負う者、神に愛された者から選ばれるのだから。
・地に縛られる者達への排他性
彼らの信仰の支えである空、星、山岳は、大地に縛られる人々が神に愛されなかった憐れな人であることを物語っている。それゆえ、彼らは大地に付する者を蛮族として嫌い、しばしば彼らを攻撃、略奪する。また、彼らが持つ占星術の秘儀に従い、時には繁栄する都市さえ滅ぼす事もある。憐れな賤民たちの魂に翼を授けるには、これしかないのだと、彼らはどの様な批判に対してもそう答える。
なぜなら、ヴェルヌも述べている通り、「天は無限に増大する信仰の世界」なのだから。